目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
52話 白き塔

───セフラン王国・中心部



 ルーカス部長が原初ノ神カオスを召喚し、セフラン王国にその姿を現した。


 原初ノ神カオスを召喚したことにより、全て闇に包まれ、部長は魔力を吸い上げられ、意識不明の重体となった。ルイさんが部長を歌の騎士メロディナイトの元へ運ぶこととなり、別行動となった。


 そして、私たちは【白き塔】に向かうことに。


 【白き塔】は初代騎士ナイトらが眠っている塔。


 その屋上に、原初ノ神カオスがいるはず。


「アリエスさん……」


 【白き塔】に向かう途中、国民が魔物に襲われているところを助けるためにアリエスさんは、私たちと別行動となり、国民を守るために魔物を討伐している。


 不安に駆られながらも、私は足を止めずに走った。


 すると、雨の騎士レインナイトのヨナさんとマリアンヌに、嵐の騎士ストームナイトのイヴァンさんとレオナに、レオン先輩と遭遇した。


「マリアンヌー!!」


 ワイバーンと交戦していたマリアンヌは私に気づき、手を振ってきた。


「ルナちゃーん!!」


「不思議ちゃんじゃねぇか! ルーカスの野郎やりやがったな。んで、あれが原初ノ神カオスか?」


 レオン先輩は原初ノ神カオスを指さした。


「はい。あれが原初ノ神カオス。ルーカス部長は今、生死をさまよっています」


「嘘でしょ!?」


 レオナは信じられなさそうに驚いていると、彼の背後からゴブリンの軍勢が襲い掛かってきた。


砂の槍サンディ・オブ・スピア! 本当だ。レオナ」


 ゴブリンの軍勢に、砂の槍を放ったセド。


 セドの姿を確認したレオナは、誰よりも嬉しそうな声色で、彼の名前を呼んだ。


「セドちゃん!! 無事だったのね! 良かったわ~! それで、マーティン教授とルーカス先輩はどうしたのよ?」


 レオナは2人の姿を探すように、辺りを見渡した。


「さっきも言ったけど、今生死をさまよっているルーカス部長を、ルイさんがアリアさんの元に連れて行ったの。あの人の治癒魔法なら、目を覚ますかもしれない!」


「そうだったのね!」


 レオナは安堵の笑みを浮かべた。


 すると、イヴァンさんが私の背後に迫る魔物に、魔法を放った。


テンペスト!!」


「ありがとうございます!」


「こんくらい大丈夫だぜ! それでよ、お前さんたちは、どこに向かっている感じなんだ?」


「【白き塔】です!」


 イヴァンさんの問いに答えると、顔をしかめるイヴァンさん。


「あそこか……。神聖魔法を唱えないと、扉は開かねぇようになってんだよなぁ―」


「それなら僕がいるから大丈夫だ!」


 アランさんが自分自身に指を指し答えると、イヴァンさんとヨナさんは目を見開き、互いの顔を見合わせた後、アランさんの顔を2度見した。


「あ、貴方様は」


「アランと言うよ! 初めましてだね雨の騎士レインナイト嵐の騎士ストームナイト。初代月の騎士ムーンナイトのアランさ!」


「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」


 ヨナさんとイヴァンさんの声が重なった。


 そうか、強化週間の時に、顔合わせをしただけで、言葉を交わしていなかったから実質、初対面なわけか。


「じゃ、じゃあさ! 【破滅の魔術師】ってアラン様……」


「そうだよ! 【破滅の魔術師】で初代月の騎士ムーンナイト。そして【転生者】さ!」


「あわわわわ……マジかよ。本物だぜこりゃ。そんじゃ、アラン様にルナ嬢を任せてもいいんだな?」


 嬢呼び!? と思わず驚く私。


「いいとも!」


 アランさんはイヴァンさんに頷くと、またもや魔物に魔法を放った。


爆風シェルファイア! それならここは、俺様に任せてヨナ! アラン様と共に行け!」


「私も残ります! イヴァンを残してはおきません!」


「なら、ここは騎士ナイトの2人に任せて、俺たちは不思議ちゃんについて行くぞ!」


 新たにレオン先輩とレオナにマリアンヌが加わり、再び【白き塔】へ向かうことになった。



 真っ白い塔へと辿り着いた私たちは、小さな魔法陣のある扉をアランさんが見つめ、手をかざした。


「解錠せよ。光の空白オプティカル・ブランク!」


 すると、アランさんの手元が光り輝くと魔法陣が消え、扉がゆっくりと開き始めた。


「開いた!!」


「流石ね!」


「神聖魔法を使える魔術師って、すごいねぇ~!」


 私とレオナとマリアンヌの3人は、アランさんに期待と尊敬の眼差しを向けると、照れ臭そうに笑うアランさん。


「いや~それほどでもないよ」


「行くぞ」


「不思議ちゃん。置いて行くぞぉ―」


 そんなアランさんを完全無視ししながら、レオン先輩とセドはためらいもなく、塔の中へ入って行った。


「クソガキ」


「うるせえ」


 アランさんはセドにボソッと呟くと、セドは眉間にしわを寄せなが睨み返した。


 この2人って、似た者同士なのかしらと思うくらい、波長が合うときがある。


 性格も反対だし、いい加減仲良くしてほいいところだ。


「透明なガラスの階段と、棺桶が5つしかない!」


「そりゃそうだ。初代様が眠っているからな。しかし、どこもかしこも白い割には、染み1つないとな……。色々、落ち着かないねぇ~」


 レオン先輩はそう言って、頭をガシガシと荒っぽく掻いた。


「この階段を上がればいいんだよね?」


「そうみたいだけど、簡単にはいかないよね」


 アランさんは後ろをちらっと顔を向けると、ゴブリンや鬼人オーガやワイバーンやスケルトンらが塔に攻め込んできた。


 そして、追い打ちをかけるように前からも、魔物たちが現れ、私たちはついに囲まれてしまった。


「ッチ! 囲まれたか!!」


「ここはアタシたちに任せて、ルナちゃんとセドちゃんたちは走って!」


「それなら俺も残る! レオナを置いてはいけないからな」


 セドとレオナは背中を合わせ魔法を放ち、階段にいる魔物を吹き飛ばした。


「僕もお二2人さんの加勢に回ろうかな。学生だけに、無理はさせてられないからね」


「セド! レオナ! フィリスさん!」


「行け、ルナっ!」


「ルナちゃん! お願いね!!」


「頼むよ!」


 3人を置いていくことに躊躇ったが、アランさんに腕を掴まれ、階段を駆け登った。


「ルナ、ここはあの3人に任せよう。大丈夫、きっとまた会える」


 私は目を閉じ、アランさんの言葉に頷いた。





───こうして、私とアランさんにマリアンヌとレオン先輩の4人で、階段を駆け登り、セドとレオナとフィリスさんと別れたのであった。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?