列車に乗っている間に、宿を探す。特別な観光地という訳でもないのに、僕の財布に大ダメージだ。どうしよう……。この辺りには当たり前だが知り合いもいないし、安い宿もない。八方塞がりだ。
『ねえ、そろそろ帰らないの?』
胸元に隠れている白兎が問いかける。今まで気配を消していたのは何だったのだろう。
「帰らないのって……なんで?」
『僕にはわかるんだ、出雲がこっちに来ているのが。彼女と対峙するにはまだ、準備不足だよ。一度帰って態勢を立て直そう』
「そんなこと言われても……」
地元へ行く新幹線が、まだ終電じゃないと良いけれど。とりあえずはT駅を目指すことにする。時刻表上では、終電にはあと数時間ほど猶予がある。恐らく帰れるだろう。