遥か銀河の彼方、アステラという星に猫がいました。
その猫の名はバイト猫。
アステラ星で最も大きく、最も品揃えの豊富なコンビニで、最も優秀な店員を務める猫です。
とはいえ、この星にはただ一つのコンビニしかなく、店員もこの猫ただ一匹。そんなありふれた日々を過ごすバイト猫の物語です。
バイト猫は今日も早朝からコンビニに立っていました。お店の自動ドアが開くたびに「いらっしゃいませ!」と小さな声で鳴くのが、彼の仕事です。アステラ星に住んでいるのは人間ではなく、さまざまな形をした生物たちです。
今日もバイト猫の店には奇妙なお客さんがやってきました。銀色の殻に覆われたカニ型の宇宙生物が、カサカサと足音を立てながらお店に入ってきます。
「カニ様、いらっしゃいませにゃー」
バイト猫はいつものように挨拶しながら、お客さんが欲しそうなものを察するため、その小さな目を細めました。カニ型の宇宙生物は、じっと棚を見つめています。バイト猫は彼が探しているものがわかりました。おそらく「星空スパイス・クラッカー」でしょう。
バイト猫は店内を素早く駆け巡り、棚の一番上からそのクラッカーを取り出し、カニ様に差し出しました。
「こちらでよろしいですかにゃ?」
カニ様は無言で殻から大きなハサミを出し、クラッカーを受け取りました。そして会計を済ませると、カサカサと再び外へ向かって去っていきました。
「ふぅ……今日も一つ、ミッション完了にゃ。」
バイト猫は少し誇らしげに胸を張り、また次のお客さんを待つことにしました。日々同じことの繰り返しですが、彼にとってはどんな小さなことでもやりがいがあります。
その時、コンビニの前に大きな影が現れました。それは、アステラ星の伝説に登場する幻の巨鳥「アステリアン」でした。アステリアンが現れるのは100年に一度と言われています。バイト猫は驚いて、思わず目を大きく見開きました。
「まさか、こんなところにアステリアンが……!」
巨鳥はくちばしで何かを探すように、店の周りをくるりと見回しています。バイト猫は恐る恐る店の外に出て、巨鳥に声をかけました。
「ご、ご用は何でしょうかにゃ?」
すると巨鳥は優しい目でバイト猫を見下ろし、低く鳴いて答えました。
「私は長き旅を終えて、星の果てから戻ってきた。この星で最も美味しい飲み物を求めているのだ。そなた、この店にあるだろうか?」
バイト猫は一瞬考え込みましたが、すぐに思い出しました。店の奥の冷蔵庫にある特製の「銀河ミルクシェイク」。それこそが巨鳥が求めるものかもしれません。
「ちょっと待ってにゃ。きっと気に入るものがありますにゃ!」
バイト猫は冷蔵庫へ駆け込み、銀河ミルクシェイクを取り出してアステリアンに差し出しました。巨鳥はゆっくりとそれを受け取り、一口飲みました。そして満足げに大きな鳴き声をあげました。
「これは素晴らしい!ありがとう、小さな猫よ。お礼に、私の背に乗り、一緒に空を飛ばないか?」
バイト猫は驚きましたが、ワクワクする気持ちが湧き上がってきました。いつも同じ毎日を繰り返していた彼にとって、空を飛ぶという経験はまさに夢のような冒険です。
「にゃ……乗せてもらってもいいかにゃ?」
巨鳥は静かに頷きました。そしてバイト猫は思い切って巨鳥の背に飛び乗りました。
こうして、バイト猫の新しい冒険が始まりました。遥か遠い銀河の星々を見下ろしながら、バイト猫は心の中でこう思いました。
「コンビニの毎日も悪くないけど、たまにはこんな冒険もいいにゃ。」
広がる空の下、バイト猫と巨鳥アステリアンは一緒に銀河を巡る旅に出たのでした。