こういう話を聞かされた時、この時の参加者の一人から質問が出た。
「先生、実際の授業の見学や体験はできますか? 実は他校ではそういうことができたので、こちらではそういうことはやられているのかなと思い、お尋ねします」
説明には納得したようだったが、今聞いたことがどのような様子で実践されているのかについて興味が湧いてくるのは当然だ。私もその気持ちはあったが、それよりももっと強力な体験がある。卒業生の奥田の施術によって自分自身の体調が好転したという事実だ。私は伊達がどういう回答をするかに大変興味があった。
しかし、答えは意外なものだった。
「そのようなご質問はよくあります。でも申し訳ありませんが、ウチはそのようなことはやっていません」
伊達は淡々と答えた、その様子にちょっと拍子抜けしたが、その後の伊達の説明に納得した。
「例えば皆さんが入学され、実際の学んでいるシーンを想像してください。そこに突然授業の様子を見に来たり、ましてや授業に参加されるという場合、落ち着いて授業を受けられますか? 教える立場にしても、いつもとは異なる環境になるので今一つ突っ込んだ授業ができなくなるかもしれません。実は以前、ここでもそういうことをやったことがあるのですが、中にはいろいろ質問される方がおられ、授業がうまく進まないことがありました。また、見学があった時、終了後に受講生の方にその時の様子をついて尋ねましたが、大半の人は大人の対応でした。でも、中にははっきり集中できなかった、と言う方がいらっしゃいました。ここに集まる方の場合、今日のような説明会に参加されたり私の著書をご覧になり、真剣に将来のために時間と費用をかけて勉強されています。私はそういう一生懸命の方に対しての責任がありますので、たとえ授業見学などが無かったために入学されない方がいらしても、在校生の学びの環境を守りたいと思っています。それが授業の見学や参加をお断りしている理由ですが、どういう『整体術』であるかは書籍などでたくさん紹介されていますので、内容的なことはお分かりいただけると思います。学ぶ場の雰囲気というところでは、実際の場をご覧いただかなければ分からないかもしれませんが、例えご覧になっても授業のほんの一部分ですから、やはり分からないことが多いと思います」
私は伊達の説明に納得した。表情を見ていると、質問した人も同様に思ったように見えた。美津子の表情も見たが同じで、やはりきちんと説明会に出席して良かったと思った。
となると、今度は生業とした時のことが気になった。他の人も同じ気持ちだろうと思うが、ここは私が手を挙げ、質問することにした。