家のドアを開け、入る。
「ただいま」
「おかえり、今日は朝早かったわね。夕飯はもう出来てるから、食べちゃって」
手洗いとうがいをさっと済ませ、夕食に手を伸ばす。今日はキノコを和えたものに、昨日のお浸しの続き。親に今日のことを悟られない様に、笑顔を取り繕って食べる。味は全然しなかった。
夕食と風呂を済ませ、ベッドに寝っ転がる。オスワサマが封印されていた箱を手に取ってみても、ただの古びた箱だという認識しか出来ない。しかし、これだけ厳重に封印されていた理由は何なのだろう。やはり、厄災なのだろうか。だとしたら、最悪俺は自害させられるかもしれない。S市は、時代の流れが何処かで止まっている奇妙な町だ。ことオスワサマに関しては、古くからの住民は気にかけている人間も多い。だからこそ、早く見つけ出して封印し直さなくては。俺の霊感は微々たるものだが、外部から有名な神職の人間を引っ張ってきてその力を借りれば容易いことだろう。
朝起きると、快晴だった。嫌になる程の。俺の心はこんなにも曇っているのに。天気に八つ当たりしても仕方がないので、制服に着替えて朝食を済ませる。歯磨きをし、家を出て桃華を迎えに行く。俺たちの仲は、周囲の人間も公認でひやかされることもあるけれど概ね上手くいっていた。
「桃華、おはよう」
俺が彼女の家に着くと同時に、玄関のドアが開いた。
「おはよう、信。……ねぇ、オスワサマ見つかった?」
首を横に振ると、「今日から私も協力するから! 一緒に探そう」と言ってくれた。どこまでも真っすぐな存在だ。そういうところが好きなのだが。しかし、放課後使える時間は限られている。効率的に捜査しなければ。