学校に到着すると、愛里が声をかけてきた。
「千秋が居らんなんて珍しいなぁ」
事実を知ってしまったが故に、何も答えられなかった。精々「せやな」と言うのが限界だ。真矢は普通そうにしていたが、何もなかったのだろうか。
「あ、真矢」
「何や?」
声をかけると、やっぱり普段の真矢だ。変わったところなど一つもない。
「今朝」
「朝のHRを始めるぞ。皆、席につけ」
うちの言いたかったことは、先生の号令によってかき消されてしまった。真矢は自分の席へ行ってしまったし、昼休みになるまでこの話はお預けだ。