教会法令・魔女狩り
【魔女は見つけ次第速やかに討伐せよ】
【魔女に加担するものは皆悪であり討伐対象とする】
【討伐判断は司教以上の地位にいるものは独断で判断すべし】
誰もが1度は目にする教会の魔女狩り3原則。それにのっとり行動する司教が今目の前で行った行動は正しい。だが、正しいからと言って認めていいものでもないだろう。
「シャーリ」
俺がそうつぶやくとシャーリは即座に羽を巨大化させ盾を作る。すると司教をやや斜め下から思いっきり押し上げ司教を吹っ飛ばした。
それに抵抗するそぶりも見せず司教は空中に投げ出される。
「利用されたか」
あの司教はおそらくシャーリを見て撤退を選んだ。自身ができる最大限の役割を果たして。
「あ…あぁ…」
魔女が言葉にならない声を漏らしている横で俺はシャーリに言う。
「魔力をさっき少し使ってしまった…悪い」
「大丈夫。また補充すればいい」
そういうとシャーリはいつぞやと同じように首元に噛みついてくる。血を吸われてるわけではない…吸われているのは俺の生命力そのものだ。
すると今度はシャーリから流れてくるものがある。俺の生命力を変換した魔力だ。それを見ていたのか魔女が言った。
「どうやってるんだ…それ…」
「俺の生命力をシャーリに与えてそれをシャーリが魔力に変換、俺に返すってことだ。逆でもできるぞ」
俺がそう言うと魔女はふとした表情で言った。
「私の魔力をあいつの生命力に変換することだってできるのか?」
「できる」
俺は即答した。
「たのむ!あいつを生きk」
「ただし!お前の魔力は少ない。変換した場合お前は死ぬぞ」
俺は魔女の言葉をわかったうえで遮りその事実を言った。
「かまわないさ」
その返答も予想はついていた。やはり子の魔女にとってあの娘は食糧ではなかったらしい。
俺はシャーリのほうを向くとシャーリも察したように娘のほうに移動する。
まず俺が自身の魔力で魔女を取り込み魔力に分解する。するとその魔力をシャーリがまとめて変換し少女の中に流し込んでいく。
「そいつを…娘を頼んだ」
魔女は消える直前そう言い放った。だが、それはいらぬ心配だろう。なにせ娘の生命力はもとは魔力だ。覚醒しないほうがおかしいまである。案の定すべての生命力を入れ終えた娘の足にはないはずの小指が生えていた。
「…?」
娘は目を開け不思議そうに首をかしげると俺は言う。
「お前の母親がお前を守ったんだ。お前は好きなところに行け」
俺はそう言い放つと娘は母親が死んだことを察したのか泣いた。
「そしてお前は魔女になった」
俺がそう続けると娘…いや、名もなき魔女はハッと顔を上げる。
「魔女の味方と誤認され処刑されたお前が、今度は本物の魔女になった…そんなお前はどうする?」
俺はそう問う。すると娘は初めて言葉をこぼす・
「村に…戻る」
その眼は確かな目標をとらえていた。
「魔女らしい目になったな…なら俺たちが関与することでもないな」
俺はそう吐き捨てると予定通りシャーリを連れて別の町へ行くため森の中に入っていくのだった。