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37. オークの森


 森から戻ってきて三人で公園に集まり、また魔道コンロを囲んだ。


「にしし、キノコ、キノコ」

「まあまて、妹よ」

「早く焼こう」

「おう。それではハズキさんよろしく」

「はーい」


 ハズキさんによりキノコがコンロの網の上に並べられて焼かれていく。

 じゅわああといい音がしてくる。

 そして醤油を数滴、上から垂らす。

 じゅわじゅわと焼ける音とそれから暴力的ないい匂いがしてくる。


「わわ、すごい」

「だろ」


 この醤油を買ったのがよかった。

 プレイヤーメイドでちょっと高かったのだ。

 でもやはり焼きキノコには醤油だ。


「いただきます」

「「いただきます」」

「あちあち」

「うまうま」

「キノコ、美味しいわ」

「美味しいです」

「うまい、うまい」


 みんなでキノコをハフハフしながら食べる。

 森探索はこれがあるからやめられない。

 しかし、俺たちはプレイヤーが迷いの森にあふれる前に次のフィールドへと進むことにした。


「やっぱり、オークの森?」

「うむ、たぶんこれが正常ルートだから」

「なるほど」


 迷いの森の隣の森、というのだろうか。

 次のフィールドは「オークの森」と呼ばれている。

 その名前の通り、オークが生息している。


 特級ポーションはかなりのHP回復効果があるらしい。

 しかし市場に出回るものではないため、値段が予測不可能だ。

 とりあえず混乱を回避するため、今は秘匿することになった。

 緊急用に使おう。

 今の所、HPが全回復する。もしかしたら最大値の制限があるかもしれないが、かなりの回復量だといえる。


 そうしてオークの森へと進んだ俺たちは、まあ普通にオークと戦闘になった。


「オークだよ」

「えいやー」

「ていー」

「ファイアーアロー」


 三人で攻撃してはオークを倒していく。

 俺たちも今までの戦闘でレベルアップしている。

 オークと言えば大柄でブタのような顔をしていて、肥満体型。

 力持ちでけっこうな攻撃力がある。

 当たったら痛いが、うまいこと剣で受け流したりすることで対応可能だった。

 ちなみにオーク肉を食べるという世界もあるが、ここではオークは食肉にされていない。


 ただオークは剣を使ってくる。

 どこで拾ったのか知らないが、やはり武器持ちは危険である。


「おりゃあ」

「えいっ」

「ファイアーボール」


 掛け声をかけて、剣を抜刀、斬りつける。

 一応、ゲームなので補正があるのだ。

 それで剣でなんとか攻撃していた。

 ステータス分、筋力なども上昇するので戦える。


 大きな巨体は圧巻の迫力で、ちょっと怖い。

 それでも勇気を振り絞って俺たちは攻撃を加えた。

 ゲームだから出来るというのもある。

 それでもだいぶリアルなので、なかなかどうして。


 ドーン、とオークが倒れるとパーティクルになって消えていく。

 この辺はやっぱりゲームだ。


「ふぅ」

「やっと倒したね」

「うむ」

「んじゃ、次のオーク探さないと」

「そだね」


 薄ピンク色のオークはなんというか二本足で立つブタではある。

 でもどこか人間ぽさもあって、なかなか戦いにくい。

 そうして倒して歩く。


 だいぶ慣れてきたころ、俺たちの前には難関が立ちふさがっていた。

 ――オーク村。

 オークが作った村だ。かなりの数のオークがたむろしている。

 ここを攻略するのは三人だけではなかなか難しい。

 かといって他のパーティーに横取りされるのはちょっと納得いかない。


 俺たちは木の影に隠れて、そのオーク村をそっと偵察していた。


「ひ、ふ、み、何軒だろ」

「かなりの数だな」

「お兄ちゃん、これ倒すの?」

「ああ、そのつもりだけど」

「けっこう大変そうだよ」

「まあそうだな、ハズキさんは?」

「やってみましょうか、せっかくですし」

「そういうなら」


 しょせんはゲームである。

 死んでも復活する。これはデスゲームではない。

 ただなんとなく死にたくはないんだよな。

 死ぬ瞬間を体験したくないというか、変な気持ちになりそうというか。

 臨死体験だと思ったら、怖いし。

 プレイヤー情報に死亡回数っていうのもちゃんとカウントされているので、できれば死にたくはない。


「とりあえず、やってみるか」

「はい」

「うん」


 三人がさっと木の影から出て、オーク村へ向かう。


「おりゃあああ」

「わああああ」

「にゃあああ」


 三人は叫び声をあげながら、突撃していく。


「ファイアーボール」

「えいやー」

「とおっ」


 剣で斬りつけている間に、妹が火魔法を放つ。

 これで何体か一度に倒せた。

 オークは体が大きいため、囲まれても数体が限度で、あとは後ろにいる。

 そういう意味ではタコ殴りにされるならゴブリンとかのほうが怖いかもしれない。


「よし、この調子」

「えいえいえいえい!」

「ファイアーアロー」


 確実に敵を倒して歩く。

 次から次へ、どんどんくるが、構わずに剣を振り続けた。

 そんなこんなで、なんとかやっとのことで、オーク村のほとんどのオークを倒したと思ったところ……。


「なんだあれ」

「オークキング」


 またしてもキング、ボスモンスターだ。


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