ワープポータルから飛んでアスタータウンに戻ってくる。
「ふう」
僕は露店なんかを見て回る。
「初級ポーション5つ全部ください」
「はいどうぞ」
初級ポーションのバラ売りを買う。
大量に売っている転売屋さんや生産者さんもいるけれど、バラで少数売っている店はだいたい安いのだ。
安いけど数はないので、探すのが面倒といえば面倒だ。
「そういえば、森の泉の不活性のワープポータルが使えるようになったんだそうですよ」
「へえ」
ちょっと緊張する。
雑談を装って、露店の人に泉のワープポータルのことを伝える。
こうやって何人かに話せば、そのうち話が回って使われるようになると思う。
妖精のことは言えないけど、伝聞調で事実だけ伝えれば、詮索されることもない。
「森の泉って、アブライルの森の北にある綺麗な泉だよね、名前は忘れたけど」
「あ、はい。たぶんそうです」
「ほーん。今度、行ってみるわ」
「そうですね。綺麗なところだからいいですよね」
「ああ、ただピラニアちゃんがね、こうがぶっとね」
「あはは」
確かにあのピラニアにはびっくりする。
こうしていくつかの露店を見て、情報を伝えて歩いた。
そのうちの誰かから聞いた人が、掲示板とかSNSに書き込んで、公知になる。
妖精さんも姿を見せないかもしれないけど、人が来れば、寂しくなくなると思う。
NPCさんにも、何人かと会話してみた。
「アブライルの森の綺麗な泉のワープが使えるようになったそうですよ」
「おお、ピラニアの泉な、あそこのワープポイント活性化したのか」
「はい、ぜひ行ってみてください」
「ありがとう」
あの泉の名前はピラニアの泉というのか。
そのまんまだけど覚えやすい。
用事も終わったので、みんなでピラニアの泉にワープする。
飛んできたときにはまだ誰もいなかった。
「よし、それでは釣りをします」
「「はーい」」
3人で釣り竿を並べて、糸を垂らす。
針には疑似餌じゃなくて、ハムを刻んだものをつけてみた。
ぴゅーと投げると、ハムが沈んでいく。
水が綺麗でピラニアも見える。
投げた直後から近づいてきて、周りを旋回する。
ぱくっ。
びくんっ。
「きたあぁ」
すぐに食いついた。なかなか大きい。
ピラニアと引き合いをして、糸を巻き、そして釣り上げた。
水の中だと僕たちはピラニアの餌だけど、釣りをして水の上であれば、僕たち人間の勝ちだ。
立場が逆転するってなんだか面白い。
「ははは、あのピラニアに勝ったぞお」
「やったわね」
「お姉ちゃんやった」
釣り針に食いついたピラニアの口を開ける。
口にはギザギザの歯が並んでいて、とても凶暴そうだ。
僕たちはどんどんピラニアを釣った。
「おお、ここが泉ね」
知らない4人パーティーの人がやってきた。
「もう人がいるわ。さすがね」
「おお、一番乗りだと思ったのにな」
「ああ。でも2番乗りだな、さっさとワープ解放しよう」
「そうだった」
ワープポータルの石像に近づいて登録していく。
「おお、本当に活性化してる」
「前来たときは無反応だったもんな」
「どうして活性化したんだろう」
ぎくっって思ったけど、細かいことはみんな知らないから黙ってれば、へーきへーき。
ピラニアを釣り続けて、50匹くらい釣れた。大量だ。
しかしまだ泉にはピラニアがうようよしていた。
これを釣りつくすのは無理っぽかった。
「よしピラニア終わり」
僕たちは、周りの森に入ることにした。
泉のすぐ周りは敵がほとんどいない。
もう少し進むとゴブリンの巣になっているらしい。
噂通り、ゴブリンと遭遇した。
棍棒装備だ。
「うりゃあ」
「先制するわ、ファイア!」
「えいにゃあ」
僕たちは攻撃を仕掛けて、ゴブリンを亡き者にする。
ゴブリンは、ゴブリンの核という魔石を落とすタイプだった。
どのモンスターが魔石を落とすかは決まっていないけど、動物型よりは亜人系やスライムとかの魔法生物とかファンタジーっぽい敵に多い気がする。
またゴブリンパーティーを残滅した。
「やったまた魔石」
「やったわね」
「やったにゃ」
魔石は魔道具の燃料以外に、装備の強化にも使えるので、かなりお得だ。
有用アイテムを集めていると思うと、がぜんやる気になってくる。