白兎神社。兎を神として祀る、不思議な神社。僕は、そこに参拝しに来ていた。友人が送ってくれたメッセージに、気になる点があったからだ。
「巫女服姿の女に気をつけて。彼女は人間ではない。見かけたら真っ先に逃げるか、それか私たちの仇をとってほしい。そのためには、こちらも多くのこの世ならざるものを味方につけておく必要がある。悪いけど、一生のお願い。仲間を集めて、巫女を止めて欲しい」
それ以降連絡がとれないということはそういうことだろうと思いながら、仲間探しを決意した。それが、せめてもの供養だろう。僕には、霊感が少しだけだけどあるから適任と言えなくもないかもしれない。こんな少しの霊感で仲間に出来る存在と言えば、小動物がいいところだろう。
「白兎様、いらっしゃいませんか」
そう呼びかけても返事はない。当たり前か。一人一人に反応していても、疲れるだけだ。神社に背を向け立ち去ろうとすると、「待って」と声がかかった。
「何か、僕に用事だった?」
白い髪を二つに結った少年がそこに居た。目の色が赤いことで、一層浮世離れして見える。
「白兎様……?」
僕の第六感が、そうだと告げている。彼も頷き、「そうだよ。人間の姿の方が気がつかれやすいかと思って支度してたら時間がかかっちゃった。ごめんね」と謝られた。
「あと、様はつけなくていいよ。僕は確かにこの世の存在ではないけど、崇められるのは苦手なんだ」
「じゃあ……白兎」
神様を呼び捨てなんて、バチが当たりそうだ。
「うん、それでいいよ。お願い事聞いていたけど、仲間を探しているの?」
「そうだよ。僕の友達が呪殺されたから、かたき討ちってやつ」
白兎は、しばらく考える素振りを見せてから
「僕で良いなら、力になるよ。微々たる力だけど、無いよりは役に立てると思う」
と、僕に手を差し伸べた。
「勿論、君が良ければ。だけど……」
「ここまで来た甲斐があった……。ありがとう」
僕は、白兎の手をとった。そのまま握手すると、小動物特有の体温が伝わってくる。やっぱりこの姿はかりそめなんだな、と実感した。
「呪殺……まさかね」
白兎がぼそりと何かを口にしたが、小声すぎてよく聞き取れなかった。