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隠しきれなかった秘密《3》

「あ?」

 ギッシュは顔を歪めた。

「そんなものつけられてさ、生きるのなんて嫌にならないか?」

「うるせぇんだよ。俺のすべてを、知ったふうな口を叩くな。もう少し、付き合ってやるよ」

 ギッシュは吐き捨てると、男に刀を突きつけた。

「へぇ。なら、もう少し弱らせねぇとな!」

 男が言いながら、短剣を投げてきた。

 右胸に受けたギッシュは、右の口端から鮮血を滴らせるも、不敵に嗤った。

 続いて、剣で腹を刺し貫かれた。

 鮮血がポタポタとアスファルトを汚していく。

「これで少しは弱ったか?」

「まさか」

 ギッシュは言うと、右手で腹に突き刺さっている剣の柄を握って、一息に抜いた。

 続いて、右胸に刺さっている短剣を引き抜き、鮮血に染まったそれらを、投げ捨てた。

 男はなにも言えずに固まっている。

 目の前でなにが起こったのか、理解が追いつかないのかもしれなかった。

「これくらいの痛み、右腕を失ったときに比べたら、大したことはない。さて、反撃といくか」

 ギッシュは呟くと、刀を握り直した。

 短剣を手にしていた男に視線を向けると、大量の鮮血を肩から流し、その場で死んでいた。

 ――こいつはどう殺そうか。絶叫というものは何度聞いても慣れないが、一思いに殺すのは、なんだかしゃくに障る。

 ギッシュは思いながら、男に突っ込んだ。

 男は慌てて武器を拾って、突きを繰り出してきた。

 それを左胸と腹で受け止め、ギッシュは右腕を斬り落とした。

「ぐああああああっ! うう、動け、動けよお!」

 夜の静けさを破るように、男の絶叫が響いた。

「動くわけがないだろう」

 ギッシュは溜息を吐いて、右脚を突き刺した。

 男が叫んだ。

「人というのは、痛みに弱い。それは本当のようだな」

「おおお、お前だって、人間だろうがあああ!」

「俺はな、人の成りをした〝なにか〟だよ。これだけ傷ついているのに、他人事だからな」

 ギッシュは言うと刀を引き抜いて、左脚を斬り落とした。

 男がまた叫んだ。

「そんなに叫ぶほど痛いのか。黙れよ」

 叫んでいる男の喉を突き刺して、刀を引き抜いた。

 うるさかった絶叫が、ぱたりと止んだ。

 声が出ないことに気づいて、男の顔は青を通り越して、白くなっている。

「もう終いにしてやる」

 ギッシュは言いながら、男の心臓を刺し貫いた。

 どさりと骸が倒れた。


「……時間をかけすぎたか」

 ギッシュは呟きながら、刀の鮮血をぎ落として、鞘に仕舞った。

 左手にスマートフォンを持つと、骸の現在地を送った。

 ギッシュは方向転換をして、歩き始めた。



 それからしばらくして、なにかを殴る鈍い音を聞いたギッシュ。

 その音が響く路地裏を覗き込むと、一人の少年が三人の青年達に殴られていた。

 刀を振るえるくらいは広そうだった。

 青年達が気づくように、ギッシュは右手で、壁を何度か殴る。

 その音に気づいた三人の青年が振り返る。

「ああ?」

「なんだよ?」

「何故、貴様らは少年を殴っている?」

 ギッシュは不機嫌そうな三人を睨む。

「あ? あんたなんかに理由言うわけねぇだろ。なぁ?」

 会話の最中というのに、少年を殴る手は止まらない。

「まったく。貴様らにはこうしないと手を止めてくれそうにねぇか」

 ギッシュは呟くと、嫌な笑みを浮かべていた青年の首を刎ねた。

 生首がごろんとアスファルトの上に落ちる。

 その音に気づいた青年二人が振り返る。

 次の瞬間、目を剥いた。

「えええええ!」

「こいつ! こいつ、動かねぇよ!?」

「動くわけがないだろう。首を斬り落としたのだから」

 動揺している青年二人を、サルヴァは冷ややかに睨みつける。

「ななな、なんで殺してんだよ!?」

「理由くらいは教えてやる。貴様らが生きる価値もない屑だからだ」

「はあ?」

「人殺しに言われたくねぇよ!」

「勝手に言っていろ。その少年を死にそうになるまで殴っておいて、咎めなし? そんなわけないだろう」

 ギッシュは溜息混じりに言い放つ。

「これは! ストレス発散なんだよ! 死にたくないから見逃し……」

 男が言いながら命乞いをしてきたが、台詞を遮るように、刀を振るった。

 心臓を刺し貫かれた男は、涙を流しながら死んだ。

「ストレス発散で他人を殴ることが、そもそも間違ってんだよ。自分のストレスも上手く解消できない馬鹿は死んで当然」

 怒りを滲ませて、ギッシュは怯えている男に近づいていく。鮮血の滴る刀をちらつかせて。

「ひいいいっ! くるなくるなあ! ……なに、その手?」

 ギッシュは忌々しげに顔を歪める。

「ひっ!」

 纏う空気が変わったのが分かったのだろう。男はさらに怯える。

「生きられもしないほど殴っておいて、命乞いか。貴様らの行動はまったく理解できん。死ぬのはまだ先、などと思っていたのか? 迫ってきた突然の死の恐怖に怯えているのか? どちらにせよ、貴様ら三人は死んで当然の罪を犯している」

 ギッシュは饒舌に語ると、右手を額に当てて溜息を零す。

 その様子を見た男は口を開けてぽかんとしていた。

 ――見惚れるというのは……最も大きな隙だな。

「はっ!」

 攻撃を受ける寸前で我に返った男は、蹴りを繰り出してくる。

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