今日は天気がいい。
お気に入りのスカートを履いて、家を出た。
八月の酷暑の中、私は大学に向かうため最寄りの駅から歩いていた。
殆どの学生は夏休みなのだが、私はゼミでやらなければいけないことがあったので渋々向かっている。
どうしてわざわざ大学まで出向かねばならないのだ。
アンニュイな気持ちで今は信号待ちをしていた。
その最中──
突如、炎を上げた一台の黒いボックスカーが面白いほど回転をし、私に向かってきていた。
咄嗟のことで私は動くことが出来ない。
足が震えて言うことを聞かないのだ。
そうして私は回転するボックスカーに抉られるようにしてこの世を去った。
☆
「目覚めなさい……」
私を呼ぶ声がする。
目を開けると、長髪のウェーブヘアー、髪色はブロンドヘアーの女性が私を見つめていた。
瞳なんかはカラコンを入れてるんじゃないかと思わせる綺麗なモスグリーン。
服装はウェディングドレスとでも言うのだろうか、それにゲームや漫画で見るような白い大きくて豪華な杖を右手に持っている。
「貴方は死にました」
白い空間でその声はエコーのように私の耳から脳へと反響する。
ずっと聞いていれば頭痛が痛むかもしれないレベルだった。
まぁ余裕で死んだんでしょうね。
痛みなんて感じる余裕もなく一瞬だったし。
「可哀想なので別の世界で転生をして差し上げましょう」
「待った!!!」
私は起き上がり、右手を広げ、それを彼女の顔面に突きつける。
「そういうのいいから。可哀想なので転生? 転生される方が可哀想じゃない? 逆に考えてみて。貴方が訳もわからず死んだのに、訳も分からないウェディングドレス姿の女性に「可哀想なので別の世界で転生をして差し上げましょう」って言われたらどう思うん? 差し上げましょう、だなんて偉そうに上から目線だし、実際偉いのかも知れないけどさぁ!」
私は必死に訴え掛ける。
時には彼女の真似をしながら転生をしたくないという意思表示をした。
果たしてこんな話をして彼女は私の意見を聞き入れてくれるのか。
答えは、ノーだ。
「女神のことは絶対。これはこの世界の決まりなのです」
彼女は私の手を払い、私に杖の先端を向けると、ぐるぐると杖を回し始める。
すると、私の居る地面は日本語や英語ではない何かが円を描くようにして現れ始めた。
ボックスカーが迫ってきた時のように、私は足を動かすことは出来なかった。
それどころか全身が金縛りになり動かせない。
これが転生をされる感覚なのか……。
「覚えてろよ……くそ女神様よォ!」
私はこうして生まれて初めての転生をした。
一度死んでいるので生まれて初めて、と言う表現はおかしいかもね。