最高の気分だった。
すべてを破壊してやりたくなるような暴力衝動がうずいている。
脳内麻薬がドバドバだ。
「ごはっ!?」
口から大量に吐血した。
頭が割れそうだ。
節々に砕けるような痛みを感じる。
だが、動ける。
戦える。
放射状に陥没した壁を見やる。
緒方は血を吐きながら、壁にはまった体をなんとか抜こうと苦心している。
「ば、かな……サイコキネシス、だと?」
緒方は潰れた腕を再生させながら、顔に恐怖を浮かべていた。
「舐めるな、舐めるな……舐めるなよ、お前は再生できていない! 不完全な再覚醒だ! 超能力者として転移できなかったからそんなざまに──」
指を鳴らす。
金属がきしみ悲鳴をあげ、念動波が破壊的ダメージを敵にあたえる。
「う゛ぐわああああァァァアッッ?!」
金属隔壁に緒方はつっこんでいく。
そのまま隔壁を貫通して通路まで吹っ飛んでいった。
「ぅ、が……な、ん、なんて、しゅ、つりょく……だ…………これは、かてご、りー、ふぉぅ、いじょう……」
緒方のまわりに多数の炎の玉が現れる
それらは一度ふわっと広がると、ホーミングするように一気に襲い掛かって来た。
右手をまえへ突きだす
火の連弾を睨みつけて、決して目をそらさない。
──曲がれ
火炎弾たちはすべて俺を避けるように流れていき、うしろの壁で爆発した。
「そん、な……私の、パイロキネシスが……効かないだと……」
鼻血が出ているのに気がつく。
体がダルくなってきた。
だが、まだだ。あいつを倒してない。
「やられて、たまるか……私が、生き残るのだ、あの無能、の天成に、負ける、ものか……」
緒方はぐちゃぐちゃになった下半身をひきずって、ほふく前進のような姿勢で廊下の角のむこうへ逃げていく。
俺は腹の穴の激痛に耐え、壁にもたれかかりながら、緒方を追いかける。
逃がすものか。
角をまがると同時──
「吹き飛べえええええ天成ィィィ!!」
廊下の壁や床、天井がめくりあがりながら念力の波──サイコウェーブが向かって来ていた。
頭の血管が切れそうになりながらも、最大の思念をこめて指を鳴らす。
──消し飛ばせッ!
俺のサイコキネシスが真正面からサイコウェーブを打ち砕く。
「ひょッ!?」
そのまま、床に這いずってる緒方に命中した。
めんこを返したみたいに宙を舞う。
べちゃっと床に落ちた。
ぴくぴく痙攣してるだけで、もう攻撃してくる様子はない。
「ばか、な、ありえ、ない……私、のサイコキネシス、より、はるかに、強力、だと……」
「思念が足りない……サイコキネシスの練度じゃ、俺の方がうえだ」
超能力の基本は想像力だ。
念じるチカラである。
どれだけその超常現象を強く念じれるかが出力を決める。
「なぜだ、なぜ、このわたしが、負けるのだ……神の使徒たる、私が……」
「終わりだよ、緒方」
「クソめ……雑魚とばかり侮っていたのに、さっさと、殺して、いれば……うぐっ?! おえ、ぶぼえっ!」
突如、緒方がゲロを廊下にまき散らしはじめた。
「いくら燃料がたくさんあっても、ガン回ししすぎればエンジンはオーバーヒートする。超能力者の架空機関も同様らしい。どうやら、本当に調子に乗っていたのは、緒方、あんたのほうみたいだな」
「そんな、うそだ、くそ、そんな、ばかな……うっ、ぼべえ!! ぁぁああああ!」
もうこいつは能力を使えない。
勝負はついた。