山から下りると、「どこかに落ちつける場所はないかな。傷の様子を見ないと」と白兎が辺りを見渡している。この辺りにはそんな場所はないので、一度家に帰る必要がありそうだ。
「家に帰ればあるけど……。それにしても、織彦さん大丈夫かな」
白兎はその問いを無視した。やはり、希望が薄いのだろう。どうしていいかわからず、雨に紛れて頬に伝うものがあった。
「それにしても、予想以上だったな。この怪我だけで済んだのは奇跡だよ」
家に帰ると、極力急いで自分の部屋に戻った。刺された箇所からは、今も出血が止まらない。
「……僕が何を司る神か、教えてなかったね」
白兎は、僕の出血箇所に手を当てた。すると、途端に出血が収まった。痛みはあるものの、脱力感はなくなってきている。
「僕の加護は、治癒。これくらいの怪我であれば、治せるよ」
実戦向きじゃないけど、と白兎は言うが凄い神力だ。出雲が重宝していた理由もわかる。
「それにしても、痛手だなぁ。惣はしばらく休んでて。僕が代わりに仲間探しをするよ」
「え、その間に出雲に襲われたりしたら……」
「僕の式神を置いておくよ。治癒能力の向上にも繋がるしね。それに、そうしておけば非常時にはすぐ戻れる。もっとも、多分出雲は僕を狙ってくると思うけど」
白兎が床に手をかざすと、そこから兎が現れた。
「これで安心?」
「まだ不安だけど……でも、信じるよ。白兎のこと」
「ありがとう。じゃあ、僕は行くね」
白兎は、僕の部屋から去っていった。