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54話 炎の魔神・イフリート

───ミステリウム魔法学園・校門前


 ついさっきの出来事。


 ルイ様がルーカスを抱きかかえ、医務室に向かわれるのを目撃した俺、アノール・マーティンは、ルイ様の生存を確認し、横にいる炎の騎士フレイムナイト様と共に、学園内を包囲している魔物らを討伐するために学園の校門前に立っていた。


 魔物にやられた生徒らを、医務室に連れて行くやつらがちらほら見える中、俺たちは奇跡的に無傷で、魔力も体力もまだ残っている。


 この包囲網をどう突破すればいいのか考えていると、次の瞬間。


 魔物らが自爆をしていき、魂が1か所に集まると、炎を身に纏った魔物……。


 いや、が目の前に現れたのだ。


「炎の魔神・イフリートか」


「イフリートですか?」


 俺は炎の騎士フレイムナイト様に聞き直すと、真顔で頷かれた。


「あぁ。炎魔法を操る……。気をつけろ」


「はい」


 俺たちは杖を構え、魔法を唱えた。


毒ノ剣ヴェノム・セイバー!」


「……炎の剣フレイムソード


 互いに杖をそれぞれの固有魔法を示す剣に変え、イフリートに攻撃を開始した。


 だが、イフリートの身体を貫通し、全く攻撃を食らっていない。


 炎の騎士フレイムナイト様の固有魔法・炎魔法フレイムは、イフリートと相性が悪いのか、炎を吸収されている気もする。


 そして、イフリートは口から炎を吹き出し、炎の騎士フレイムナイト様は咄嗟とっさに、防御魔法を張った。


炎の壁フレイムウォール!」


 炎の壁フレイムウォールを張った途端、防御魔法ごとイフリートに吸収されてしまい、攻撃を受けそうになった。


「まずい!!」


「!?」


 炎の騎士フレイムナイト様は俺を横に突き飛ばし、生身のままイフリートの攻撃を受けてしまった。


 攻撃を受けてしまった炎の騎士フレイムナイト様のコートが所々焼け、腕や顔にやけどを覆い、その場に倒れていた。


 俺は炎の騎士フレイムナイト様に駆け寄ると、イフリートは俺に目を付けたのか、再び口から炎を吹き出した。


 防御魔法・毒の塀ポイズン・フェンスを唱え、イフリートの攻撃を防ぎながら、イフリートの突破方法を模索していると、ローブの懐から紫色の魔法書が飛び出し、俺の左手に落ちた。


 これは魔法強化週間にて、月の騎士ムーンナイト様から授かった神ノ毒サマエルの召喚魔法書だ。


 こいつは、俺を呼んでいるのかもしれない。


 俺も同じで、この状況を突破するには、こいつの助けが必要だ。


 躊躇いもなく俺は、神ノ毒サマエルの召喚魔法書を開き、呪文を唱えた。


「我が魂に答えよ! 神ノ毒サマエル!!」


 毒々しい見た目に、紫色の羽根を羽ばたかせ、右手に頭蓋骨を持った何かが現れた。


「これが……神ノ毒サマエルなのか?」


炎の騎士フレイムナイト様!! お身体は!?」


 炎の騎士フレイムナイト様は、炎の剣を地面に突き刺し、よろけながらもその場に立ち上がった。


「これくらいなんともない。おかげで、魔力を吸収することができた」


 そうか! 炎の騎士フレイムナイト様の固有魔法は、イフリートと同じく、攻撃も吸収でき、魔力が回復することが出来るのか。


 外傷にダメージは負うが、その分、魔力を回復することができる。


 それなら、一気にここでイフリートを仕留めたい!


「ここで終わらせる! 神ノ毒サマエル!!」


 俺は毒ノ剣ヴェノム・セイバーを持ち、イフリートに向かって走り出した。


 すると神ノ毒サマエルはいったん姿を消すと、イフリートの背後に移動し、イフリートの身体にしがみ付いた。


 身動きできないイフリートは毒に侵され、声にならない悲鳴を上げている。


 俺は弱っているイフリートに刃を振るった。イフリートの胴体を真っ二つに斬るが、俺の顔に向け炎を吹き出そうとした。


「ッツ!!」


 もうおしまいかと思った矢先、蒼い炎がイフリートを包み、そのまま消滅していった。


 後ろを振り向くと、剣を杖に戻した炎の騎士フレイムナイト様がいた。


蒼き炎ブルーフレイム…。魂を浄化する炎だ。これで、イフリートは浄化した」


炎の騎士フレイムナイト様!?」


 炎の騎士フレイムナイト様は再び、その場に倒れてしまった。


 そして、いつの間にか神ノ毒サマエルが魔法書に戻り、ローブの懐に戻っていったのを確認し、俺は炎の騎士フレイムナイト様にすぐさま駆け寄り、医務室に向かった。







───イフリートの消滅により、学園内を包囲していた魔物らは、1匹たりとも居なくなったのであった。

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