───???
第2、第3試験を突破し、ついに最終試験を受けることになった私は、最終試験前夜に、とある夢を見ていた。
暗い何処かも分からない空間で、白銀の青年が1人の少女を抱きかかえ、泣いていた。
青年は涙を流しながら、少女に対し、謝り続けた。
「すまない。すまない。僕が生きているせいで、君は。君は……」
青年の声に、少し聞き覚えがあった。
「
そうだ。
温もりのあるこの声。
あの人しかいない。
「僕は、君の気持ちに答えられなかった臆病者だ。そんな奴が、生きている価値なんてない」
───アランさん
私は少女に話しかける、若き日の彼の名前を呼んだ。
すると、私の後ろからポチャン、ポチャンと水の上を歩くような音が聞こえた。
後ろを振り向くと、アランさんが抱きかかえている少女・
白いワンピース姿に、彼と同じ白銀の髪色を持つ少女。
そして、私と似た雰囲気に、私よりも少し弱い魔力量。
───そう、この少女がこの身体の持ち主だと分かる。
『ルナ。私がセレナよ。貴方と同じ【転生者】。
『それじゃあ、貴女がアランさんを生かすために……』
『えぇ、そうよ。そして、彼も私たちと同じ【転生者】。
初代
彼は、召喚魔法で神を召喚し、
でも、
そして、
私は
だから、禁忌を犯すことにした。【己の肉体を依り代にし、新たな転生者を待つ。新たな転生者が現れ、彼の呪いを抑える】という禁忌。
禁忌に手を染めてしまった私はその代償として、命を彼に捧げることとなって、彼は一命を取り戻した。でも、ほら……』
セレナは真っ直ぐに指さした。
指を指す方向に顔を向けると、セレナの肉体を透明な氷の棺桶に入れ、保護魔法をかけた後、泣き崩れるアランさんの姿があった。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!! セレナッ! セレナァァァァァ!!」
こんなアランさんを、私は1度も見たことがない。
いつも明るいアランさんの裏の顔を見てしまった私は、胸が苦しくなった。
すると、セレナは私の右肩に手を置いた。
『ルナ。苦しそうな顔をしないで。私が、望んだことなんだから』
『で、でも!!』
『ルナ。今を生きる彼が好きなの。昔から私は、彼のことが好き。面白くて、優しくて、温かい人。彼が、笑って過ごしている日々が、私にとって幸せだった。
今も、貴女がいてくれるおかげで、毎日楽しそうに生きている。彼に対するこの感情を、敢えて伝えなかった。いつ、何があるか分からないから。シュネーは、そのことを知っていたけど、『セレナは渡さないわ!』って彼に喧嘩売っていたわ。おかしいわよね』
セレナは思い出しながら、クスッと笑った。
シュネーってば……。
『彼、アランは今も私を失って悔やんでいる。だから、あの人を解放してあげて。あの呪いを解けるのは、貴女しかいない』
『セレナ……』
『呪いの解き方を教えてあげる。これは、とても残酷な方法。彼をお願いね』
私の両手を包み込み、私の右耳に唇を近づけた。
そして、アランさんの呪いを解き方を教えて貰った瞬間、目の前が光に包まれ、セレナは手を小さく振っていたのを最後に、目を開けるといつの間にか、ベットの上で寝ていた。
ベットから起き上がり、ガラスの窓に目線を向けると、朝日が昇っていた。
ガラスの窓から日差しが透き通り、鳥のさえずりが聞こえた。
完全に、夢から目覚めたことを思い知らされる。
「アランさん……。私、貴方のことを救えるのかな」
ベットから降り、窓を開け、青空を見上げながら1人呟いたのであった。