私は声をかけた。
「あなたたちは、勘弁しておいてあげるわ。そういう『約束』だもの」
泣きじゃくって、遺体を抱えている彼女にはきっとこの声は届かない。届けようとも思っていないけれど。
私はその場を後にした。次は誰の力を借りようか。世に恨みがあれば、私と共鳴してくれそうなものだけれど。警備があまり頑丈でないと、尚のこと良い。今回はあの箱を瞬間移動で取ってきて、戻すのに少し苦労したから。歩きながら考えていると、蛇神が「翡翠姫はどうでしょう」と提言してきた。
翡翠姫。かつて私とも関係があった、全身が翡翠で構築されている女性。場所もここからそこまで遠くないし、良いかもしれない。
「良いかもしれないわ。ありがとう」
翡翠姫は、今はどうしているのだろう。やはり誰かに封印されているのだろうか。
彼女は無害に生きているはずなので、あり得ないとは思うが……。確認しなくては。