とある王国に、ローズマリー・ベリーズという少女がいた。
公爵令嬢であった彼女は、王国の第一王子、ロドルフ・リカールの婚約者であった。
しかし、ロドルフは彗星のごとく現れた美貌の聖女、システィーナ・ブラシェールにあっという間に心を奪われてしまう。
システィーナと仲を深めたロドルフは、彼女を婚約者にするため、ローズマリーとの婚約を一方的に破棄する。
突如として婚約者に裏切られたローズマリー。
しかし、ローズマリーの悲劇はそれだけでは終わらなかった。
聖女システィーナの暗殺未遂という身に覚えのない罪で、投獄されてしまったのだ。
婚約破棄に暗殺未遂の嫌疑がかけられたローズマリー。
裁判では無実だと泣いて訴えたものの、ローズマリーを擁護する者や同情する声はひとつも出なかった。
それもそのはず。
ローズマリーは、もともと平民だったのだ。
あるときベリーズ公爵家の養子となり、公爵令嬢となったローズマリーは成り上がりにもかかわらず、公爵令嬢であることを鼻にかけていた。
街ではすっかり、わがまま放題で災厄を呼ぶ迷惑令嬢だという噂が広まっていた。
これまでローズマリーの傲慢な振る舞いにうんざりしていた周囲は、これでもう悪女の顔を見なくて済むと、投獄されたことを喜ぶ始末。
そして、絶望したローズマリーは牢獄のなかで、自ら毒をあおって――死んだ。
これは、王国一の悪女と名高いローズマリー・ベリーズの終わりの物語であり、過労死寸前だった