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 鮮やかな水色が、白く細い塊を携えて帰ってきたのは数時間ほど経った後のことだと思う。

『放せ! 龍如きが大巫女様を相手取れると思うな』

『はいはい、話ならいくらでも聞くから』

 白蛇は僕を見るなり『貴様の指図か、これは』と睨みつけてきた。

『違うよ、と言ったら嘘になるかな』

 すると白蛇は、驚いたように『貴様が一番大巫女様に懐いていたではないか』と言った。

「確かに、それは疑問だったんだ。俺もさー、それなりに長生きだから出雲と仲良かったお前も知ってるわけ。出雲と相反する理由もわかってはいるけど……って感じだな」

 南雲は珍しく言葉を濁した。

『確かに、僕が出雲と仲が良かったことは確かだけど……。僕は出雲の眷属ではないし、独立した神だ。彼女が間違ったことをしているのなら、止めなきゃね』

『貴様は、それでも大巫女様の一番のお気に入りか⁉︎ 大巫女様が敗れた時、一番泣いていたのは──貴様ではないのか?』

 確かに白蛇は正しいことを言っている。僕が出雲が大敗した時大泣きして、雑魚扱いされて封印されなかったという何とも皮肉な話。白蛇は傍にいたから、確実に知っているはずだ。

「まあ、過去より今だ。過去は過去で、良かったことも沢山あるけどよ」

『今は、巫女の行動基準が変わっている。我も全力で挑むが、万が一の時は治療を任せたぞ、兎神』

『勿論』

 白蛇は何も言わなくなっていた。後は出雲を待つだけだ。


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