目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
8

 T駅は、相変わらず混雑していた。通勤ラッシュの時間は過ぎているはずなのに。これが首都の中枢ということなのか。新幹線のチケットを買い、ホームへ向かう。思ったより時間に余裕がなく、半ば駆け込みで新幹線に飛び乗った。数日ぶりの地元だというだけで、一気に安心感が込み上げてくる。帰ったら、まずはゆっくり休もう……。そこで僕の意識は途切れた。


 目が覚めると、次が僕の地元の新幹線駅であるJ駅だった。降車の準備をし、ドアの付近に陣取る。僕の他に降車客はいない様だ。見慣れた田園風景が夜の静けさと融合して、帰ってきたんだという気持ちにさせられる。

“まもなく、Jです”

 チャイムと共に、駅名が聞こえた。もうしばらくすると、新幹線は駅に停車しドアが開いた。降りると、首都に比べてだいぶ肌寒い。もうそろそろ初雪だな、なんて考えながら母親に連絡し迎えに来てもらうことにした。小言は覚悟の上だ。見慣れた車が、五分ほどで到着し「惣、あんたこんな遅い時間までどこほっつき歩いてたの?」と乗るなり質問された。

「あ、うん。ちょっと用事があって」

「もうこんなに夜遅いのよ? 普通母親を迎えに呼んだりしないわよ」

「ごめん……」

 その後も母親の小言は続いたが、家に着くとぴたりと止んだ。これでおしまいみたいだ。

「母さん、迎えありがと」

「いいわよ、もう。そんなことよりお風呂入っちゃって。惣が最後だから」

「わかった」

 二階にある自分の部屋に荷物を置き、お風呂の準備をする。脱衣所で服を脱ぎ、シャワーを浴びてからお風呂に入る。ここ最近張り詰めていた心が、一気に解けていく感じがする。しばらくぼーっと湯船に浸かり、風呂を出た。やるべきことは、まだ残っている。自室に戻ると、ベッドで白兎が寝ていた。流石に神様といえど疲れたのだろう。僕も相当疲れているので、白兎の邪魔をしないように慎重に寝転んだ。



コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?