俺とシャーリは森をさまよい続けていた。
魔女狩りが行われていた村を離れ、目的がないまま森の中をさまよい続けること数日が経過していた。
「レンは…魔女狩り嫌い?」
唐突に、シャーリはそんな疑問を投げかけてきた。
「別に…人間側が命を奪われる前に奪う、自然なことだとは思うがな」
「私はレンを殺さない」
「知ってる。だから俺はお前を殺してないだろ?」
俺の言葉に少しシャーリは下を向くと言う。
「レンはむしろ私を生かしてる…うれしい」
シャーリの表情が少し柔らかくなった気がして俺も、少し力を抜いて思考する。
あまり男の俺が魔女の力を使えることを知られるわけにはいかない現状で生きること。それほど簡単だとは言えない。
「俺たちは…どうするべきなんだろうな」
魔女と人間が争っている中俺は魔女と協力し魔女の子供を助け、新たな魔女にした。
魔女と人間が争っている中シャーリは人間と協力し魔女を殺した。
「私はレンがいればそれでいい。この戦争のことも興味はない」
「そうか…」
「大丈夫」
いつの間にかシャーリは俺の前に来ていて頭を撫でてくれていた。
最も、俺のほうが身長が高いのでずいぶんと頑張っているようだが…
「レンはレンがやりたいように生きてくれればそれでいい。今までの旅も、レンがやりたいようにやってきたんでしょ?私はレンについていくだけ」
「俺がやりたいこと…?」
「レンは…わからないんでしょ?なんで魔女と人間が争っているか」
シャーリの言葉に俺は…
「そうだな」
そう返し感謝をこめシャーリの頭をなでる。
「なんで私の頭もなでるかな…」
「撫でやすいとこにあったからな…」
これからも俺のやりたいように…か…
「楽しくなりそうだな」
「目的決まった顔してる」
目に入ってきたシャーリの顔は心なしかうれしそうな顔をしている。
「名前持ちの魔女を探す。それが当面の課題だ」
それが教会におびえながら隠れて暮らすよりも早いと結論を出す。
そもそも、なぜこの両種族が争っているのか理解できていない俺。魔女にとってそんな俺という存在はイレギュラーに見えるだろう。いや…人間から見てもイレギュラーなことには変わりないか…
教会の司教に言われたことを思い出し俺は思う。
この馬鹿らしい戦争を止めるため。誰もが見落としている道を放棄し、自ら争い犠牲を生んでいる両種族をあざ笑いに。
「この馬鹿げた戦争を俺たちで…嘲笑ってやろう」
こうして俺たちの旅は幕を開けたのだった。