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第6話 局員、長谷川玲奈の苦悩

 国の迅速な決定で発足した我が部署、未来技術保護局。最近ニュースを騒がせている未来から来たというロボットとそのパイロットを保護し、ついでに未来の技術をどうにか現代の技術で解析、実現できないかという部署だ。場所は岡ノ島町の役場。その隅にパーティションで区切られた一角。形原局長はやる気がないし、同僚で技術屋の富士見はやる気があっても手の出せない未来の技術にお手上げだ。ずっとスマホで遊んでいる。しかし、私たちは与えられた仕事をしなければならない。

 ……三人でどうしろっていうのよ。

 大体、400年後から来たってなんなの? 意味がわからない上に、実質世話係の私の言うことなんかまったく聞かない遙香ちゃん。親しみを込めて遙香ちゃんなんて呼んではいるものの、本当に手を焼いている。未来からやってきて警察に保護された、あのニュースの日。私が適当に服を買ってきたらダサいだのサイズが合わないだの。あの子のために部屋を探したら、結局伴さんの家が居心地良いからいらないだの。知らないのよ、あの子の好みや居心地の良さなんて。予定なんてほぼないはずのあの子に、なんでこっちが了承を取らないといけないのよ。町おこしイベントでもなんでも、うちの局を通してほしいものよ。

 まあ、部屋は私が引っ越すことにしたけど。この辺、スーパーないから最低限自転車でも買わなきゃ。田舎で車がないのはさすがにキツいのよね。家賃はとてつもなく安いけれど。

 仕事はというと、正直やることがない。遙香ちゃんの送迎と、調査に来る各団体の日程調整くらい。将来的には無事遙香ちゃんが未来へ帰れるようにするのが、私たちの使命だ。その名目で局が立ち上げられ任命されたものの、ただ閑職に追いやられただけに感じるわ。調査中、私はただ座って見てるだけよ? 遙香ちゃんに至っては堂々とコクピットの中でエアコン効かせて寝てるし。本当になんなのよ。私はこんなことするために公務員になったんじゃないのよ。たまたま警察に知り合いのいる同僚の横に理系卒の私がいたという運の悪さで呼ばれて、そのまま成り行きでこの仕事とかあり得ないわ。どうせなら民間企業から選びなさいよ。癒着とか言わないから。


 いけない。私は恨み節を書くためにパソコンを開いたわけじゃない。落ち着け。落ち着け。これから私はビールを飲みながらインターネットの世界に潜るの。FPSはやっぱりパソコンでやるべきよ。


 ああくそ、今日も勝てない!

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