ドンドドン!ドンドドン!
まるで打ち鳴らす大太鼓のように、閉じ込めた箱の内部から打撃で脱出を試みる龍姫スロットル。
「あー、何度も言いやすがドラゴンが踏んでも壊れない合金製、抵抗しても無駄に体力を消費するだけっすよ」
彼女を閉じ込めた功労者、“千罠”のディエゴが余裕綽々と言った表情でそう言う。
……バキッ!
「なっ、あの合金の壁をぶち破ったですかい!?」
先程までの済ました態度は何処へやら、途端に慌て始めるディエゴと
「ふん。こんなガラクタで閉じ込めようなんて、わっちも舐められたもんだね」
罠の箱に空いた穴をこじ開け、中から姿を見せる龍姫。
「さあ”筋金入り”、今度はどんな奇策を使ってくるんだい?」
ゲコ。
「げ、げこおぉぉぉ!?……きゅうっ」
あ、龍姫が気絶した。
僕が用意したのは、その辺で拾ってきた蛙。それを手のひらに載せて彼女に見せただけである。
実は龍は蛙が苦手、という嘘のような伝承を僕がまだ帝国に聞いたことがあるのだ。
言い伝えによれば昔々、大ガエルと戦った龍が勝利した後にその身体を丸呑みし、喉に詰まらせて死亡したから、ということらしい。
半信半疑だったが、まさかここまで効果的だとは思わなかったよ。
「ふん、わっち一人を捕獲したぐらいでいい気になるなよ」
ということでスロットル姫、今度は体に縄を巻き付けて拘束中。
これは力を入れると逆に締め付けが強くなる特殊素材で、今度こそ脱出は不可能である。
しかし気になる物言いだな。
確かに”上洛の儀”に用意した切り札が彼女一人だけとは思えない。
つまり仲間がいると言うことか。なら、その辺りを自白させ……
……るまでもなかった。
空が暗くなり、僕らが上空を見上げると。
そこには宙に浮かぶ長細い物体、白い体毛を持つ龍がそこに浮遊していた。
「わっちの相棒、”
あの巨体で空を飛び、それが我々に突っ込んできたらひとたまりも無さそうだ。おまけに。
「弓兵、撃てっ!!」
という合図に僕の引き連れてきた兵士から一斉に矢が放たれるが、その体に到達する前に見えない壁のようなもので弾かれる。
「あの龍は巨体を魔法で浮かせていますわ。そして、その浮遊の応用で近づく物体を弾いているのですわ」
と解説する鑑定スキル持ちのイヌカ。
ふむ、浮遊スキルか。そう言えばうちにも同じスキル持ちがいたけど。
「いやいや規模が段違いであります!私に何かされようとするなら無理でありますよ?」
そのスキル持ちの蜂系獣耳族、ロコクはそう言って全力で協力を拒否する。
でもロコク……を……するのは?
「やったことはありませんが可能だと思うであります。しかし……」
「何をするつもりかしら?
ああちなみに、わっちと同様に蛙を近づけても大海は動揺しないわよ?サイズが違いすぎるもの」
まあそうだろう、もしそれが可能で”上洛の儀”でも蛙に屈服する聖龍とか見たくないぞ絵面的に。
「じゃあ、どうす……ええっ!?」
僕の策に、目を見開いて驚く龍姫。うん、効果はてきめんだ。