そんなこんなで、俺たちはまたまた迷いの森で探索をしている。
今回は未知の要素を探して、森の奥まで入って調べていた。
「なかなかないね、お兄ちゃん」
「だな」
「まあ、そうですね」
「ハズキさん、何かないですか」
「ないです」
「そっか」
妹がそれを聞いてしょんぼりする。
特に何も見つかっていなかった。
さすがに未知の要素となると、確かにまだ見たことない薬草などはたまに見つかるが、用途も不明だったりして、あまり活用方法がない。
もっと大きな、未発見要素を探したいのだ。
そのため、迷いの森を隅から隅までローラー作戦みたいにくまなく見て回っている。
ただ、この作業、非常に地味で。
きゅきゅ。
クモクモまで飽き始めるくらい、ずっと同じような森を歩いて進むしかないという。
いいことと言えば、あの美味しいキノコを三本見つけたので、今日は一人一本ずつ食べる予定。
それくらいだろうか。
やっぱり食い気は重要だ。
でも今回の目的は食い物ではないのだ。
例えば、結界が張ってあるエルフの隠れ集落とか、そういう要素を探している。
無いかもしれない。
でも「迷いの森」という名称からは、何かが隠されていることを暗に示していて、その噂をするNPCたちの話はいくつか聞いた。
いわく、迷いの森には何かが隠されている。
いわく、それは重要な要素であろう。
いわく、見つけたら一攫千金だ。
という具合だ。
まあ、これだけお膳立てされたら、探さないわけにはいかないのが冒険者、プレイヤーたちというものだろう。
俺たち以外にもいくつかの先行者プレイヤーが捜索をしているが、まだ見つかっていない。
「なんか、このへん雰囲気、ちょっと違うな」
「そうかな、言われてみると何となく違うかも」
「そうですね、そんな気がしてきました」
妹もハズキさんもなんとなく感じるのだろう。
森の中なのだけど、なんとなく雰囲気が違う。
あぁ、ちょっとガスってるというか霧が発生しているのだ、この辺は。
「霧だね、霧」
「なるほど」
「そういうことですか」
森というだけでなく、霧が漂う森といえば迷いやすいとして有名だ。
まさに「迷いの森」にふさわしい。
「どっちだろう」
「わかりません」
「とりあえず、直進かな」
「そうする」
妹の直感の通り、まっすぐ進んでみる。
そうしてしばらく行くと、なんと、泉に出たのだ。
「泉がありますね」
「なんか飛んでる」
小さな泉はびっくりするほど透き通っている。
そしてその泉の周りには光の玉がふわふわと浮いている。
とても綺麗だ。
「なんでしょう。妖精の泉?」
「おそらく、そういうのかと」
ミニマップも「妖精の泉」と書かれた独立マップになっていた。
「こりゃ当たりだな」
「ええ」
「うん」
妹が元気よく返事をしてニヘラと笑う。かわいい。
こういうところは元気ちゃんはかわいいので、好きだ。
さて霧に囲まれて、神秘的な泉がある。
「とりあえず、お祈りしていこうか」
「そうですね」
「うん」
三人で並んで日本風だけど両手を合わせて拝んでおく。
特に大きな変化はないが、こころなし光の玉の数が多くなった気がする。
よろこんでくれているようなので、いいとしよう。
「お水、ください」
俺は誰に許可を貰うでもなく、そう口にして水を汲む。
こういう時のために予備の水筒も持っていた。
それからフラスコやビーカーみたいなものもある。
飲んでみると、めちゃくちゃ美味しい。
「ふぱぁ、美味い」
「あ、私も」
妹も一緒になって水を掬って飲む。
「美味しい!」
「ふふふ、じゃあ私も」
ハズキさんも水を飲んで、美味しかったようだ。
笑顔を浮かべていた。
鑑定で見ると、この水「精霊水」と表記されていた。
「これ、精霊水だわ」
「見た感じは普通の美味しい水だけど」
「だな、でも鑑定ではそうなってる」
「なるほど」
こういう水でポーションを作ったらすごいのでは、とすぐに思いつく。
材料は持っていたので、さっそく作ってみると。
「ポーションを作るぞ」
ぐつぐつ煮て、薬草を入れて添加剤の葉っぱを入れる。
そして完成したものがこちら。
「特級ポーション」
「ほーん」
「やったね」
なんともいえないが、素晴らしいポーションが出来上がった。
俺は可能な限りの特級ポーションをその場で製造するのだった。