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8. 鉄インゴット


 このゲームではPKは可能だが、デスペナは10分間、能力値30%減少と所持金の10%損失だけなので、うまみがあまりない。

 もしプレイヤーが装備やアイテムドロップしたり、一時間の能力低下などのペナルティがあると重すぎる。PKに嫌がらせされるだけで、治安悪化につながるだろう。

 一時間もゲームが実質できないとなると、その間にやめたくなる。

 ただし、逆にパーティーメンバーだからといって保護されたりせず、フレンドリーファイヤーになる。

 だから連携するには注意が必要だった。

 PKしたからといって、赤ネームとかの犯罪者フラグというのはない。


 俺は掲示板の書き込みを見て考えていた。

 朝になったら、すぐに雑貨屋に向かうつもりだ。


 とりあえず休憩と称して、宿屋で寝てみた。

 ぐっすり快眠、朝になっていた。

 普通に宿屋で朝食を摂り、ハズキさんとの合流地点である中央噴水広場に向かった。


 ハズキさんと再会して、何件かある雑貨屋をはしごした。

 目当てのものがあるのだ。

 まずは料理の調理セット、初心者鍛冶セット、あとは料理用のお皿とか細かいもの。


 そして、本命、【磁石】。現代文明なら電気とコイルで電磁石からの永久磁石が簡単に作れる。

 そんな現代文明はないので、あるのは天然磁石ということになる。

 もちろん何をするかというと、磁石で【砂鉄】集めをするつもりだった。

 なんとか天然磁石を雑貨屋で見つけて購入。二人分、二つで50kEもした。

 資産があっという間に半分になった。しかしそれだけ儲かるだけの自信がある。


 西平原の南側、海岸に来ていた。人は誰もいない。

 いい天気でロマンチックにハズキさんときれいな海と空を眺めていたいけど、そうもいかないんだ。


「ということで海岸で砂鉄取りをします」

「はーい」


 磁石を海岸で転がすと面白いくらい砂鉄がついてくる。

 それを手で引き剥がして瓶に詰め替える。

 空き瓶まだ結構あるので大丈夫。


 ある程度溜まったら、携帯炉を出して砂鉄を加熱してみる。

 燃料は炉についてきた魔力石でお店でも買える。

 真っ赤な鉄が溶けていく。リアルなら本来木炭を入れて炭素が必要だけど、ここはゲームなので必要ないらしい、無事に【鉄インゴット】が完成、レシピになった。


「なるほどこうやって作るんですね」

「うん」


 一緒に行動しているハズキさんが感心しきりだ。

 将来必要になるかもしれないので、ハズキさんも鍛冶セットを買っている。

 二人で並んで鉄インゴットを量産した。

 砂鉄は取り放題だ。燃料の魔力石は消耗品だけどしばらくは持つようだ。予備もちゃんとある。


●鉄インゴット

 ランク:D

 品質:ノーマル

 鉄鉱石などを炉で熱して溶かして固めたもの。鉄の延べ棒。

 <鑑定Lv1結果>鍛冶で使用する。武器や防具の素材になる。


 ついで、初めてだけど、掲示板情報などをもとに、短剣を作ってみる。

 また携帯炉を使用し、温度を溶けない温度まで落として、インゴットを加熱処理して、セットのハンマーで叩く。

 叩いていくと俺の技術とはあまり関係なく、剣の形に近づいていく。

 ハズキさんにも向こう槌の仕事をしてもらって、ひたすら叩く。


 そしてできたのがこれ。


●アイアンナイフ

 ランク:E

 品質:粗悪品

 装備条件:Lv5

 補正:

  ATK+10

  耐久:20/20

 鉄でできた短剣。

 <鑑定Lv1結果>少し高価な装備品。品質が悪く補正が下がっている。


 初めてだったので、補正が悪いらしい。

 もう一個作ってみたが、今度はよくなった。


●アイアンナイフ

 ランク:D

 品質:ノーマル

 装備条件:Lv5

 補正:

  ATK+15

  耐久:30/30

 鉄でできた短剣。

 <鑑定Lv1結果>少し高価な装備品。


 ノーマルができれば十分だろう。こちらはレシピ化しておく。

 ゲーム内でお昼になった。


 残りのホーンラビットの肉と、調理セットと一緒に買った調味料というか塩コショウを使って携帯コンロで焼いていく。

 ニートだって暇を持て余しているので、昼間料理をしたりするんだ。

 少しだけできないこともないので、こうしてやってみる。

 付け合わせのサラダもできたぞ。


●ホーンラビットのステーキ

 ランク:D

 品質:ノーマル

 効果:

