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39. ショッピングモール


 しばらく放心するように待っていたが、妹の顔だけカーテンから出てきた。


「お兄ちゃん、どうかな?」

「さあ?」


 カーテンを開けて見せてくれる。

 あー、かわいい、確かにかわいい。

 いわゆるビキニタイプだ。

 あの妹もこういう水着を着るようになったらしい。

 ブラとパンツの両方にヒラヒラの装飾がついている。

 きわどいタイプではなく普通の形で、一言で言えばかわいい、としか言いようがない。


「どう?」

「かわいいよ」

「やった!」


 兄に褒められてうれしいものかは、よく知らない。

 本人がよろこんでいるから、いいとしよう。


 そして問題はその隣のハズキさんのほうだ。

 こちらもおっかなびっくりカーテンを開けて出てくる。


「どう、かな、ウルさん?」

「似合ってる、と思うよ?」

「そうかな、えへへ」


 テレテレのハズキさんはとても可愛らしい。

 水着はビキニだけど、なんというかアダルトな感じというよりも、じゃっかんかわいい系なんだけれど、大きな胸がやっぱり大人な魅力をこれでもか、と主張している感じだ。

 黄色いビキニにアニメ調の花模様がいくつか散っていて、それがかわいらしい。

 でもビキニはやっぱりビキニで、なんともいいがたい魅力がある。


「彼氏さんですか? どうですか? お二人ともよくお似合いですね」


 店員さんも褒めてくれる。

 まあ、いいんじゃないか、これで。

 ということで購入となった。


 俺はその辺の隅にある柄パンコーナーへと向かう。


「さて、俺はどうするかな」

「そうですね、どんなのがいいかな?」


 妹がニヤニヤしながら探し始める。

 俺も気に入った模様がないか捜索開始だ。

 男性用は形はみんなハーフパンツみたいな遊び用なので、それほどこだわりはない。


「これ、サメちゃん」

「ああ、面白いかもな」


 柄パンの中でも、横向きにサメの口がデザインされたものを選んでくれた。


「んじゃ、それで」

「試着とかしないの?」

「サイズあってれば大丈夫」

「そっか」


 男はたいてい試着しなくても大丈夫なもんだ。

 ウエストサイズとか把握してれば問題はない。

 ということでご購入となった。


 そういえば、水着を買ったんだから、これ着てプールに行くってことだよな。

 俺がハズキさんと、あと妹も行くみたいだけど、実質プールデートでは。

 なんだかドキドキしてきた。

 いや、一緒に買いに来るのもすでにデートなのでは。

 妹がくっついてきてるからデートではない、といえばそうか。

 なんだか釈然としないが、まあいいか。


「お昼、食べていきますよね?」

「あ、うん」


 ショッピングモールにはファミレスコーナーがあったのでそこへ寄る。


「ハンバーグ」

「じゃ俺はチーズハンバーグ」

「私も、同じのにしましょう、チーズハンバーグで」


 妹が真っ先にハンバーグを選び、俺とハズキさんはチーズのほうにした。

 そういえば同じメニューを選ぶ人の心理は、親近感などがある場合が多いと言う話だった。

 ハズキさんは俺に、多少なりとも気があるのだろうか。

 なんだか、ちょっとドキドキしてしまう。

 ちらっとハズキさんの顔色を窺うと、ニコっと笑顔を向けてくれた。

 今度はめちゃくちゃドキドキしてきて、心臓が破裂しそうだ。

 今の笑顔の破壊力は抜群に高い。

 俺はタジタジで、手で顔を仰ぐ。


「どうしたの、お兄ちゃん?」

「今頃、なんか意識でもしました?」

「いやまあ、なんというか、そうだというか」

「あはは」

「お兄ちゃん、あんがい初心だよね」

「そう言うな、まあ、そうなんだが」


 笑い飛ばされているから、大丈夫か。

 にっこにっこして俺をからかってくる。

 まったく、この二人は仲がいいんだから。


 ハンバーグはそこそこのお値段で、そこそこのお味だった。

 美味しいには美味しい。

 だが、この前のドラゴンステーキと比べちゃうと、ちょっと物足りない味だ。

 ただドラゴンステーキはあくまでゲーム内だからなぁ、ノーカンと言えばノーカンだろう。

 俺たちもグルメになったもんだ。

 チーズはほどよく溶けていて、絶妙な美味さだったので、いいとしよう。


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