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 昼休みになると、真矢からこちらへ寄ってきた。

「なぁ、朝なんか言いかけてへんかった?」

「あぁ、それな……それなんやけど」

 うちは、千秋の現状について大和から聞いた範囲で教えた。それを聞いた真矢は一言。

「……呪いやない?」

「……呪い?」

 真矢は神妙な顔つきで繰り返す。

「華、明らかにヤバいお札破ったやん。それが解放されて、千秋に降りかかったとか……」

「あれは事故やん! ……それに、それやとうちに呪いがかからんとおかしいやんか」

「まぁ、そりゃそやな。うちには何もないのも気になるけど……」

 真矢は、セミロングの髪をかきあげながら呟く。

「華は何もなかったん?」

 うちの半日を回想してみる。朝、変な夢で目が覚めて大和に会って……。ん? 夢?

「そういえば、変な夢見たわ。目覚めが悪くて最悪やった」

「どんな夢やったん?」

 あの夢は鮮明に覚えているから、真矢に詳しく説明できる。

「うーん……それだけやと呪いかどうかはわからんような……。単純に変なトコ行ったから気持ち弱ってそういう夢見たんかもしれへんし」

「そうやね……」

「そうとは限らんかもよ?」

 割って入ったのは愛里だった。そういえば、愛里と千秋は幼馴染だと聞いたことがある。今回の騒動についても、うちらより詳しいかもしれない。

「愛里、それってどういうことなん?」

「やから、真矢はともかく華も呪いに巻き込まれとるんとちゃうかって話。やって、呪いを解いたのは華なんやろ? 千秋以上に標的にされてもおかしないわ」

 確かに愛里の言う通りだ。だが、そうなると千秋の方が重症であることの説明がつかない。

「華は夢でじわじわ呪われるタイプなんかもしれんなぁ。お祓い行った方がええんちゃう?」

 愛里はちら、とクラスメイトに目を向けその中の一人に近寄った。

「美代の家って、確か神社やったよな? お祓いとか出来るん?」

 美代、と呼ばれた人物は明らかに困惑している。話題が自分に向くとは思わなかったのだろう。

「え、まぁ出来やん訳ではないけど……うちは神職の資格とか持ってやんからお父さんに頼まんと……」

 美代はそう言い、元居た輪の中に戻ろうとした。それを愛里が引き留める。

「ほな、お父さんに言っといてや。三人お祓いして欲しい人が居るって」

「わかったけど……あんまり期待はしやんで」

 今度こそ、美代はグループに戻っていった。これは期待が薄そうだ。

「嫌われるようなこと、うちしたかなぁ」

「愛里は強引なんや、もっと謙虚に生きた方がええで」

 美代と愛里は中学が一緒だったらしい。その間に何があったのかは不明だが、あまりいい関係とは言えないだろう。愛里は美代のことを悪く思ってはいないのだろうが。

「でも、お祓いするなら神社かお寺さんやろ? 美代の家神社やし、ちょうどええかなって」

「そりゃそうやけど……」

 愛里は強引だが、合理的でもある。確かに美代の家で祓って貰うのが効率もいい。内輪だけで完結するのだから。しかし、そもそもの問題家の外に出たがらない千秋をどう説得するのか。問題はそこにある。

「なぁ、帰り道千秋の家に寄ってかん? 心配やわ」

「心配?」

 うちは愛里に千秋の現状を伝えた。

「確かにそれは心配や……。昨日三人で行かせたうちにも非はあるかもやし、同行させて」

「ええよ」

 愛里は悪くないと思うが、同行されるのは歓迎だ。千秋と愛里は幼稚園からの付き合いだと言うし、頼りになるかもしれない。

「ほな、放課後は千秋の家に行こ!」

 また視線を感じたが、どの方角からかはわからなかった。そのまま、昼休みは終わってしまった。


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