目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

第79話 王都へ

 サラたちは王都に行くと決めてから、大急ぎで準備を始めた。

 エリオットは村に行き、馬を購入する。

 そしてサラは家の留守番をロックに任せることにした。

 やってもらうことは主に一つだけ、牛のペコと仔グマのプリンのお世話だった。

 その他、畑の世話の説明をしたのだが、それ自体失敗してもリカバリーは効く。しかし、ペコとプリンのお世話に失敗は許されない。だからきつくペコとプリンの世話だけはロックにお願いしたが、あまりにも心配だったので、念のためグンマ爺にもお願いしておいた。

 そして、手紙が来て数時間で三人は王都へ向かう準備を終えた。

 エリオットが騎手になり、ハンナを挟むようにサラが座る。

 通常、馬は二人乗りまでだが、女性のサラと子供のハンナであるため、男性一人分の重さのため三人乗りを可能だった。

 エリオットは馬を駆けだした後、二人に言った。


「サラ、ハンナ。一刻を争う。夜どうし走るから、眠くなったら無理をせずに眠るんだぞ」

「でもそれじゃあ、エリオットが大変じゃない」

「安心しろ、俺はそんなのやわじゃない。幸いなことに、昨日はたらふく食べて、よく寝た。気力も体力も満タンだ」

「それにしても、この馬、速くない? 大丈夫?」

「考えがあるから安心しろ」


 そう言ってエリオットは軽快に馬を走らせた。

 昼過ぎに村を出た三人は、夕方には山ふもとの村に着いた。その頃には馬は息が上がっていた。

 エリオットは馬から降りえると、サラに言った。


「これから山を越えるから馬を変えて来る。サラは食事できるところを探してくれ。俺の分は馬の上で食べられるようにして欲しい。準備が終わったらすぐ出るからな」

「分かったわ。さあ、ハンナちゃんも行くよ」


 サラとハンナは村で唯一の食堂に飛び込んだ。


「おじさん、パンと焼肉を三人前、大至急お願い」

「嬢ちゃん含めて二人しかしないみたいだが、そんなに食べれるのか?」

「もう一人は馬上で食べるのよ」

「これから、日が暮れるんだぞ。あんたら山を越えてきたんだろう。体が冷えていないか? スープもどうだ?」

「そうね、スープもひとつもらおうかしら。でも私たちは山を越えてきたんじゃないの。これから山を越えて行くのよ」

「夜中に山を越えようって言うのかい? 止めておけ。狼が出るぞ」

「そうなの? 忠告ありがとうございます。気を付けるわ」

「気を付けてどうにかなるもんじゃないぞ」

「でも、私たち行かなきゃいけないのよ」

「……そうか、まあ、あんたたちの旅が無事であるのを祈っているよ。はい、お待たせ」


 店の親父さんは話をしながら、調理を進めていた。

 皿の上には平べったい丸いパン、ピタパンが大皿に重ねて置いており、焼いた肉の隣に茹でた野菜が添えられていた。そして、キャベツと玉ねぎ、ジャガイモが入ったスープが運ばれてきた。

 サラは急いで食事を終えると、ハンナが食べている間、半分に切ったピタパンを開くと、中に肉と野菜を挟んでいった。俗に言うケバブの出来上がりである。

 ハンナが食べ終わると、食堂の親父さんにお礼を言って、新しい馬を手に入れたエリオットと合流した。


「エリオット、お弁当」

「ありがとう。もう行くけど大丈夫か?」

「私は大丈夫だけど、ハンナちゃんは大丈夫?」

「大丈夫だよ」


 お腹が膨れたハンナは元気よく答えた。

 それを聞いたエリオットは馬を引いて山へと続く道へ移動しようとする。そのエリオットにサラが食堂で聞いた話をする。


「ねえ、山に狼が出るみたいなの」

「ああ、俺もその話は聞いた。どうする? 明日の朝まで待つか?」

「私は一刻も早く、アリスちゃんの元に行きたいわ。でも、エリオットはどう思う?」

「どうせ、山は越えなければならないんだ。時間が無い今、一気に越えた方が良いだろう。まあ、どちらにしろ、山に狼がいるならいつ越えても一緒だろう」

「そうなの? じゃあ、一気に行きましょう」


 エリオットは狼が夜行性だと言うことを知っているが、サラとハンナを不安にさせないため、それをあえて黙っていた。

 こうして、長距離を加味して、昼よりは速度を落として馬を走らせる。

 夜間の踏破である。サラとハンナが眠り、落馬しないようにサラの身体とエリオットの身体を布で巻き付け、間にハンナを挟んでいるため、例えサラとハンナが眠ってしまっても落馬しないようにしていた。というよりも、サラとハンナが眠ることを前提にした処置だった。

 そして山を越えれば王都までは目と鼻の先だった。

 エリオットの予想では明日の昼前には王都に着くはずだ。

 しかし、それがスムーズに行けるかどうかは運しだいだ。

 エリオットは、サラからもらった業物の剣をそっと触れ、いつでも危険に備えていた。この剣を抜くことが無いことを祈りながら。


 しかし、そんなエリオットの祈りは神々には通じなかった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?