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24 倉庫、銀行


 休憩もかねて、町に戻ってきた。


「そういえばね、サブキャラとかなければ気分の問題なんだけど、銀行って知ってる?」


 リズちゃんだ。


「ううん」


「あのね銀行で倉庫っていうのがあるの」

「倉庫かあ」

「うん」


「それで、アカウント内の複数キャラクター間で、アイテムの共有ができるの」

「そうだよね、複数のキャラクター作ったら、アイテム移すのに誰かに持ってもらわなきゃならないと、不便だもんね」


「そうなのよ。ということで銀行へ行こう」

「わかった」

「わかった、にゃん」


 三人で並んで行く。


 銀行は噴水広場からすぐのところにあった。

 まだ城門前だったから、ちょっと歩いた。


「ここかあ、大きいね」

「そうね」


 お金の袋と金貨みたいなデザインの看板が建っている。

 両扉を開くと中にはカウンターが並んでいた。


 カウンターといっても、対人ではなくATMみたいな魔道具が並んでいる。


 そのひとつにみんなで向かう。


「まずお金を預けられるのね」

「うんうん」


「それからアイテム。全部で200種類まで」

「けっこうたくさん入るんだ」


「うん。でも長くゲームやってると、すぐ埋まっちゃうよ」

「ふうん」


「アイテムは自分で持っててもいいから、気分の問題だけど、普段使わないのもアイテムボックスに入れていると、探すときとき面倒でしょ」

「確かに」


 お金も全額持ち歩いていても問題ない。

 PKも通常フィールドではできないし、デスペナでお金を落としたりもしない。

 だからサブキャラに渡す以外では、銀行に入れるのは気分の問題だそうだ。




 銀行から出てきたら、なんだか人が集まっていて、女性2人を囲っていた。


「さあ、1メガゴールド、いいわね」

「いいわ」


「はいはい、みなさん。私たちは犬猿の仲、いやライバルです」

「今日は、対戦、PvP、ようは決闘をして、それぞれ賭けた1メガゴールドを勝ったほうが手にするという試合です」


「「おおーお」」


「私が勝つか」

「私のほうが勝つか」


「みなさんも、賭けてみませんか?」


「やるやる」

「ひゅーひゅー」


 女性は二人。ミニスカートのピンクのバトルスーツの子と、同じバトルスーツの水色の子だ。

 どちらも武器は、両手剣みたい。

 バスタードソードというんだろうか。


 ピンクの子はソニアLv35。

 水色の子はファミ子Lv37。

 どちらもギルドはフェアリーエンジェルというところに所属していた。


 どっちの子も強そうだ。

 この辺にいる人の中では、レベルはかなり高いほうだろう。


 賭けボードが置かれていて、次々お金を払って引換券を渡している。

 同じギルドの人が立会人をしていて、賭けの事務作業をしているようだ。


「ささ、お金を賭けてください」


 どうしようか。


「僕たちはどうする?」

「ふーん。面白そうじゃない」


 ニヤリと不敵にリズちゃんが笑った。


「私は、ソニアちゃんに10,000Gね」

「そうなの? じゃあ僕はソニアさんに5,000G」

「わ、わたしは、お金は、もってませんでした、にゃんにゃん」


 引換券を受け取った。


「では、いいでしょうかね」


「「「おおおおお」」」

「「「きゃーあ」」」


 野太い歓声も、女の子の高い声も聞こえる。


「では、はじめ」


 頭上に「PvP Fight!!」と文字が出る。

 二人とも大剣を中央に構えていて、にらみ合う。


 ソニアさんが振りかぶって、間合いを詰める。

 剣が振られた。


 すかさずファミ子さんが剣を合わせて、かち合う。


 がきーん。


 大剣だからけっこうな重さなのだろう、大きな音が響く。


「そんな剣振るだけなら、何回でも答えるわよ」

「くっ」


 二人が距離をあけると、今度はファミ子さんがスキルを使ったらしく一瞬で移動して剣を振る。

 すごいスピードだ。


 しかしソニアさんは剣を立てて前に構えていて、それで受けきっていた。


「あまいわ」

「そう」


 がきーん。

 しゅしゅしゅ。


 がきーん。


 高速移動と高速剣技が交わされて、すごい音がたびたびする。


 ファミ子さんの高速接近、剣振りに、また剣で受けるのか、と思ったらシュッと移動して、ソニアさんが一瞬消える。


 ファミ子さんの振り切った剣の後ろ側からソニアさんが一撃を入れた。

 それをファミ子さんは避けきれず、そのまま切られてしまった。


 大剣は一撃のダメージが大きいみたいで、HPが半分を切った。


『ソニア You Win』


 HP半減モードもしくは初撃モードだったみたい。

 二人の頭上に、勝者を知らせるメッセージが浮かび上がる。


「くっ、やられたな」


「はいはい、ソニアちゃんに賭けた人はどうぞ、どうぞ。換金をしてください」


「やった! 当たった、すごいリズちゃんの勘」

「でしょでしょ、私もえらいんだからねっ」

「すごいにゃ」


 こうして僕たちの掛け金は8割増しになって、返ってきた。


「はい、終わりです。みなさん、ありがとうございました」


「儲かったにゃ」

「そうだね」

「ふふっ」


 さて次は何をしよう。

 そうだ、レモンもいっぱいあるし、あれを作ろう。


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