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45話 準決勝【セド・レナードVSエレノア・カトレア】

───1年控室 


 1年の控室にて、私はマリアンヌとレオナと共に、準決勝が始まるモニターを見ていた。


 セドとエレノア先輩の試合。


 正直、どちらが勝ってもおかしくない。


 エレノア先輩の固有魔法は霧。セドの固有魔法は砂。


 有利なのは、エレノア先輩の方だろう。


 霧は水分が多く含まれた空気が冷やされ、水蒸気を維持できなくなり、水滴となって空中に飛ぶと、霧に変化するからだ。


 そう。セドは、水とは相性が悪い。


 さぁ、彼はどう動くだろうか?



───試験会場


『これより準決勝を行います。両者よろしいですね?』


『はい』


『勿論です』


『では、始めッ!!』


 結界が会場に張られ、両者共に杖を構えた。


 先制攻撃を仕掛けたのは、エレノア先輩だった。


霧の花ミストフラワー


 地面が霧に変化し、紫色のオダマキという花が咲き誇った。


霧の壁ミストウォール!』


「防御魔法!?」


 エレノア先輩は攻撃もされていないのにも関わらず、防御魔法を唱えた。


 だが、自分にだけに張ったわけではなく、2人を囲むように、霧で円形状の空間が出来上がった。


「二重結界ね」


 隣にいたレオナは、そう小さく呟いた。


 エレノア先輩の目的って……。


砂波サンディウェーブ!!』


 砂魔法で攻撃しようと杖を振ったセドだったが、攻撃が通る前に、砂が溶けてしまった。


『攻撃が通らないために、わざと防御魔法を!?』


 セドが驚いていると、エレノア先輩は上品に笑った。


『フフッ。そうよ? 貴方の弱点を突いたの。レオンとは違う方法でね』


『それなら!! 砂の壁サンドウォール!』


 セドも先輩と同様、砂を円形状にし、2人を囲むように防御魔法をかけた。


『三重結界? 一体、何をするのかしら?』


砂波サンディウェーブ


霧雨きりさめ


 砂の波がエレノア先輩を襲い、攻撃が通ろうとした瞬間。


 エレノア先輩はスキル【幻影】を使用し、攻撃を避け、セドの背後に回り、腰に掛けていた日本刀で、彼の背中を斬った。


 ユノ先輩と同じく。


「セド!!」


 思わず彼の名を叫んだ瞬間、背中が砂に変化し、セド自身砂化していることに気づいた。


 そして、砂波サンディウェーブに乗って、エレノア先輩から距離を取った。


『砂化!?』


 エレノア先輩は砂化したセドを見て、驚きを隠せずにいた。


『自由自在に砂を操る。それがサンディ使いだ。砂の壁サンドウォールを張ったのは、このためと、攻撃を通りしやすくするためだ』


『でも、その砂の壁サンドウォールも時間の問題かもよ? 溶けてきているし』


『それなら、魔法で補うまでだ!』


 砂波サンディウェーブを今度は攻撃ではなく、結界という役割とし、砂の壁サンドウォールと共に防御魔法として展開した。


『弱点を突かれ、環境を変えられたとしても、自分の適応した環境へと、作り直すまで! 砂の槍サンディ・オブ・スピア!』


 砂で出来た槍が、エレノア先輩に次々と攻撃をしていった。


 日本刀で何とか攻撃を防ぐものの、槍が突然、ただの砂に戻り、日本刀にまとわりつく。


 そして、同時に砂の壁サンドウォールが解け、日本刀にまとわりつく砂が、泥に変化した。


 しかも、簡単に取れない粘土力が高い泥に。


『泥!? しかも地面も泥に変化している!』


『霧の水滴で溶けた砂が、泥に変化しただけだ。例え先輩が霧になろうが、霧になった分、泥が増えていく』


『……。知識があるのね』


『努力しましたから。強くなりたいという一心で。それに、ルナと約束したんだ。決勝に行くって』


 セド……。


『青春ですね。私の負けです。攻撃されても、泥に変化して動きにくくなるだけですし、貴方たちなら、いい試合を見れそうなので』


 エレノア先輩はフッと笑い、日本刀を鞘に納め、魔法を解いた。


『そこまで! 勝者、セド・レナード!!』



───1年控室


 軍配はセドに上がり、決勝に私とセドの2人が進出した。


 私とレオナとマリアンヌの3人で、ハイタッチを交わし、セドの勝利を祝った。


「やったわ~!!」


「セド君バンザーイ!!」


「セドが勝ったぁぁぁぁ!!」


「「「わーい!!」」」


 3人だけで盛り上がっていると、アノールとレオン先輩とブレス先輩にネオ先輩が、控室の中に入ってきた。


「よぉ~! 1年組! セドが勝ったじゃねぇか!!」


「声デカいぞ…」


「相変わらずだな!!」


 レオンとブレス先輩の声のデカさに、アノールはため息をついた。


「アノール!」


「せ・ん・ぱ・いをつけろ。妹!!」


「だーれが妹じゃ!!」


 アノールに駆け寄り、威嚇しているとモニター画面が、トーナメント表に変わり、私とセドの線が交わった。


「セドとか~。ルナちゃんファイトだ!!」


「ネオ先輩! ありがとうございます!!」


「どちらが勝っても文句なしだな。これを乗り越えれば、次は最終試験。おそらく、ウィザード・セクトの守護者・騎士ナイトの6人とご対面だろうな。頑張れよ!」


 レオン先輩は笑顔で私の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「はい!」


「ルナ、頑張れよ。ルイ様とアラン様も見守っていらっしゃるからな」


「アノールってば、堅いぞ!!」


 ブレス先輩は満面の笑みで、アノールの背中をバシバシと叩いた。


 痛いのか、アノールは顔を顰めた。


「決勝は明日か。決勝は、試験会場で見れるはずだから、お前らも見に行くといい。じゃあな」


 アノールは私の頭に手をポンと置いた後、控室を後にした。


 アノールに続くように、レオン先輩たちも控室を去って行った。


 残ったのは、1年生組の私たちだけ。






───数分後、セドが控室に戻ってきて、明日の決勝戦に備えるために、身体を休めることにしたのであった。

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