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53話 天之狭霧神と熾天使

───白き塔・大広場


 原初ノ神カオスがいる【白き塔】に辿り着き、屋上に向かおうとしたが、魔物に囲まれてしまった私たち。


 セドとレオナとフィリスさんが道を作ってくれたおかげで、屋上へと再び、階段を駆け登ることとなった。


 屋上までの階段はとても長く、今までにない疲労感を感じていた時、初代騎士ナイトの石像がある大広場に辿り着き、そこで息を整えていた。


 それは数秒間のとても短い休憩で、大広場の向こう側にある扉……。


 そこに原初ノ神カオスがいる。


 再び足を動かそうとした瞬間、細い声が聞こえると同時に、風が鋭い刃の様に飛んできた。


風ノ刃ウィンド・オブ・スラッシュ


霜の壁フロスト・ウォール!」


 防御魔法を唱え、何とかその場をしのぐ。


 すると、風を纏い、私たちの前にユノ先輩が現れた。黒いローブを羽織り、風の杖を両手で握りしめていた。


「ユノ先輩!」


「ルナちゃん。久しぶりだね……首の痕、消えたかしら?」


 ユノ先輩の話し方が今までとは違い、エレノア先輩に似た口調で、私の首に指を指した。


「お陰様で」


「ふふ。あのまま、死んでしまえばよかったのに。そうすれば、ルーカス様のが叶っていたのに。なんで生きてるの?」


 顔を顰めたユノ先輩。


 すると風化した先輩が、私の背後を取った。


 後ろを振り向こうとした瞬間、首を掴まれそうになった。傍にいたアランさんとレオン先輩が手を伸ばし、ユノ先輩を止めようとした。


 狂気じみた笑みを浮かべるユノ先輩の手が、私の首に触れそうになった。


 その時、私は桜の花びらに包まれた。


「なに?」


「ルナちゃんは私が守る!」


 桜の花びらが消えると、目の前にマリアンヌが私を庇い立っていた。


 ユノ先輩の逆鱗に触れたのか、自分の髪をグシャと力強く掴んだ。


「うるさいうるさいうるさいうるさい!! みんな死んでしまえ!! 我が願いを叶えて! 熾天使ラファエル!!」


 ユノ先輩の手には藍色の魔法書があり、魔法書が開いた瞬間、黒い羽根が所々燃え、黒いドレスを身に纏い、頭の上に白い天使の輪がある、堕天使の様な姿の女性が現れた。


「これは、熾天使ラファエルの召喚魔法書!?」


 レオン先輩は杖を構えると、マリアンヌはアランさんの方へと私を押した。


「ルナちゃん! 先に行って!」


「マリアンヌ!」


 2人は後ろを振り向き、アランさんに目線を向けると、私の手を引いて、先に進もうと走り出した。


 だが、熾天使ラファエルが両手を合わせ、間にダークホールが作り出され、こちらに飛ばしてきた。


 マリアンヌたちはユノ先輩に気を取られ、私たちに防御魔法を展開するが、既に遅かった。


 手を引いているアランさんは、私を庇った。


 これはもうだめだと思っていた瞬間、白いローブをなびかせ、薄紫色のポニーテールの女性が私とアランさんの前に立ち、ラベンダー色の魔法書が開いた。


「我が身を護り給え、天之狭霧神アメノサギリ! 」


 魔法書から薄紫色の綺麗な髪を靡かせ、上半身裸に霧で出来た羽織を肩に羽織り、足は人間ではなく、からすの足で、目玉が1つの、この世に存在しない者が現れた。


天之狭霧神アメノサギリ……。霧と異世界との境界線を司る神」


 アランさんは、天之狭霧神アメノサギリを見つめ、私は天之狭霧神アメノサギリを召喚した人物の名前を呼んだ。


「エレノア先輩!!」


「ルナさん、ご無事でよかったです! ここは私たちが引き受けますから、ルナさんとアランさんは、そのまま前に突き進んでください! !!」


「……はい!!」


 エレノア先輩に背中を押され、未来を託された私とアランさんは共に、原初ノ神カオスがいる屋上の扉を押し、闇に覆われている外に、足を踏み入れたのであった。








───そして、それぞれの想いや願いを抱きながら、戦いの幕が開けたのであった。

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