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6. 初心者ポーション+


 いつ何が必要になるか分からない。

 このゲームではストレージが大きい。ただし同じものは大量に持てない代わりに、たくさんの種類をインベントリにいれることができるらしい。

 なお重さは感じない。


 初心者ポーションの回復量はヒールと同じぐらいで30だった。

 初心者ポーションの作成方法は分からないが、たぶん薬草と水だけだろう。

 それにラファエルの葉を入れれば回復量が増えるはずだ。

 この情報を活用するには、調合のスキルが必要そうだ。


 このゲームは三倍加速なのでタイムテーブルは以下のような感じになる。


 リアル   ゲーム内

 00:00 - 18:00

 02:00 - 00:00

 06:00 - 12:00

 10:00 - 00:00

 12:00 - 06:00

 14:00 - 12:00

 18:00 - 00:00

 22:00 - 12:00


 今はリアルでは午後三時でゲーム内時間も午後三時だった。

 ネットのコアタイムの午後八時から午前零時が昼間になるように調整されている。


 連続ゲーム時間や一日の接続上限がないのは、ニートとしてはかなりのアドバンテージだ。

 一日リアルで三時間までとか制限されてしまうと、社会人や学生よりもたくさんプレイして引き離すのが困難になる。

 しかし健康第一なので、こうしてたまに休憩することにする。自己管理、自己責任というやつだ。

 ネトゲのやりすぎで死亡するとか悲しいにもほどがある。母ちゃんが泣くぞ。


 収穫を終えて少ししたら、すぐにハズキさんがインしてきた。


「お帰り」

「ただいま」


 挨拶をすると、朝顔が咲いたみたいな笑顔を返してくれる。すごくうれしい。

 ハズキさんは何をしている人なんだろう。

 ニートのようなものらしいが、気にはなるが詮索はしてはいけない。それがマナーというやつだ。


 ラファエルの木の葉について説明するか悩む。まぁ一緒に行動するなら説明しないわけにはいかないな。


 スキル屋にいき【調合】スキルを買う。これも1,000Eだった。

 次いで紹介してもらった雑貨屋にいき【初心者調合セット】2,000Eで購入。あと空き瓶を購入する。このゲームにはレンタル工房なるゲームシステムがなくて、生産設備は自前が必要だった。

 鍛冶も初心者鍛冶セットの携帯炉があるそうだ。


 水が必要なので噴水広場に戻る。隅の方に座り、調合セットを展開する。

 ビーカーを火にかけて薬草一つ、水を一杯入れ煮る。

 それをこして瓶に戻せば完成だ。

 できたのは予想通り【初心者ポーション】だった。


 『初心者ポーションをレシピに登録しました』と個人アナウンスされた。

 ガイドブックによると生産品はレシピになると材料と生産スキルがあれば簡易作成ができる。

 同じように調合とセットを買ったハズキさんにレシピを複製して渡す。

 レシピを開発した人はそれを複製して配布できる。

 作り方は秘密だが材料は公開情報になり、生産が可能になる。

 レシピ開発者はレシピを売って儲けられる。ただし作成方法が簡単ならすぐに類推されて、レシピをコピーされてしまうのはしょうがない。


 ハズキさんがレシピで初心者ポーションを作ってくれた。

 レシピで作れることが実証された。


 次は俺が薬草のほかにラファエルの葉を一枚入れる。

 そして煮て調合する。

 完成したのは【初心者ポーション+】だった。回復量50。なかなかいい。

 レシピ化すればすぐに量産できて30個生産した。

 100個とかを手作業はきついのでレシピは本当に助かる。劣化とかもないのでイージーモードだった。

 西門に行きバザールで「レシピ」を検索してみると【初心者ポーションのレシピ】はすでに1,100ptで登録されていた。数は五個。

 【初心者ポーションのレシピ】を10個登録する。値段は一つ550pt。レシピなんか買わなくても試してみればすぐにできるが、レシピは買うものという人もいるのでたぶん売れる。1,100ptはちょっと高いと思うので半額にしてみた。

 ハズキさんは興味深そうにしていた。


「プラスのほうのレシピは登録しないんですか?」

「ああ、葉っぱも有限だし秘匿することにしたよ。そもそも葉っぱを見つけられないと思うし。様子見ということで。現物だけ出品しようかな」

「ふーん」


 まだptの相場が安定しないので、換算額もあてにはならない。

 割高だけど薬草が10個110ptだったので、初心者ポーション+を10個330ptで1セットだけ登録してみる。

 残りのポーションは自分用だ。


 ハズキさんも手持ちの薬草を初心者ポーションに調合していた。


「なんかエスタを稼ぐ方法があればいいんだけど」

「そうですね、ペットは換算額からすると高すぎて誰も買えないんですよね」

「そういうことだね。ポーション量産して売るって手もあるけど」

「薬草売るよりは利益率が高いのかな」

「うん、たぶん」


 生産系でいくのかレアドロップ、特に装備の販売で儲けるのか方針を考えた方がよさそうだ。

 生産品は初期が一番高い。安定してそこそこの値段になる。レアドロップ装備はトップ集団になると、ひとつドロップするだけでもかなりの収入になる。

 レアドロップ装備はそもそもドロップせず、装備の素材をドロップするタイプのゲームもあるので、そうすると素材よりは剣とかに加工して売った方が売り上げは高いはずだ。

 鍛冶も取るべきだろうか。


『ホーンラビット(名前「ムーン」)が1,100ptで販売されました』


 オスのほうが一匹売れた。すでに数匹売れているので、これが最後の一匹だった。

 四匹売って四千円の収入だ。

 もちろん自分のペットは取っておいてある。


「とりあえず、スライム捕獲しに行こう」

「はい」


 西の平原に行き、スライムをテイムする。

 捕獲用の魔力石は五個しかないけど、五匹テイムできた。

 ハズキさんも六匹捕獲してホクホク顔だ。


「えへへ、一万二千円ですぅ~」


 相変わらずぼったくり価格といえなくもないが、背に腹は代えられない。

 西門に戻ってきて登録する。


「ねね、あれ」

「ああ、スライムだな」


 スライムを連れている人がいた。

 やはりモンスターを連れていると目立つ。

 全部、俺たちが捕まえたやつだと思うと、なんかゲームではあるが、社会の役に立った気分がしてくる。


「少し人も落ち着いたみたいだから、また石ころと草狩りしよう」

「はーい」


 道中拾った石ころもすでに100個集まっている。追加で100個ぐらい確保しよう。

 これは露店で販売してみようか。

 草は薬草をメインに、雑草らしい草も確保していく。何か役に立つかもしれない。


 石100個、魔力石三個を拾った。薬草は二十個ぐらいだ。

 スライムのテイムを追加で三匹。

 無限ループになりそうだったが、ここで一度とめておく。


 中央広場に戻り、露店を眺める。

 中古の空き瓶を買い集める。ポーションにするにはどうしても瓶がいる。

 隅の方へ行き、調合セットを出して、初心者ポーションを薬草のある分だけ二十個生産しておく。

 ハズキさんも自分の草の分を調合していた。

 これは販売用だ。



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