星男のところへ行くには、一度C県のN駅に戻り、そこから支線に乗り、乗り換えて二時間。遠い。遠すぎる。資金が底を尽かないか心配すぎる。それに、僕のお尻ももう限界だ。座るだけでも痛いし、かといって立ちっぱなしは疲れる。こればかりは我慢するしかない。加護も貰ったことだし。
お昼ご飯に、支線の終点A駅で有名らしい唐揚げ蕎麦を食べた。一つ一つの量が多く、満腹になったところでまたJ線に乗る。眠らない様に気をつけないと。最悪白兎に起こして貰えばいいが……気を引き締める。
目的地であるO駅は、駅前に大学があり学生らしき人の乗り降りが多かった。それに混じって大学へは向かわず、体の赴くままに神社へ向かう。
「こんな神社に何の用だ」
黄土色の髪をした男性に話しかけられた。僕は咄嗟の切り返しが凄く苦手なので
「あ、えと……参拝に」
としか答えられなかった。
「こんな人から忘れられている様な神社に? ……あぁ、なるほど。あいつの遣いか。お前に話すことは何もない。封印は解けていない、それだけ聞けば安心するだろう。あの武神も」
話を一方的に切り上げられてしまっては、打つ手がない。
「ま、待ってください! 僕は貴方にお願いがあって来ました!」
「お願い?」
「巫女……出雲が、封印を解かれて各地を徘徊しているんです。また彼女を封印したいんです、どうかお力添えを」
「嫌だ」
即答だった。彼の口元は怪しく歪んでいるのを見ると、ロクなことを考えていない様に見える。
「あの武神に一泡吹かせる良い機会だな。俺は、巫女の側に回ることにする。どうせそのうち会いに来るだろう、向こうから」
男は、瞬きをしたらその場にはもう居なかった。仕方ないので、神社から去る。無駄な時間を過ごしてしまったが、これで少しは神慣れしたかもしれない。
I県の県庁所在地であるM駅まで戻り、昔ながらの路線に乗り今度はイカヅチ様の鎮座する神社へ向かう。海沿いの景色は、中々に絶景だった。普段海とは遠い生活をしているので、尚更だ。絶景に見惚れていると、神社の最寄り駅に到着した。もう夕方だ。神様は寝るのが早いと聞くし、走って神社に行こう。僕の体力も、もう限界だけど。