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14 噴水の秘密


 鍛冶を終わらせて、ゲーム内も夕方でもういい時間なので、一旦ログアウトする。


 ゲーム内夜時間半日分、リアル2時間ぐらいの休憩をはさんだ。

 リアルでは義妹、義父、母と一緒に食事をした。


「お兄ちゃん、ゲーム始めたんだって?」

「お、おう、VRゲームな」


「いいなぁ、いいなぁ、真凛まりんもやりたいなぁ」

「一応、学校の課題なんだけど」

「げえぇ。課題とか大っ嫌い。でも一緒にやりたいっ」


「あはは、VRマックスは品薄で全然売ってないね」

「そうなんだよね。知ってたー」


 VR加速が実用化されて、AIの進化著しい世間では、人間の仕事はなくなるって言っていたのに、そんなことはなかった。


 母さんは人間の仕事が減って夫婦共働きではなく専業主婦だけど、父さんは相変わらず企業の重役とかなんとかで仕事をしている。

 というか「人間が判断を下す必要のある重要なもの」は下が全部AIになっても、最終的には人間が判断しないといけないというコンプライアンスがあるんだって。


 なかなか難儀なものだ。ふふん。

 だから今後も少なくとも、仕事は全部なくなったりしないそうだ。


 お兄ちゃんは課題で忙しい。


 お風呂にも入ったし。ゲームを再開しよう。もう約束もしちゃってある。


「リンクアップ」





 無事にログイン、噴水広場前だった。

 無事っていうのも変だけど、なんとなく正常にログインできるのが、奇跡的というか不思議な感覚がある。


 とりあえず装備も強くなったので、試し狩りをしてみようと思うんだ。


 噴水の縁のベンチに座って、リズちゃんを待つ。


「ふんふん♪ ららら~♪ とぅるるるん♪」


 地球と違う変わった装備の人の行き来を見るのは、なんだか楽しい。

 NPCもプレイヤーもちょくちょく通り過ぎていく。


 ここは集合場所としてよく使われるのか、インのエフェクトをまとって出現する人や、カップルっぽい人が合流したり、なんだか人の動きがあって、面白い。


 ちゃぽん。


 水に何か落ちる音がした。

 見てみると、女の子が両手を合わせて「お願い」をしていた。


 噴水のお願い事だ。


 んんんっ、なんかイイネ。


「僕もやってみよう」


 1,000G金貨を実体化して、噴水に投げる。


 目をつぶり、両手を合わせる。


『今日も楽しくプレイができますように』


 目を開けたら、ふむ。なんだろうこれ。


 視界の隅にアイコンとともに『噴水の願い:29分』という表示がある。

 集中すると『防御力+5 運+5』とポップアップが出た。


 ありゃりゃ。

 これあれだ。バフってやつだ。


 へえ、面白いね。


 それで噴水のこっち半分、低い側は金貨が沢山あるんだ。

 現金なものだけど具体的に効果があると、なんだかそれ目当てにしたくなっちゃうよね。


 噴水から振り返ったら、なんか何人かこっちを楽しそうに見てて、ドキッとしちゃった。

 みんな、うれしそう。


「噴水にお願い事をするとバフが付くんですね」


「え、そうなの?」

「らしいね」

「マジか、知らんかったわ」

「せ、拙者は知っていたでござるよ。ほんとでござる」

「嘘だぁ」

「嘘じゃないでござるよぉ」

「あははは」


 反応は様々だ。

 たぶん、金額や移動を含めると、それほど効率的ではないんだろう。

 知っている人は知っているけど、あまり注目されていない要素ってことっぽい。



 少ししたら、噴水のお掃除の人が来て、金貨を集めていった。

 所属は『グリーンドラゴン教会』となっているので、教会の人なんだろう。

 勝手に集めている変な人ではないらしい。


 ちょっと最初は疑ってしまった。罪悪感が。

 問題なさそうで、なによりです。


 そうか、教会とかも行ってみたいかな。

 というか町の中、ほとんど探検してないんだよね。

 ものすごい広いというわけではないけど、VRの町ではNPCやプレイヤーが普通に暮らしているだけの広さはあるので、かなり大きい。


 だから門まで歩いていると、よく目立つ。ううぅ。





 何人目だろうか、人が転送されてくる。

 あ、ピンクだ。うさ耳だ。それすなわちリズちゃんだ。


「リズちゃ~ん」

「ああ、ごめんなさい、遅れちゃった」

「うん、ほんとだよぉ」

「ごめん、ごめん。大丈夫?」

「うん。おっぱいは揉まないけど、大丈夫だよ」

「まあ」


 くくく、どうだ。大人のギャグなのだ、えっへん。

 どうだ、まいったかぁ。


「まあいいや、はい、ハグしようねえ。ワイちゃん」

「あわわわ」


 そうだった。ゲーム内毎朝恒例、ハグ攻撃があるんだった。

 僕の負けでいいです、から、そんなにぎゅってしないで。


 むにゅぅ。


 温かい。なぜかすごくドキドキするのに、気持ちは落ち着いてしまう。

 懐柔されてる気がする。


「さて、ワイ成分を補給したわっ」

「そうだね」

「それじゃあどうする? 今日は何がしたい?」

「えっとね、武器を新調したから、外に戦闘を」

「わかったわ、行きましょう。はい手」

「うん」


 手をつないで歩く。これももう恒例だ。

 僕たちは背が低いから、離れてしまうと、どこだかわからなくなるのは目に見えている。


 今日も門番さんの前を通って、城門を無事通過。

 さあ、戦闘だ、待ってろモンスター。


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