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消えた記憶

「魔女…か」




俺は家の外で静かな夜空を見上げる。


どうやらいつの間にか日は落ちていたらしい。




魔女の家…確か魔力を使うことで自由に変化させることができる木材を使っている家…だったか。


外から見ると一般的な家に見える。だが内部は魔力により自由自在…




「あいつの家もそうだったな」




昔、シャーリの家に行ったことがある。


シャーリの家も魔女の家だった。




「あの家の師匠は思い出したくないな」




シャーリがいた魔女の家。そこの主は、シャーリの母親。




【大罪魔女 強欲のレナ】




魔女を率いて人間を管理下に置こうとかつての大戦を引き起こした原因となった魔女…そして。




「【厄災の魔女】に惨殺された魔女…か」




フィーアの魔女の家にあった書籍の情報と記憶を照らし合わせる。


己の欲を追い求めるがあまり厄災の魔女の逆鱗に触れた…




「逆鱗が何なのかはその魔女にしかわからない…か」




なるべく触れないようにしないとな…その逆鱗には。




俺は空を見上げる。静かな夜はシャーリに消された記憶を引き釣り出させる。遠い昔、シャーリはレナによって人間狩りに参加させられていた。目標は、幼かった俺の住んでいた町。大勢の魔女が待ちに迫り魔法で虐殺を繰り広げる中、レナによって俺は殺されそうになった瞬間…そこで俺の記憶は途切れていた。




「あの夜…気づけば半壊した家のベッドの上でシャーリと二人。裸で寝ていたのはよく覚えている…」




手には見知らぬ指輪があり、それ以来、魔法が使えるようになった。


記憶がシャーリによって消されたことはすぐに察することができた。だがシャーリも別の何かに記憶を消され、何があったか覚えていないらしい。




「何者か…おそらくそれが厄災の魔女なんだろうな」




本当に、あってみたいものだ。




そんなことを考えている俺は夜風に当たり続けるのだった。

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