  30分間 ATK+3

 ホーンラビットの肉を塩コショウで焼いたもの。

 <鑑定Lv1結果>シンプルだが肉汁だっぷりでおいしい。


●雑草サラダ

 ランク:D

 品質:ノーマル

 効果:

  30分間 DEF+3

 いわゆる生の雑草を塩ドレッシングであえたもの。

 <鑑定Lv1結果>サラダ油と塩コショウ味でもないよりずっとおいしい。


 利用用途がなかった雑草をサラダにしてみた。

 もちろん鑑定を見て、苦い草とかまずい草などを除外してある。


「へぇ。雑草でサラダですか。思ったよりおいしそう」

「だろだろ。鑑定頼みだとはいえ、なかなかいいでき」

「はい、いただきます」

「いただきます」


 パンは持参してある。

 これでパンにお肉にサラダとご飯らしくなった。


「このセットなら見た目もいいし、おしゃれだから露店でランチ屋さんとかできそうですね」

「うん、まぁそういう生活もいいかもね。ホーンラビットがちょっと強いけど」

「武器も強くなりましたし、次はもっと楽にできると思うんですよ」

「確かにそうかもね」


 おいしくいただいた。

 それに、プレイヤーメイドのご飯には補正がつくことが分かった。

 まぁ掲示板で知ってはいたけど、確認はしてなかった。


 自分の左手用とハズキさんの分の短剣も作った。

 この辺の敵はスライムだけなので、取るに足らない。


 あともう一種類、海岸には大型ヒトデがいるがこちらもほとんど動かないので、敵としてはほとんど意味がなかった。

 ただヒトデそのものをドロップする。

 このヒトデ、鑑定いわく食用らしくてパスタとかにするらしい。


 この日は一日中、鉄インゴットを量産した。

 鉄インゴットを200本あまり、鉄の短剣の先端を10本、鉄の長剣の先端を5本、鉄の槍の先端を5本、鉄のつるはしの先端を5つ、鉄のハンマーの先端、鉄のメイスの先端、と言う感じに武器を量産した。

 鉄の盾も5個ほど作ってはみた。

 最初の一個目こそ粗悪品だったものの、それ以降はノーマル品ができた。

 これは才能があるというわけではなく、熟練度というやつだろう。

 先端系はそれだけだと武器にならない。木で柄を作らないといけないけど、まだ持っていなかった。

 木工スキルも必須ということだろう。


 夕方になる少し前に今日の作業を切り上げて、街へ戻る。

 まずは鉄インゴットを四分の一、50個、バザールに登録しておく。

 お値段一個500pt。ちょいと高い気がするが、最新武器の素材だと思えば悪くないはずだ。

 すぐに木工スキルを取得しにいき、柄にちょうどよさそうな木材をバザールで購入した。


 噴水広場の隅で木を加工して柄を作る。槍は長槍と短槍と両方作ってみる。

 ハズキさんはそれほど鍛冶には興味がないのか、スライムのテイムに行っている。


 周りには同じように、調合や鍛冶、そして料理をするプレイヤーたちが集まっている。

 向こう側には露店のメンバーが多い。

 噴水広場内にいれば、バザールをいつでも開ける。露店もすぐに見に行ける。そして水と明かりがあるのもありがたい。

 そうして自然の人が集まっていた。

 今晩も一部のプレイヤーたちがコップを片手に、飲み会をしている。


<ステータス>

 名前:ウルベウス・ニューウェスト

 種族:ヒューマン  性別:男

 レベル:6

 経験値:50/350

 資金:20,210E

 バザール:35,425pt


 HP:85/85

 MP:75/75

 SP:75/75

 満腹度:100/100


 装備:

  右手:アイアンナイフ ATK+15

  左手:アイアンナイフ ATK+15

  体:初心者の服 DEF+5

  足:初心者の靴 DEF+5


 スキル:

  短剣術Lv3、鑑定Lv1、調合Lv2、鍛冶Lv3、料理Lv1、木工Lv2


 防具とかもなんとかしないと。自分で作れるだろうか。作れないこともないが鉄より革がいいかな。

 なんか鉄だと重そうな気がする。

 モンスター素材とかだろうか。

 とにかくログアウトしてリアルで寝ることにする。


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