第五章 その6
キャンプ場の駐車場にはロープが張られて閉鎖されていたため、その前に車を停める。
愛奈未と朝妃は車から降りて、ロープをくぐり抜け、先に進む。
「そうだ、確か中一の時に川辺で花火したよね?」
「ああ、そうだね。もしかしたら川辺の方かな?」
誰も除雪をしていないので、雪がとにかく深くて足をとられる。
「ああ、もう歩きにくいったらありゃしない」
朝妃も愛奈未も履いているブーツの中にまで雪が入り、足は冷たくて感覚を失っていた。なんとか雪をかき分け歩くこと十分。遠くに川が見えてきた。
「ああ、ここだね花火をした場所。おーい菜子‼」
愛奈未が大声で叫ぶ。朝妃が辺りを見渡すと、人影が横になっているのを見つけた。
「愛奈未っ、あれ!」
朝妃は雪を蹴って必死で走ろうとするが走れない。
「菜子っ」
雪の上に倒れている菜子の姿を見つけて慌てる二人。
「菜子っ、菜子っ‼」
二人の呼びかけにも反応しない。朝妃は血の気が引いた。雪と格闘しながら、やっと菜子のところに辿り着いた二人だが、彼女の唇は紫色になり、頬を触るとまるで氷のように冷たかった。慌てて口のところに耳をあてる。
「生きている! 早く温めなくちゃ!」
「お母さんを呼んでくる!」
愛奈未は来た道を必死に引き返していく。朝妃はスマホを取り出して一一九番を押した。