放課後、うちと真矢、愛里の三人で千秋の家を訪れた。千秋の部屋らしき場所にはカーテンがかかっていて、中の様子はわからない。うちらの代表として愛里がインターホンを押す。
「あのー、浅井ですけど。おばさんいてはる?」
しばらくすると、バタバタという音と共に若々しい女性が扉を開けた。
「あらぁ、こない沢山。千秋って人気者なんやねぇ。三人とも入り」
「はい」
「お邪魔します」
一礼し中に入ると、和風な部屋に通された。応接間といったところだろうか。高そうな壺に、花が活けてある。おばさんは、ゆっくりと口を開く。
「千秋がな、急に学校行きたくない言うからいじめにでも遭ったんかな思て。でも、お友達も大和くんも見舞いに来てくれたし、思い過ごしだったみたいや。良かったら、千秋に会っていったって。大和くんも居るけど」
おばさんは「ついてきて」とうちらを手招きすると、階段を上り始めた。そして、閉じた扉の前で立ち止まると
「千秋、お友達来たで」
扉を開いた。そこに居たのは、布団を被って震えている千秋。その横で寄り添う大和。
「千秋っ、どないしたん!?」
真っ先に彼女のもとに駆け寄ったのは愛里だった。うちはというと、身体が硬直して動かなかった。真矢は愛里に続いて千秋に近づき、「詳しいこと、話せへん?」と問うていた。
「詳しいことは、僕から説明するわ。千秋も、一人になる時間が必要やろうし。一旦皆で外行こ」
大和の半ば強引な誘導に圧倒されつつ、うちらは部屋を出た。