「ありがとシャーリ」
俺はナイフを止めたシャーリにお礼を言いつつ隠すのがうまいもう一つの気配に声をかける。
「誰かと思えば…シャーリの弟子じゃないか…」
その呼びかけに気配は揺らぐ。
「お久しぶりね…お師匠様たち」
声の主は黒髪の魔女の後ろから現れた。
「お師匠さま!?なぜこんなところに?」
どうやら黒髪の魔女は今しがた現れた魔女の弟子らしい。そしてその師匠というのがシャーリの弟子というわけか…
「ややこしいな」
素直に感想を述べる俺はシャーリの弟子の名前を聞くため口を開く。
「シャーリの弟子…名前は?」
俺が問うと魔女は頭を下げ名乗る。
「この家の主、【フィーア】と言います。お師匠様たちの話は伝え聞いておりますのでごゆるりと」
俺とシャーリは顔を合わせる。どうやら歓迎されたらしい。
魔女の世界は弱者が強者の弟子になるのが鉄則であり、師匠の言葉に弟子が逆らうことはできない。故に黒髪の魔女の師匠であるフィーアに歓迎されれば黒髪の魔女は俺たちを歓迎せざるを得ないということになる。
そしてこの魔女の家は魔女たちの住処であり、師匠と弟子が暮らす場でもある。多い家には数住人もの魔女がいると聞いたことがある。
「歓迎してくれるんだな…俺たちを」
俺がそういうとフィーアは即答する。
「色欲の大罪魔女様とその核を分けた、男性唯一の魔女であるあなたを死なせるわけにはいきませんので」
そう言われ俺たちは特に疑問を持たずにフィーアに家の中に案内されたのであった。