画面設定の謎空間から、草原が広がる小島に転送されてきた。
周りは見渡す限りの海で、綺麗な海がどこまでも広がっている。
アニメ調だけど、その景色は絶景だった。
「ほう、いいところだね」
「ここもなかなか、好きな景色です。ゲーム内で再び来るのは大変だけど、いいところだと思います」
「そうだね」
海岸にはカニとヤドカリが走っていった。
「では、まず剣の練習をしますので、剣をプレゼントします」
「ありがとう」
剣を異空間から取り出すと、僕に渡してくる。
ブロンズ製だろうか、ちょっとオレンジ色をしていて、鈍く輝いている。
昔の新品の十円玉や銅メダルみたいな感じだろう、テレビで見たことがある。
「どうですか?」
「あ、うん。思ったよりは重くない」
「そうですね。ほどほどちょうどいい感じに調整してあります」
「なるほど」
「では、敵のスライムを召喚します」
緑色の丸いスライムが出てきた。
「斬りつけて攻撃してください」
「あ、うん」
スライムにちょっと可哀想だけど、剣で攻撃を加える。
ダメージの白い数字が空間に浮かび上がって、ここが仮想空間なのを思い出す。
アニメ風だけど、なんか妙な現実っぽさがあるんだよね。
見ていたら、スライムの体当たりで、自分がちょっとダメージ。
緑のHPバーが一割ぐらい減ってしまった。
「ささ、敵を倒しましょう」
「あ、うん」
再び剣を振るったらスライムは霧になって消えてしまった。
地面には、ポンって六角形の黒っぽい宝石みたいなものが落ちている。
それを手で拾おうとすると、光に変わって僕に吸収されていく。
「アイテムボックスと念じてください」
「あ、うん。……アイテムボックス」
すると空間に画面が浮かんで、そこにさっきの『スライムの核』が収まっていた。
「あ、はい。了解です」
「では次、行きますよ。こちら、おいしいポーションです」
「おいしいの?」
「はい」
小さめの試験管みたいなものを渡される。
「次はちょっと強いです。倒せなくてもいいです。HPが減ったら回復するのが目標です」
「わかったよ」
「では行きます。ゴブリンちゃんカモーン」
緑の肌で髪の毛がないゴブリンが召喚されてきた。
敵は真っ黒い剣を持っている。
「ちょっと強そうだ」
「はい、今だと強いですよ」
こちらはティーシャツに短パン装備だ。防御力なんてないに等しい。
「えいやぁ」
剣を振るうと、ゴブリンのHPは三割減といったところ。
すぐに反撃され、僕はダメージを食らう。
痛くはないが、当たった感覚はある。
これは心臓に悪い。
僕のHPは半分くらいになってしまった。
「そこでポーションです」
ポーションのふたを取ってゴクリと飲み干す。
すると甘いメロンみたいな味。
緑色のプラス数字が表示されHPが一瞬で回復した。
「なるほど」
「ごぶごぶ」
ゴブリンが鳴いて挑発してくる。
「おりゃあ」
僕が剣を振るってゴブリンにダメージ。
だけど今度はゴブリンの剣が光り出し、技を使ったみたい、一瞬で僕のHPがレッドゾーンまで減り、そのまま0になってしまった。
僕はくらくらして、そのまま倒れてしまう。
「やられてしまいましたね」
「うん……」
「このような状態を『戦闘不能』といいます。俗に死亡っていいますけど、厳密にはまだ死んでいません」
「そうなんだ」
「そうなんですよー。そこにカウントダウンが見えますか? 今50ですね。1分すると死亡扱いになります」
「あ、なるほど」
そのままカウントが減り僕は転送されて、少し離れた魔法陣が地面に描かれた場所に出現していた。
「と、まあ助けてもらえないと、このようにリスポーンします。デスペナ、死亡ペナルティはないのですが、復活した直後はHPとMP、スタミナは1の状態です」
「あ、本当だ」
HPがレッドゾーンで点滅している。
MPバーというのも一緒に出ていて、こちらもバーが黒くなっている。
「HPなどは時間経過で回復するので、そのまま待っててもいいですよ」
「うん」
「でも、料理なんかもおすすめですね。今回ははい『ピクシエル特製サンドイッチ』なんてどうですか」
そういうと鶏肉とレタス、薄切りトマトのサンドイッチを出してくれた。
「あ、うん、もきゅもきゅ」
おいしい。サンドイッチおいしい。
仮想世界なのに、料理はすごくおいしい。これならずっとこっちの世界に居てもいい。
継続回復というやつだろう、徐々に回復していく。
料理にはこういう効果があるんだね。
「よろしいですか?」
「うん」
「では次は魔法の勉強です」
「魔法、魔法なんだ」
「はい。こちらのレシピを使ってください」
そういうと紙切れに読めない英字で書かれた『火魔法のレシピブック』というアイテムを貰った。
「使う!」
紙が光って僕に吸収されていく。
紙は消えてなくなってしまった。
「それで、ファイアの魔法が使えます」
「おお」
「スライム出しますね」
「うん」
今度も緑色のスライムだ。
「ファイア!!」
僕は手を突き出して、魔法を唱える。指先から火の玉がスライムに飛んでいき、ぶつかって消える。
またダメージの数字が飛んで、スライムも煙に消えた。
「おお、ちょっと強い」
「はい、魔法は連射などが難しい代わりに、ちょっと威力は高めです。戦闘ではアタッカー、ダメージディーラーという役割を担っています」
「なるほど。あ、うん」
「片手剣の人の多くは盾を持って、敵の攻撃を防ぐ仕事をします。タンクと呼びますね」
「あ、うん……」
「そして最後にヒーラーです。魔法なのですが、回復魔法やステータスを上げる補助魔法を使うのがジョブでいうプリースト、ヒーラーです」
「なんとなくわかるよ」
「では次はヒーラーをやってみましょう」
「基本魔法、ヒールのレシピを渡します」
「あ、うん、ありがとう」
僕はヒールを習得した。
「まずは仲間を召喚します。ホーンラビットのラビラビです」
ピクシエルちゃんが手をかざして、光が飛んで集まっていき、ウサギになった。
「きゅぷ」
白いホーンラビットつまり一角ウサギだった。
「この子はテイムモンスターで仲間です。攻撃してはいけませんよ。絶対ですからね」
「あ、はい」
「次に敵さん、スライムを召喚します」
今度は水色のスライムが召喚された。
「ラビラビ攻撃してください」
「きゅぷぷ」
ラビラビがスライムに攻撃を開始する。
スライムも反撃してきて、ラビラビのHPが少し減った。
「今です。プレイヤーさんヒールをラビラビにです」
「うん、ひ、ヒール!」
緑色の光がラビラビに飛んでいき、HPを回復させる。
そうやって戦っているうちにスライムを倒していた。
「そうです。よくやりました。戦い方はだいたい覚えましたか?」
「あ、うん。だいたいは」