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51話 始まりの復讐

───次の日


 昨日アランさんのセレナに対する想いを知り、最終的にアランさんは、セレナを想い続けることとなった。


 そして、ルーカス部長とユノ先輩と対立する時が訪れた。


 私はアランさんとセド、アリエスさん、ルイさんの計5名で、セフラン王国の地下にある遺跡に来ていた。


 この遺跡は原初ノ神カオスの召喚魔法書が封印してある遺跡らしい。


「討伐したのは確かだけど、セレナを失った後、荒れ果てたセフラン王国に戻ると、魔法書に戻った原初ノ神カオスが落ちていたんだ。それをこの手で封印した。その後、僕はあの洞窟で過ごしていた。復興はウィザード・セクトの生き残った局員らに任せてね。僕はひっそりと、この歳まで生き抜いた」


「そうなんですね。でもルイさんとは長年一緒だって……」


「そうだよ? だってあの頃は、毎日のように僕のところに来てくれるんだもの。ね、ルイ?」


 アランさんが嬉しそうに笑いながら、ルイさんに顔を向けると、口元を押さえながら目線を背け、恥ずかしそうに耳元を赤く染めたルイさんが見れた。


「うるさ……いです。別にアランを心配していたわけじゃないです。シュネーが……」


「私が何よ?」


 いつの間にか私右肩の上に足を組んで座っているシュネーがいた。


 シュネーがいることに気づいたルイさんは、目を見開き、眼鏡の位置をめちゃくちゃ直し、動揺しているのを隠していた。


「しゅ、シュネー!? いつの間にいたのですか!?」


「今来たところよ! ルナが心配で来ちゃったの! なんか文句ある?」


「あ、ありませんよ!!」


 今までの緊張感がほぐれ、2人の初々しいやり取りを見ていた。


 奥に進むほど視界が暗くなっていくと、アリエスさんの月の魔法で、辺りが見やすくなった。


「ここですね」


 そしてついに、原初ノ神カオスが眠っている場所に辿り着いた。


「懐かしいなあ~。でも、神聖な遺跡のはずなんだけど、禍々まがまがしい雰囲気が漂っているね……ルナ。一応言っておくけど、僕から離れるな。今、狙われているのは君だから」


 アランさんの言葉に強く頷くと、アリエスさんが灯りを照らすと、目の前に、黒いローブを身に纏ったルーカス部長の姿があった。


「ルーカス部長!」


「良く来ましたね。ルナ・マーティン」


 ルーカス部長の右手には、黒い魔法書があった。


 アランさんは魔法書を見て、『まさか』と小さく呟いた。


 ルーカス部長はアランさんの声が聞こえたのか、クククッと嘲笑あざわらった。


「そのまさかですよ。原初ノ神カオスの魔法書を手に入れました。原初ノ神カオスは、僕を認めたんです!! これで、お母様を罪人に仕立て上げたあの男を! 世界を!! そして、【転生者】であるルナ・マーティンを! 全て破壊し、世界を創り上げる!!」


「やめろ! 原初ノ神カオスを召喚すれば、君の魔力をすべて吸い上げられ、人間ではいられなくなる!!」


「そうですよ部長!! それに父親のこと興味ないって…」


 アランさんと私は、ルーカス部長を説得しようとするが、聞く耳を持たないどころか、杖を取り出し、四大元素エテールを撃ち放った。


 防御魔法で対抗するアランさん。


 次第に遺跡から振動がなり始め、瓦礫が降ってきた。


 すると、ルーカス部長は


「うるさい!! 興味ないわけないだろう!! あの男が全て悪い!! あの男のせいで、お母様は死んだんだ!! だから僕が全てをやり直す!! 誰にも邪魔はさせない!!」


「ルーカス部長!!」


 私は召喚魔法書を開こうとするルーカス部長に手を伸ばすが、1ミリも届きはしなかった。


「――――すべてを支配する者よ。汝の身を我に捧げよ! 破壊、破滅、呪い。全て我に捧げ、新たな世界を創り上げよ!」


 ルーカス部長は魔法書を開き、召喚魔法の必要な呪文を詠唱した。


 すると、突然。ルーカス部長はその場に倒れた瞬間、遺跡の外で大きな物音と共に、大地震のような揺れを感じ取った。


 立っていれなくなり、よろけてしまった私をセドが抱きとめてくれた。


 大地震の様な振動は数秒間にわたって続いた。


 次第に振動が治まると同時に、ルーカス部長はその場に倒れてしまい、すぐさま部長の元へ駆け寄った。


「部長!!」


 脈を確認すると、息は微かにしているが、脈も弱い。


 何度も声をかけ、肩を叩くが、返答も無し。


 そんなルーカス部長を見たアランさんは、小さく舌打ちをした。


「だから言ったのに…。どうやら、魔力を全て吸い取られたみたいだね」


「そんなっ!」


「でも。微かにだけど、息はしているし、脈も動いているから、歌の騎士メロディナイトの元に連れて行こう。彼女の治癒魔法なら、目を覚ます可能性が少しだけあるかもしれない!!」


 アランさんは、アリエスさんに説明すると、アリエスさんはルイさんに顔を向けた。


 すると、ルイさんはルーカス部長を抱き抱えた。


「彼は私が預かります。アラン、レナード君、アリエスさん。彼女を頼みます」


 ルイさんはいち早くルーカス部長の命を確保するために、遺跡を出ていった。


「僕たちも行きましょう」


 アリエスさんの言葉に頷き、私たちも急いで遺跡から出て、地上に向かった。



 地上にたどり着いた私たちは、セフラン王国の状態を目の当たりにする。


 セフラン王国に太陽の光がなく、風も吹いていない。


 それに、青空だったはずの空が、真夜中の様に闇に覆われていた。


 突然の出来事に国民は、何が起こったのか理解できず、子供の泣き叫ぶ声も聞こえ始めた。


「あれ……って原初ノ神カオス?」


 空の上に謎の大きな裂け目が出現し、その裂け目の中から、黒い翼に上半身裸の男が現れた。


 アランさんはその男を見ると、杖を構えた。


原初ノ神カオス!!」


 原初ノ神カオスは空の上からアランさんを見つけたのか、ニヤリと口元に笑みを浮かべ、手を広げた。


 すると、次の瞬間。


 街の中に次々と魔物が出現し、国民を襲っていった。


 国民は魔物に対抗するが、数の方は魔物が勝ち、怯える者や倒れていく者が多かった。


 私たちも応戦していると、フィリスさんが駆け寄ってきた。


「ルナ君! アリエス!」


「フィリスさん!」


「フィリス。ここは僕が何とかするから、ルナさんを連れて原初ノ神カオスの元に向かわせて! アラン様と、セド君も行け!!」


 アリエスさんは私たちに背を向け、魔物から国民たちを護りに駆け出した。


「アリエスさん! 生きていてくださいね!!」


 私はそう叫ぶと、手を挙げて答えてくれた。






───そして、フィリスさんと合流した私たちは、原初ノ神カオスがいるであろう、セフラン王国にある【白き塔】へ向かうのであった。

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