とりあえず【トライセン西の平原】にマップ名が切り替わった。
二人でパーティーを組んで準備をする。
「それじゃあハズキ、手頃な投げるのによさそうな石、あと変わった石があったらどんどん拾って。あと草も抜いてね」
「石に草? ですか?」
「そうだよ。石と草。門すぐには敵はいないみたいだし、拾い放題だ」
「は、はいっ!」
二人でその辺を移動して、石とそれから種類は不明な草をどんどん手に入れていく。
白い石、黒い石、それから茶色など。
宝石みたいはものはなかなか見つからないが、まぁ当り前だろう。
草はタンポポみたいに株が分かりやすいものを初心者の短剣で根元を切断して収穫する。
このゲームには【未鑑定】はない。名前など基本情報は誰でもが見ることができる。
より詳しい情報は鑑定スキルで見ることができるらしい。
三十分も集めただろうか。石が自分の分だけで200個、謎の草が30束ほどになった。
ほとんどは「石ころ」「雑草」だったが紫水晶みたいな「魔力石」が四つ「薬草」が五つ混ざっていた。
「こんなのどうするんですか?」
「よし一度戻ろう。門のところのバザールで売ろう」
「えぇ」
俺はバザールに行って、「石ころ100個、110pt」1個1円で販売する。
200個あるので2セットできた。
バザールでは記名、匿名が指定できるので今回は匿名にしている。
「ハズキ、現時点で目立つとあれだから匿名にしたほうがいいよ」
「分かりました」
ハズキも同じように石を2セット同じ値段で販売して、市場には4セット合計400個の「石ころ」が販売されている。
「こんなの誰が買うんですか?」
「そりゃあ【
「確かに戦闘しながら拾うのは面倒だと思いますけど」
「面倒くさいことはお金で解決したくなるのが人間なのさ。たくさん集めるのはなんでも大変だから、こういうのも隙間産業としては意外と売れるんだ」
「なるほど」
「もう三十分、同じ分あと2セット集めてこようか」
「はい」
俺たちはそうしてまた石拾いをする。
途中で『バザールで石ころx100が110ptで販売されました』と個人アナウンスが入る。
「お、一セット売れたぞ」
「本当に売れるんですね。へぇー。眉唾だと思ってました」
「まぁまぁ、勘だけど、当たりだな」
こうして追加の二人で4セットの石ころを販売登録した。
「売れたから買い物もしよう。初心者の短剣、買っちゃおうか」
「なんでそんなもの」
「いいからいいから」
俺は手持ち100ptから55pt消費して【初心者の短剣】を購入した。
「どうだ、ダブル初心者の短剣。二刀流」
「それちゃんと装備できてるんですか?」
「え、できてるよ、ステータス画面にも表示されてるし」
「へぇ」
【初心者の短剣】はATK+5のしょぼい装備だが、重要な機能がある。それは「破壊不可能オブジェクト」になっていることだ。
装備には耐久値というものがあり使うと削れていくのだけど、この装備ならその心配がない。
初期装備は意外と店で売ってないということがあるので、取っておくとあとで高値になることがある。
新人が増える間は安値を続けるだろうけど、新規が減るとサーバー内でのレア度が上がるんだろう。
そういうことをよく知らない人は、装備更新で店で売ってしまう人もいると思う。
店で売っていないかどうかは、今のところ勘だけど、たぶん正解だろう。
別に二刀流スキルがないと二刀流ができないということではない。
<ステータス>
名前:ウルベウス・ニューウェスト
種族:ヒューマン 性別:男
レベル:1
経験値:40/100
資金:950E
バザール:45pt
HP:60/60
MP:50/50
SP:50/50
満腹度:85/100
装備:
右手:初心者の短剣 ATK+5
左手:初心者の短剣 ATK+5
体:初心者の服 DEF+5
足:初心者の靴 DEF+5
スキル:
なし
戦闘はしていないけど、採取でも若干経験値が入るらしい。
「そいじゃ、スライム行ってみよう」
「はい」
町から少し離れると敵がちゃんといる。
スライムだ。色は紫色をしている。目や口はなく、水まんじゅうみたいな形をしている。
「てりゃ、二刀流!」
もちろんただの掛け声であって意味があるわけではない。
スライムを両手で順番にたたき切ると、ゼリーに切れ目が入って、ダメージが与えられる。
敵の名前とレベル、それからHPの残量はバーになって表示されている。
まだ手探り状態だった。
ハズキも一緒になってスライムに攻撃して倒していく。
スライムはほとんど動かないので、一方的だった。
「簡単ですね」
「まぁ最初の敵だからね」
近くにいるスライムにこちらから接近して次々と倒していく。
スライムを三十匹ほど退治して、ドロップをゲットした。
スライムゼリーとスライムの核が二十個ぐらいずつだった。
レベルも上がり、今はレベル3になった。
「ところでさ、スライムって何食べてると思う?」
「えぇえ? そりゃあ草とかじゃないですか?」
「それで紫になると思う?」
「そうですね。あ、あれ、魔力石では?」
「だよね、俺もそう思うんだ」
「食べさせたら、ペットになりそうな感じしない?」
「します! すごくします、さすがウルさん」
「じゃあ次のは攻撃しないでね」
「はい」
俺たちは紫のスライムに近づき、ハズキが手から魔力石を実体化してスライムに食べさせる。
「手が冷たくて気持ちいいですね」
「なるほど」
「お食べてくれましたよ。ああああっ」
ハズキが興奮していた。
「メッセージが出ました。えっと『スライムをテイムしました。名前を付けてください』だそうです」
「じゃあつけてあげて」
「はい。スライム一号の君は『グレープゼリー』だ」
「なるほど」
グレープゼリーは光になって消えていった。
「あれ? ああ、アイテム化したみたいです」
「なるほどね。しまえるんだ。まぁ連れて歩くのも面倒だもんな」
「召喚方式なんでしょうね」
「ふむふむ」
「よし、魔力石あと何個ある? 俺はあと八つ」
「わ、私はあと六つです」
「さっそくペットにしようか」
「はい」
次のスライムを今度は俺がペット化する。
その次はハズキと順番にして、スライムのアイテム化したものが二人で12個になった。
一個の魔力石でテイムできないこともあった。
「よし、ハズキ。門に戻ろう。スライム売るぞ」
「え、全部売っちゃうんですか?」
「いや、最初は一匹だけだ。いっぺんに出すと値段が下がるんだ。一匹目はハズキが出していいよ」
「分かったわ」
ハズキがアイテム化されたスライムを売りに出す。お値段2,200pt。二千円だ。
グレープゼリー君はこうして売られていった。
ちなみに複数いても同じ名前をつけることができる。面倒だったので全員グレープゼリー君にしてしまった。