───1年控室
1年の控室にて、私はマリアンヌとレオナと共に、準決勝が始まるモニターを見ていた。
セドとエレノア先輩の試合。
正直、どちらが勝ってもおかしくない。
エレノア先輩の固有魔法は霧。セドの固有魔法は砂。
有利なのは、エレノア先輩の方だろう。
霧は水分が多く含まれた空気が冷やされ、水蒸気を維持できなくなり、水滴となって空中に飛ぶと、霧に変化するからだ。
そう。セドは、水とは相性が悪い。
さぁ、彼はどう動くだろうか?
*
───試験会場
『これより準決勝を行います。両者よろしいですね?』
『はい』
『勿論です』
『では、始めッ!!』
結界が会場に張られ、両者共に杖を構えた。
先制攻撃を仕掛けたのは、エレノア先輩だった。
『
地面が霧に変化し、紫色のオダマキという花が咲き誇った。
『
「防御魔法!?」
エレノア先輩は攻撃もされていないのにも関わらず、防御魔法を唱えた。
だが、自分にだけに張ったわけではなく、2人を囲むように、霧で円形状の空間が出来上がった。
「二重結界ね」
隣にいたレオナは、そう小さく呟いた。
エレノア先輩の目的って……。
『
砂魔法で攻撃しようと杖を振ったセドだったが、攻撃が通る前に、砂が溶けてしまった。
『攻撃が通らないために、わざと防御魔法を!?』
セドが驚いていると、エレノア先輩は上品に笑った。
『フフッ。そうよ? 貴方の弱点を突いたの。レオンとは違う方法でね』
『それなら!!
セドも先輩と同様、砂を円形状にし、2人を囲むように防御魔法をかけた。
『三重結界? 一体、何をするのかしら?』
『
『
砂の波がエレノア先輩を襲い、攻撃が通ろうとした瞬間。
エレノア先輩はスキル【幻影】を使用し、攻撃を避け、セドの背後に回り、腰に掛けていた日本刀で、彼の背中を斬った。
ユノ先輩と同じく。
「セド!!」
思わず彼の名を叫んだ瞬間、背中が砂に変化し、セド自身砂化していることに気づいた。
そして、
『砂化!?』
エレノア先輩は砂化したセドを見て、驚きを隠せずにいた。
『自由自在に砂を操る。それが
『でも、その
『それなら、魔法で補うまでだ!』
『弱点を突かれ、環境を変えられたとしても、自分の適応した環境へと、作り直すまで!
砂で出来た槍が、エレノア先輩に次々と攻撃をしていった。
日本刀で何とか攻撃を防ぐものの、槍が突然、ただの砂に戻り、日本刀にまとわりつく。
そして、同時に
しかも、簡単に取れない粘土力が高い泥に。
『泥!? しかも地面も泥に変化している!』
『霧の水滴で溶けた砂が、泥に変化しただけだ。例え先輩が霧になろうが、霧になった分、泥が増えていく』
『……。知識があるのね』
『努力しましたから。強くなりたいという一心で。それに、ルナと約束したんだ。決勝に行くって』
セド……。
『青春ですね。私の負けです。攻撃されても、泥に変化して動きにくくなるだけですし、貴方たちなら、いい試合を見れそうなので』
エレノア先輩はフッと笑い、日本刀を鞘に納め、魔法を解いた。
『そこまで! 勝者、セド・レナード!!』
*
───1年控室
軍配はセドに上がり、決勝に私とセドの2人が進出した。
私とレオナとマリアンヌの3人で、ハイタッチを交わし、セドの勝利を祝った。
「やったわ~!!」
「セド君バンザーイ!!」
「セドが勝ったぁぁぁぁ!!」
「「「わーい!!」」」
3人だけで盛り上がっていると、アノールとレオン先輩とブレス先輩にネオ先輩が、控室の中に入ってきた。
「よぉ~! 1年組! セドが勝ったじゃねぇか!!」
「声デカいぞ…」
「相変わらずだな!!」
レオンとブレス先輩の声のデカさに、アノールはため息をついた。
「アノール!」
「せ・ん・ぱ・いをつけろ。妹!!」
「だーれが妹じゃ!!」
アノールに駆け寄り、威嚇しているとモニター画面が、トーナメント表に変わり、私とセドの線が交わった。
「セドとか~。ルナちゃんファイトだ!!」
「ネオ先輩! ありがとうございます!!」
「どちらが勝っても文句なしだな。これを乗り越えれば、次は最終試験。おそらく、ウィザード・セクトの守護者・
レオン先輩は笑顔で私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「はい!」
「ルナ、頑張れよ。ルイ様とアラン様も見守っていらっしゃるからな」
「アノールってば、堅いぞ!!」
ブレス先輩は満面の笑みで、アノールの背中をバシバシと叩いた。
痛いのか、アノールは顔を顰めた。
「決勝は明日か。決勝は、試験会場で見れるはずだから、お前らも見に行くといい。じゃあな」
アノールは私の頭に手をポンと置いた後、控室を後にした。
アノールに続くように、レオン先輩たちも控室を去って行った。
残ったのは、1年生組の私たちだけ。
───数分後、セドが控室に戻ってきて、明日の決勝戦に備えるために、身体を休めることにしたのであった。