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社長との運命的な出会い④


「ねぇ、依那。何やってんの(笑)」

「あっ……。桜子……」


 気付くと少し離れたところで、一部始終を見てたであろう桜子が、少し笑いながら話しかけてくる。


「いや、ビックリするわ。社長と何対等に話してんの」

「えっ!どこが!? てか、あたし何話してた!?」

「えっ、自分で話したこと覚えてないの?」

「いや、なんか流れで、言わなくてもいいこと言ったような気がしてならないんだけど……」

「まぁ、そうね。社長に向かって堂々とタイプじゃないとか言って、ちょっとビックリしたけどね」

「だよね!? あたしはただ社長目当てじゃないってこと伝えたかっただけなのに、なんか言葉のチョイス間違ったかなって、話してるうちにどんどんわかんなくなってた」

「そうなんだ(笑) 確かにあの社長のオーラ目の前にすると、何話していいかわかんなくなるかも」

「でしょ!?」

「でも社長って、もっとクールな感じかと思ってたし、あんな風に結構喋る人だとは思ってなかった」

「だよね」

「うん。でもあの本村さんもなんか実は砕けた感じの人でビックリだった」

「ねー」

「あの人も出来る秘書さんで有名だしね~」

「そうなんだ?」

「社長はまぁダントツで人気だけどさ。案外あの本村さんも、あのビジュアルだから、会社の中でも密かにファン多いんだよね」

「へ~あの人もなんだ」

「社長よりもあの本村さんは、少し優しくて甘い感じの雰囲気があるから、隣同士二人でいると、社長との違いがまた目立つっていうかさ」

「確かに」

「でもあの二人元々仲良さそうな感じだったね。そういえばうちの社長よく取材されるけど、その時に、ここはビジネスパートナーと始めた会社で、その存在は今でも大きくて頼りになるって答えてたな~。それあの本村さんのことだったんだね」

「そっか。あたし今までは好きなカフェの仕事に関われるってことだけしか重視してなかったから、正直社長のビジュアルとかそういうのはまったく気にしてなかったというか」

「あ~、依那はそんな感じだったよね」

「確かにそこそこ若い社長だとは思ってたけど、でもこの仕事からしたら社長みたいな人だから、ここまでこの会社もすごくなってるんだろうなぁって思うし」

「それはそうかもね。社長の若さと柔軟で独創的なアイデアがあるからこそ、ここまでいろんなプロデュース出来て、いろいろ広がっていってるんだろうしね」

「うん。やっぱそこは社長尊敬出来る人かも」

「タイプじゃないけど?(笑)」

「あっ、うん。そうだね(笑)  でも元々あたしは社長のそういう外見だとかスペックだとかに惹かれてここ入った訳でもないし、それは入社しても変わらないな」

「確かに、依那そこはブレないよね」

「うん。あのカフェみたいな場所自分でも作りたいっていうのが今のあたしの夢というか、ここに入ってやりたいことだし」

「そだね。依那はそれ叶えるために、ここに入ったんだもんね」

「うん。さっきはルイルイと比べてあんな感じでは話してたけどさ。実際は社長はずっと尊敬する人っていうか憧れてる人っていうか」

「なら、それさっき言えばよかったのに」

「いや、多分そういうのあの時言ったところで特に社長は何も思わないんじゃない? そんなの普段から言われ慣れてるだろうし」

「そうかな~。逆に依那みたいに社長の仕事や人柄に憧れて純粋にこの会社に入社した人って少ないと思うし、嬉しいんじゃないかな~」

「そうかな~」

「うん。あたしもたまたまタイミングよくこの会社の求人見つけてオシャレな仕事っぽいな~って思って始めただけだし」

「そんなもんなんだ」

「うん。あたしはそんな感じの理由だけど、現に社長狙いの人は最初っからこの社長の会社だってわかって入ってきた人もいるだろうしさ」

「そっか」

「でもせっかくあーやって社長と話す機会があったのに、あんな感じだと、依那のその純粋な想い社長に伝わらないのもったいない気がするけどな~」

「そうだね。あの言葉も勘違いされたかもな~」

「あの言葉って?」

「まともに接するの無理って……」

「あぁ~。確かに」

「あれはさ。社長みたいな人と話すことなんて自分の中で想像出来なかったし、実際今まで全然関わらなかったから、憧れの存在で普通に接するなんて恐れ多くて無理って意味だったんだけど……」

「いや、絶対あの流れじゃ、それ伝わってないよね(笑)」

「だよね~! あ~絶対嫌な印象しかなかったよね~」

「依那が悪魔とか言うからじゃん(笑)」

「いや、あたしん中で天使と悪魔って最上級のランクの崇める例えっていうかさ」

「それ絶対依那しかわかんないやつだから(笑)」

「あたしん中では、ルイルイが可愛くて癒しで天使の存在だとしたら、社長は厳しくてストイックだけど、でも尊敬出来て刺激もらえる存在のそういう悪魔というか……」

「いや、だからわかんないから(笑)」

「あ~絶対勘違いされてるだろうな~!」

「ちゃんとあの時、尊敬してますとか憧れてますとか言えば、そんな勘違いもされなかっただろうに」

「うん。でも、あんな流れでそれ言っちゃうとさ。なんかとってつけて言ったみたいな感じというか。言い訳がましくその場しのぎで適当にそんな感じで言ってんだろうなって取られるかなと思って」

「あぁ~。まぁそれはなくもないかもだけど」

「でもあたしはそういう簡単な気持ちで伝えたい訳じゃないし。社長の外見やスペック狙いで憧れてるとかそういうのじゃないから、余計伝えられないっていうか」

「まぁね~。だからってタイプじゃないとか言わなくても(笑)」

「いや、だって、社長ってそういうのかなり愛想尽かしてるって聞いたよ?」

「あぁ~そうみたいだね。結局はそれ目当てで寄ってくる女性が多いから本命の彼女も作れないって話だよね。実際そういう女性しか寄ってこないってことなのかね」

「そうだとなんか悲しいよね。社長のちゃんとした部分見てないってことでしょ?」

「なら、依那ならそういうのちゃんとわかってるからいいんじゃない?」

「え!? 無理無理無理。あたしは社長に対してそういうんじゃないし」

「実際、依那可愛い人がタイプとは言ってるけどさ。実際、社長といい感じになったらその気になるんじゃない? 社長カッコいいとは思うんでしょ?」

「いや、そりゃまあ、カッコいいとは思うけど……。でも逆に恐れ多い人だから、そうやって考えられないというかさ。あたし恋愛すること自体、なんか不器用で向いてないっぽいし、元々ハードル高い人いかなくても…ね」

「だからルイルイ?」

「うん。ルイルイならそういうの全部取っ払って推しとして癒されるし楽しめるし、そういう気持ちも味わうことは出来るしさ」

「そっか~。でもその感じだと、社長、ないこともないってことだよね」

「ん? なんでそうなった??」

「あたしはなんか二人で話してて、なんか二人の雰囲気いいな~って思ったけど」

「え? あれが? なんで? そもそもそういうのマジで社長となんてありえないし、相手にもされないから」

「へ~。そっか~。まぁ人生何が起こるかわかんないからね~」


 そう言ってなぜだか桜子はニヤニヤして意味ありげに言う。




 絶対そんな社長と何かあるはずないって、そう思ってたのに。

 まさかこれから先、自分にとってホントに予想もしないような現実が訪れるなんて……。

 この時のあたしはまだ知る由もなかった。




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