目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

3

 最後の龍が居るY県に跳び、辺りを散策する。僕の記憶違いでなければ、この辺りに居るはずなのだけれど……。

「やあ、兎神くん。元気にしてた?」

 背後から声をかけられ、思わず声が出てしまった。僕とて一応神なのだから、何かが近づいてきたらわかるはずなのに……。翠龍と名乗るこの龍は、気配を消すのが上手い。三龍の中でも、一番上手いのではないだろうか。

「元気だよ、この通り」

 軽くジャンプしてみせると、翠龍は「元気そうで何より」と笑った。

「詩龍から聞いたよ。僕たちの力が必要なんだって?」

「そうなんだよ。出雲も仲間探しをしている頃だろうし、先手を打たなきゃね。協力してくれる?」

 彼……彼? は考え込む仕草を見せた。持っている透きとおった球体を見つめている。しばらくすると、こちらに目線が戻り

「いいよ、協力しても。だけど一つ条件がある。出雲は封印ではなく、抹殺すること。それさえ吞んでくれれば、僕は何も言うことがない」

 確かに、封印したらまたこの騒動が起きかねない。過去との決別の為にも、翠龍の言うことは呑むべきだ。

「わかった、誓うよ。二人が力を貸してくれるなら、詩龍も貸すって言ってくれたしそっちに行かなきゃ。少しの間だけど、ありがとう。僕は行くね」

「慌ただしいね……この戦いが終わったら、ゆっくりワインでも飲んで話そうよ。この見た目じゃ仕入れてくるのは大変だけど」

 翠龍も僕も、人間としての姿は少年だ。茶髪で、少し髪が長くて、紫色の瞳。人間で言えば十五歳にも満たない見た目だろう。酒を買える見た目ではない。誰かに頼って買ってもらうしかないのが辛いところだ。

「じゃあ、そういうことで。またね」

僕は再びS県に跳んだ。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?