町に戻ってくる。
露店で『初級魔道コンロ』を購入した。
それから、塩、
これはとりあえず2人で共有。
コンロ自体はずっと使えるけど、魔道具なので魔石が消耗品になっている。
お店の人に聞いたところ、それほど消費は激しくない優しい設定らしい。
噴水広場の隅に陣取り、地面にコンロを設置した。
人目が多い広場なので、さっそく何しているんだろうみたいな好奇の視線が飛んでくるけど、別に気にしない。
周りの人も料理だとわかると、興味を失う人と、逆によく見ようとしてくる人に分かれていた。
「では、お料理をします」
「ワイちゃん頑張って」
僕はコンロのメニューから料理を開始する。
「まずはお肉! ラージラットちゃんです」
お肉の塊は200グラムくらいありそうで、結構厚切りの塊肉だ。
赤身に白い部分が少し入っていて、おいしそうに見える。
「焼きます」
といっても実際に丹念に焼くわけではなく、メニューに従ってお肉と塩胡椒を選択して『調理』を選ぶだけだ。
コンロには魚焼き用の網みたいなものが付属している。
「おぉおお」
お肉がすぐに焼けて、ローストビーフみたいなものができあがった。
「美味しそう」
「美味しそうね」
リズちゃんの合格ももらった。
料理ができたぞ。僕にもできた。
料理なんて家庭科の電磁簡易調理しかしたことがなかったのに。
ナイフで切り分けて、二人で食べる。
「うまいぃ」
「美味しいわ」
ラットっていうからどうかなって思ったけど、思ったよりずっと美味しい。
これが合成肉でないお肉の塊。
塩胡椒が効いていて、肉の旨味が染み出てくる。
「上手にできました」
「うん、やったね」
「では、次はお魚を焼こう」
「うんうん」
コンロにお魚を並べて、コンロメニューから調理を開始。
材料はヒメマス、お塩。
お魚が焼けていく。
ぷーんと、魚の焼ける匂いがする。
「できた!」
「おおおぉ」
本物の魚焼きは、焦げ目もできていて、おいしそう。
二人でお魚も試食してみる。
ほどよい塩加減。身はホロホロで、淡白だけれどうまい。
「おいしぃ」
「これもおいしいわね」
周りの人たちが、固唾を呑んで見守っている。
お魚はまだ余っていた。
「あの、よかったら、みなさんで食べてください」
「いいのか!」
「ありがとう」
「うれしー」
「やったっ」
「ありがたきでござる」
「やほい」
みんなからそれぞれ声をいただいた。
周りの人は仲良くお魚を分け合って食べている。
「ささ、おヒネリはこちらへでござるよ」
「美味しかったわ」
「ありがとう、はい」
「さんきゅーな。はい」
「どうぞどうぞ」
代表っぽい人が、集金を始めてしまった。
そして僕たちのところに戻ってくる。
「お魚の代金。カンパというか募金というか投資だな」
「はい、ありがとうございます」
「ありがとう。いただきます」
二人でお礼を言って受け取る。
中身は40,000Gぐらいあった。大金だ。
お魚は露店で売ろうかなって少し思ってたんだけど、それより儲かっちゃったみたいだった。
なんだか悪い気もするけど、みんなの善意に感謝しよう。
採取、料理、とかには一応よくわからないんだけど、レベルというものがある。
いい高級材料は高レベルでないと、料理に失敗してしまうらしい。
そこで料理レベルを上げることにした。
みんなのおかげでお金もできたし、懐は温かい。
「これください」
「はいよ」
露店で『鶏の卵』を買った。安かったのでたくさん買っちゃった。
「このフライパン下さい」
「はいよ」
それから料理器具、フライパンを買った。
あとは食パンと薄切りハムを購入した。
また広場で初級魔道コンロを設置する。
フライパンを乗せて、コンロメニューを開く。
卵と塩、胡椒を選択して調理だ。
「るんるんるん~♪ るるんるん♪」
僕は素早く作業をこなしていく。
『目玉焼き』だ。
ハムも焼いていく。
『薄切りハム焼き』なるものができた。
これをパンにハムハサムニダ。
「完成!!」
「できたわね」
並んでいるのは『ハムと目玉焼きのサンドイッチ』です。
料理レベルも2から4にアップ、やったねっ。
まだまだ、これからもいっぱい料理しなきゃいけないね。
これは遠征用に活用だ。アイテムボックスにしまっておこう。
料理『ハムと目玉焼きのサンドイッチ』をしまって次の行動を始めよう。
「あの、そのサンドイッチは売りには出さないんです?」
「あ、はい」
「そっか、残念です」
「そうなのか」
「食いたかった」
周りの人たちがなんだか残念そうにしていた。
でも、これは売り物ではない。
ハムは露店で結構売っている。
モンスター肉とお塩を合成で、こちょこちょするとできるらしい。
鶏の卵と食パンもその辺で売っているので、簡単にできる。
「わっかりました。また材料を買ってくるので、ちょっとだけ売りたいと思います」
「よっしゃ」
「やったー」
「へへっへ」
「よかったでござる」
こうして露店街ではなく噴水広場で仮露店を開くことになった。
別に露店街でないといけないみたいな決まりはないらしい。
ただここで開いてもお客さんがこっちまで回ってこないので、人気がないのだとか。
「ワイちゃん、露店よろしくね」
「はい、リズちゃん、頼まれました」
露店ゴザを置いて、サンドイッチをセッティングする。
リズちゃんはお客さんを一列に並べていく。
「はい、サンドイッチのみです。一人3個まででお願いします」
「「「はーい」」」
お客さんたちはなかなか行儀がいいらしく、すぐに一列に並んで、みんなで返事をした。
こうして結構沢山作ったと思ったサンドイッチがばんばん売れていく。
お魚の売り上げと合わせて、かなりの金額になった。
「はい。売り切れです。ごめんなさい」
一応、ここにいる人たちの分は全員に配れて、後は2回目を数人が買って終了だ。
「ありがとうございました」
「はい。ありがとうございました」
僕とリズちゃんが頭を下げると、また拍手をされた。
ここの人たちは温かい。
みんな優しくしてくれる気がする。