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47話 セレナという少女

───???


 第2、第3試験を突破し、ついに最終試験を受けることになった私は、最終試験前夜に、とある夢を見ていた。


 暗い何処かも分からない空間で、白銀の青年が1人の少女を抱きかかえ、泣いていた。


 青年は涙を流しながら、少女に対し、謝り続けた。


「すまない。すまない。僕が生きているせいで、君は。君は……」


 青年の声に、少し聞き覚えがあった。


。僕に、生きる意味なんてない。これから、どう生きていけばいいのさ……」


 そうだ。


 温もりのあるこの声。


 あの人しかいない。


「僕は、君の気持ちに答えられなかった臆病者だ。そんな奴が、生きている価値なんてない」




───アランさん




 私は少女に話しかける、若き日の彼の名前を呼んだ。


 すると、私の後ろからポチャン、ポチャンと水の上を歩くような音が聞こえた。


 後ろを振り向くと、アランさんが抱きかかえている少女・がいた。


 白いワンピース姿に、彼と同じ白銀の髪色を持つ少女。


 そして、私と似た雰囲気に、私よりも少し弱い魔力量。




───そう、この少女がこの身体の持ち主だと分かる。




『ルナ。私がセレナよ。貴方と同じ【転生者】。白銀しろがねせれな』


『それじゃあ、貴女がアランさんを生かすために……』


『えぇ、そうよ。そして、彼も私たちと同じ【転生者】。

 初代騎士ナイトの一員だった彼は、原初ノ神カオスと対峙してしまい、彼だけを残し、初代騎士ナイトらは全滅。

 彼は、召喚魔法で神を召喚し、原初ノ神カオスを倒した。倒したの。

 でも、原初ノ神カオスは消滅するとき、彼に目をつけ、彼がこの世界から消えると同時に、世界が破滅するように呪いを刻印した。

 そして、原初ノ神カオスとの戦闘で、瀕死に近い傷を負い、その呪いが発動しようとしていた。

 私は禁忌きんきを犯してでも、彼を救いたかった。

 だから、禁忌を犯すことにした。【己の肉体を依り代にし、新たな転生者を待つ。新たな転生者が現れ、彼の呪いを抑える】という禁忌。

 禁忌に手を染めてしまった私はその代償として、命を彼に捧げることとなって、彼は一命を取り戻した。でも、ほら……』


 セレナは真っ直ぐに指さした。


 指を指す方向に顔を向けると、セレナの肉体を透明な氷の棺桶に入れ、保護魔法をかけた後、泣き崩れるアランさんの姿があった。


「あぁぁぁぁぁぁぁ!! セレナッ! セレナァァァァァ!!」


 こんなアランさんを、私は1度も見たことがない。


 いつも明るいアランさんの裏の顔を見てしまった私は、胸が苦しくなった。


 すると、セレナは私の右肩に手を置いた。


『ルナ。苦しそうな顔をしないで。私が、望んだことなんだから』


『で、でも!!』


『ルナ。今を生きる彼が好きなの。昔から私は、彼のことが好き。面白くて、優しくて、温かい人。彼が、笑って過ごしている日々が、私にとって幸せだった。

 今も、貴女がいてくれるおかげで、毎日楽しそうに生きている。彼に対するこの感情を、敢えて伝えなかった。いつ、何があるか分からないから。シュネーは、そのことを知っていたけど、『セレナは渡さないわ!』って彼に喧嘩売っていたわ。おかしいわよね』


 セレナは思い出しながら、クスッと笑った。


 シュネーってば……。


『彼、アランは今も私を失って悔やんでいる。だから、あの人を解放してあげて。あの呪いを解けるのは、貴女しかいない』


『セレナ……』


『呪いの解き方を教えてあげる。これは、とても残酷な方法。彼をお願いね』


 私の両手を包み込み、私の右耳に唇を近づけた。


 そして、アランさんの呪いを解き方を教えて貰った瞬間、目の前が光に包まれ、セレナは手を小さく振っていたのを最後に、目を開けるといつの間にか、ベットの上で寝ていた。


 ベットから起き上がり、ガラスの窓に目線を向けると、朝日が昇っていた。


 ガラスの窓から日差しが透き通り、鳥のさえずりが聞こえた。


 完全に、夢から目覚めたことを思い知らされる。


「アランさん……。私、貴方のことを救えるのかな」


 ベットから降り、窓を開け、青空を見上げながら1人呟いたのであった。

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