俺たちは再び迷いの森を探索していた。
以前は南側をうろちょろしていたが今は北側にいる。
というのも王都で『迷いの森の霊草』というクエストを受けたからだ。
なんでも迷いの森にある、特別な薬草の霊草を見つけてきてほしいという依頼だ。
報酬がかなり良かった。
NPCなので報酬はゲーム内通貨ではあるが、大金が手に入る。
物々交換すればバザールのポイントに交換もできるので、損はない。
「どこかな~どこかな~」
「そうね、目を皿のようにして探さなくちゃ」
「ほいほい」
森の中を行ったり来たり。
ゴブリンやコボルトと戦闘しつつ、こうしてあちこち回る。
クモクモも一緒に探してくれているが、なかなか見つからないものだ。
クモクモがいるとスパイダーシルクと戦闘にならないらしく、助かっていた。
「どげんかせんといかんですね」
「なにそれ、お兄ちゃん」
「知らない?」
「知らないよ」
ぐぬぬ。そうか、もうそういう歳か。
「これは?」
「違うっぽい」
「ほーん」
それらしいレア薬草を見つけるも、違う種類だった。
こういう紛らわしいものが何種類かある。
この前、妹が採ってた薬草とも違う。
そんな中、崖があるのを発見した。
「ちょっと登ってみましょうか」
「そうだね」
妹とハズキさんが賛成したので俺も従う。
ぐるっと回ってきて、崖の上へと向かう。
そしてその先には……。
「うわぁ、いい眺め」
「だな」
森が一望できる絶景。
さらに先には王都も見える。
青い空は清々しく、とても綺麗だ。
「そして、この崖の先っぽに生えてるこの白い花」
「うん」
三人で足元にある小さな白い花を見る。
これだ。
これが例の霊草に違いない。
「どうだ?」
「あってる、みたい」
容姿はあってる。鑑定結果の草の名前もあってる。
これで間違いないだろう。
「やったね!」
「ああ」
「お疲れさまでした」
三人でハイタッチを決める。
ふふふ、俺たちは大金を手に入れたのだ。
スキップするような気分で街まで戻ってくる。
ふふふ。
そうして貴族のお屋敷に出向いて、霊草を納品する。
「冒険者様、これは確かに霊草です!」
「ですよね!」
「はい。ありがとうございました。お礼に金貨を少しばかり」
「こちらこそ、ありがとうございます」
「いえいえ、これはほんのお礼です」
金貨を貰う。金貨、重!
うはうはしてアイテムボックスにしまう。
チャリーン。
通貨になって残金に加算される。
ふふふふ。すばらしいお金。
妹もハズキさんも同じようにお礼を受け取り、うやうやしく礼をする。
そして満面の笑みだ。
とてもかわいいが、これがお金の喜びだと思うと、ちょっとおかしい。
「たまにはゲーム内で乾杯するか」
「そうだね、お金も手に入ったし」
「うむ」
いつもRMTで換金しちゃうから、それほど大金は持っていないのだ。
「ドラゴンステーキをください!」
「おおお、ドラゴンステーキ」
高級料理店に行き、ドラゴンステーキを注文する。
ふははは、俺たちはお金持ちなのだ。
「いただきます」
分厚く切ったドラゴンステーキが運ばれてくる。
すでに茶色く焦げ目がついていて、丁度よさそうな火の通り具合だった。
ひと口、食べる。
「うまっ」
「美味しいですね」
「美味しい」
三人で感嘆の声を上げる。
ちゃんとした旨味。それからちょうどよい塩加減。
コショウも使われていてさっぱりと食べられる。
それから醤油ベースのタレがなんともいえない、美味しさを引き立てていた。
めちゃくちゃうまい。
そして肉は柔らかくて、ジューシーなのだ。
「もう一口」
うまうま。
「もう一口」
美味しい。うっま。もぐもぐ。
と、まあそうやって食べて……。
あっという間に三人とも完食したのだった。
美味しゅうございました。
たまにはゲーム内で美味しいものを食べるのも悪くないと思います、まる。