フィーアに案内された俺たちは家の中を見渡す。
「書籍が多いな…」
家の中には年季が入った書籍が本棚にずらりと並べられていた。
【魔法について】【魔女の核】【厄災の魔女】などなど、タイトルは様々だ。
「こんなにも書籍を集めて何か探し物でもあるのか?」
シャーリは本棚に並べられている本に夢中になっているようだが…タイトルを見ても魔女に関する本を集めていることはわかる。
故に俺はフィーアに聞いたのだが…
「私が探しているのは魔女と人との共存の道よ」
その言葉に俺とシャーリはそろって目を見開いた。まさか魔女側にそんなことを言うやつがいるなんてふつうは思わないだろう。
「理由は?」
フィーアは続ける。
「【厄災の魔女】による虐殺を防ぐため…と言ったら?」
厄災の魔女という名に聞き覚えはない。だがその名前はついさっき本のタイトルにあったものと同じだ。
「この本に書いてあるのがその魔女か…?」
シャーリが持ってきてくれた【厄災の魔女】と書かれた本を手に取りページをめくる。
昔、魔女と人間の戦いは人間が優勢であった。故に魔女は団結し人間が住む王都を襲撃しすべての人間の生命力を魔力へと変換した。
そんな歴史に残る大虐殺が行われた日、一人の魔女が現れた。
茨のような魔力を身にまとい同族である魔女を圧倒的な力で次々と殺した。だが決して殺すのは魔女だけではなかった。等しく人間も殺しまわったのだ。
多くのものは厄災だと嘆きその魔女には【厄災の魔女】という名前がついた。以来、魔女と人間の全面衝突は起こっていない。
「私が思うにその魔女は人間と魔女の戦争が本格的になり全面戦争になったとき、両者の戦力をそぎに現れると思うの」
すると今度はフィーアの弟子がそう話す。
なるほどつまり厄災の魔女は人間と魔女の共存を望んでいて争いが好きではない。故に争いが本格的になろうとすると力ずくでとめに来る。
そうさせないために共存を自ら目指していく…そんなところだろう。
「昔私は厄災の魔女に殺されそうになったわ…あんなことは二度とごめんね」
フィーアは苦虫をかみつぶしたような顔をする。
「厄災の魔女…か」
もし俺たち以外に共存を目指しているなら、そいつとは仲良くなれそうだなと俺は思うのだった。