───白き塔・屋上
屋上に辿り着き、扉を押し開く。
そこには黒い翼に上半身裸の男……。
「フッ。我を封印した、転生者か…。良く生きていたな! せっかく、呪いをつけてやったのになぁ?」
「
アランさんは杖を取り出し、
「
上空に魔法陣が現れ、
だが、
光が当たった部分は焼けたが、すぐに再生してしまったのだ。
「フハハハハハ!! 我に勝てると思っているのか? 転生者よ!!」
「うるさいっ!!
「シュネーもお願い!!」
私は、
彼女の助けも必要だと思ったからだ。
小さな魔法陣が現れ、シュネーが私の周りを1周してから、目の前に止まった。
「任せてよ!! ルナのためなら私、何でもするわ!!」
「ありがとう。シュネー!!」
シュネーは私の頬に口をつけた後、雪女を召喚した。
私も応戦するように杖を構え、
「
「効かぬ!!」
反対に、その攻撃をダークホールみたいなので吸い込み始め、それを私に目掛けて投げつけてきた。
つかさず、防御魔法を唱えた。
「
すると、いつになっても攻撃による痛みが来ない。
恐る恐る、目をゆっくりと開くと、そこには私を抱きしめ、庇っているアランさんの姿があった。
私は目を見開き、アランさんの名前を呼んだ。
「アランさん!?」
「ルナ…。よく聞きなさい。僕が意識を失う前に、この呪いを解いてほしい」
アランさんは突然、【呪いの解除方法】について話し始めた。
「えっ?」
私は戸惑う中、アランさんは真剣な眼差しで、話を進めた。
「ルナは、セレナに会ったことがあるんでしょ? 僕にはわかるさ。君の師だからね」
「あ、らんさん?」
「セレナに会っているなら、僕の呪いのことについても、聞いているはずだよ。僕の呪いを解く方法は……」
───転生者が転生者を殺すことだよ
彼の口から絶対に聞きたくない言葉を、今耳にしてしまった。
耳を塞ぎたくなるような言葉。
アランさんの言う通り、私はあの夢を見た時、セレナから呪いの解除方法を教わっていた。
でも、他にいい方法があるのではないのかと。なのに、中々いい方法が見つからなかった。
「別の方法も、きっとありますよね?」
私はアランさんに問い詰めると、頷くことなく私の顔を無言で見つめた。
アランさんのローブの袖を掴み、頷くのを待ったが、一向に頷かない。
「アランさん!! お願いだから頷いてよ!! ねぇ、
「ルナ……。君が僕の呪いを解いてくれたら、呪いをかけた張本人も、まとめて消滅できる。だから、君しか止められないんだ」
「嫌だ!! アランさんがいなくなるのは嫌だ!!」
「ルナッ!!」
拒絶している私に、アランさんは私の名前を呼んだ。
私は肩をビクッと震わせ、顔を上げると、アランさんのアクアマリンの瞳と、私の赤色の瞳が混ざり合った。
次の瞬間、アランさんはローブの袖からナイフを取り出し、私の手にそのナイフを握らせた。
「あ、あぁ……!! 嫌だッ!!」
「お願いだルナ。僕をセレナの元に逝かせてくれ。僕と、この世界を救うために」
「あら……ん。ッツ!?」
アランさんは私を力強く抱きしめ、ナイフがアランさんの腹部に食い込んだ。
そして、腹部から赤い液体が流れ始めた。
ナイフを握っている手に、赤い液体が纏わりつき、生暖かい温度を感じた。
「アランさん!? やめてよッ!! 抱きしめないでよ!! 出血止めるから!!」
「いや、このままでいいよ。これでいいんだ」
痛みを感じているのか、額に汗を流し、段々顔色も青白くなっていくアランさんは、私の頭に手を置き、子供をあやすかのように優しく撫でた。
「居なくならないでよ! 私! まだアランさんから、教えてもらいたいこといっぱいあるのに! セレナの話も聞きたい!! いっぱいお話ししたかったのに!! 離してよッ!! お願い…。居なくならないで」
「ごめん、ね。この方法しかなかったんだ。ねぇ、ルナ。僕のお願い聞いてくれる?」
微笑むアランさんに、私は涙を流しながら頷いた。
「はい」
「ありがとう。僕のお願いはね、この先。僕と同じ道を歩んでいる者がいるかもしれない人たちを、救ってほしいんだ。この方法ではなくて、君の言う違う方法で。僕は呪いが解けたとしても、あの時から時がとまっているから、肉体が崩壊していただろう。
だから、
僕の部屋、好きに使っていいから。資料やまとめたノートとかもあるから……。好きにしなさい」
「アランさん……」
「そんな顔しないで。最期くらい、笑顔で見送って欲しい、な?」
アランさんはいつもみたいに笑った。
私はナイフから手を離し、涙を手で拭い、それでも溢れてくる涙を、グッと堪えて、笑顔でアランさんを見つめた。
すると、アランさんは安堵の笑みを浮かべた。
「ふふ。安心した。セドと幸せになって。僕は何時でも見守って…いる、からさ」
アランさんはどこか幸せそうに目を閉じ……。
───永遠の眠りについた。