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35. 霊草の探索


 俺たちは再び迷いの森を探索していた。

 以前は南側をうろちょろしていたが今は北側にいる。


 というのも王都で『迷いの森の霊草』というクエストを受けたからだ。

 なんでも迷いの森にある、特別な薬草の霊草を見つけてきてほしいという依頼だ。

 報酬がかなり良かった。

 NPCなので報酬はゲーム内通貨ではあるが、大金が手に入る。

 物々交換すればバザールのポイントに交換もできるので、損はない。


「どこかな~どこかな~」

「そうね、目を皿のようにして探さなくちゃ」

「ほいほい」


 森の中を行ったり来たり。

 ゴブリンやコボルトと戦闘しつつ、こうしてあちこち回る。

 クモクモも一緒に探してくれているが、なかなか見つからないものだ。

 クモクモがいるとスパイダーシルクと戦闘にならないらしく、助かっていた。


「どげんかせんといかんですね」

「なにそれ、お兄ちゃん」

「知らない?」

「知らないよ」


 ぐぬぬ。そうか、もうそういう歳か。


「これは?」

「違うっぽい」

「ほーん」


 それらしいレア薬草を見つけるも、違う種類だった。

 こういう紛らわしいものが何種類かある。

 この前、妹が採ってた薬草とも違う。


 そんな中、崖があるのを発見した。


「ちょっと登ってみましょうか」

「そうだね」


 妹とハズキさんが賛成したので俺も従う。

 ぐるっと回ってきて、崖の上へと向かう。


 そしてその先には……。


「うわぁ、いい眺め」

「だな」


 森が一望できる絶景。

 さらに先には王都も見える。

 青い空は清々しく、とても綺麗だ。


「そして、この崖の先っぽに生えてるこの白い花」

「うん」


 三人で足元にある小さな白い花を見る。

 これだ。

 これが例の霊草に違いない。


「どうだ?」

「あってる、みたい」


 容姿はあってる。鑑定結果の草の名前もあってる。

 これで間違いないだろう。


「やったね!」

「ああ」

「お疲れさまでした」


 三人でハイタッチを決める。

 ふふふ、俺たちは大金を手に入れたのだ。


 スキップするような気分で街まで戻ってくる。

 ふふふ。


 そうして貴族のお屋敷に出向いて、霊草を納品する。


「冒険者様、これは確かに霊草です!」

「ですよね!」

「はい。ありがとうございました。お礼に金貨を少しばかり」

「こちらこそ、ありがとうございます」

「いえいえ、これはほんのお礼です」


 金貨を貰う。金貨、重!

 うはうはしてアイテムボックスにしまう。

 チャリーン。

 通貨になって残金に加算される。

 ふふふふ。すばらしいお金。


 妹もハズキさんも同じようにお礼を受け取り、うやうやしく礼をする。

 そして満面の笑みだ。

 とてもかわいいが、これがお金の喜びだと思うと、ちょっとおかしい。


「たまにはゲーム内で乾杯するか」

「そうだね、お金も手に入ったし」

「うむ」


 いつもRMTで換金しちゃうから、それほど大金は持っていないのだ。


「ドラゴンステーキをください!」

「おおお、ドラゴンステーキ」


 高級料理店に行き、ドラゴンステーキを注文する。

 ふははは、俺たちはお金持ちなのだ。


「いただきます」


 分厚く切ったドラゴンステーキが運ばれてくる。

 すでに茶色く焦げ目がついていて、丁度よさそうな火の通り具合だった。

 ひと口、食べる。


「うまっ」

「美味しいですね」

「美味しい」


 三人で感嘆の声を上げる。

 ちゃんとした旨味。それからちょうどよい塩加減。

 コショウも使われていてさっぱりと食べられる。

 それから醤油ベースのタレがなんともいえない、美味しさを引き立てていた。

 めちゃくちゃうまい。

 そして肉は柔らかくて、ジューシーなのだ。


「もう一口」


 うまうま。


「もう一口」


 美味しい。うっま。もぐもぐ。

 と、まあそうやって食べて……。


 あっという間に三人とも完食したのだった。

 美味しゅうございました。

 たまにはゲーム内で美味しいものを食べるのも悪くないと思います、まる。


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