───白き塔・中心部
目の前で、姉様を失ってしまった。
その証拠に、姉様の腹部に私が刺したナイフ。そこから流れ出る、赤い液体。
私は…姉様を。
姉様を!!
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」
「ユノ!!」
姉様を失った私は、魔力の制御が出来なくなり、
これじゃまずい! でも止められない!!
「どうしよう!! 誰か助けて!! 怖い!」
でも、このまま魔力吸い取られて果てれば、姉様と一緒に居れるのかな……?
そうしたら、母様だって私がいなくなって嬉しいと思うし。
それでいいんだ。姉様のいない世界なんて必要ない。姉様がいない世界で、私の存在価値なんてない。
ルーカス様もきっと、私のことをもう必要ないって思ってる。
「あぁ…。このまま姉様と、一緒に逝きたい」
私はぽつりと独り言を呟き、目を閉じた。
その瞬間、誰かの温もりを感じた。
ゆっくりと目を開くと、そこには花畑が広がり、温もりの正体は、マリアンヌちゃんだった。
「ユノ先輩? 貴女は独りじゃないんだよ? ルナちゃんやレオン先輩、ネオ先輩やアノール先輩、セド君やレオナ君。私もいるの。だから、先輩は独りじゃないんだよ? エレノア先輩も、ユノ先輩にそう伝えたかったの。落ち着いて?
マリアンヌちゃんはその場に立ち上がり、翡翠色の魔法書を開いた。
「来て、
魔法書が開くと、黄緑色のバックレス・ドレスを身に纏った女性が現れ、両手を前に合わせ、指を絡ませながら、何かを願うように目を閉じた。
すると、段々
そして、
それに、ダメージも回復していく。この花畑が現れた時からだ。
私はマリアンヌちゃんに声をかけた。
「マリアンヌちゃん」
「ユノ先輩、エレノア先輩の分まで生きて。今まで、背負ってきたもの全部、私たちにも背負わせて」
私はマリアンヌちゃんに泣きついた。
そんな私をマリアンヌちゃんは、何も言わずにただひたすら、抱きしめ返してくれた。
父が生きているとき、姉様と喧嘩して仲直りした際に、姉様が抱きしめてくれたのを思い出す。
目の前で笑みを浮かべ、眠っている姉様。私のせいで、姉様をこの手で殺めてしまった。
この間違いは、やり直すことなんてできない。
これからも、その先も。
それでも、私は彼女たちと、姉様の分まで生きていたい。この罪を背負い、償いながら。
私は生きていく。
だから、この出来事を終わらせる。
「マリアンヌちゃん、ありがとう。姉様を殺めてしまった私は、この罪を背負うよ。そして、償う! だから、力を貸して!!」
「勿論だよ~!」
「俺も忘れんなよ?」
私はマリアンヌちゃんとレオンの手を掴み、その場に立ち上がった。
「忘れていないですよ」
「敬語なし! さっきみたいに、ありのままでいろ」
「うん! 姉様…。私頑張る!! だから見ていてね!!」
私は眠っている姉様にそう声をかけ、ルナちゃんたちの元へ、走り出したのだった。
───頑張ってね。ユノ