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43話 準決勝【ルナ・マーティンVSルーカス・グレイナ】

───試験会場


 準決勝を迎えた私、ルナ・マーティンとセド・レナード。


 先に、私とルーカス部長の試合が、今始まろうとしていた。


 結界が張られた試験会場。


 私とルーカス部長は、互いに杖を構えた。


「これより、準決勝を行います! では、始め!」


 ルイさんの試合開始の合図で、ついに準決勝が幕を開けた。


「ルーカス部長」


「ルナ・マーティン。貴女と1度、手合わせしたいと思っていたので、良い機会です。部長である僕に、勝利してみてください」


「はいっ! そのつもりです!! 六花りっか!」


 氷の結晶が空から降り注ぎ、会場内は冬と同然の温度になった。


呼吸するたび、白い息が出る。


「天候を変えて、どうするつもりなのですか?」


「気まぐれですよ。ただのね! 凍る雨アイスペレット!」


 氷の結晶が雨に変わり、氷の雨粒がルーカス部長を襲った。


 しかし、次の瞬間。


 私とルーカス部長の場所が入れ違い、氷の雨粒が私に襲い掛かった。


「部長の空間操作…。霜の壁フロスト・ウォール!!」


 杖を氷の雨粒に向けて振ると、霜で出来た壁が、私を包み込んだ。


「防御魔法で、難を逃れましたか……」


「それもそうですけど、狙いはこっちです!!」


 霜の壁フロスト・ウォールに跳ね返る、氷の雨粒がつららに変化し、ルーカス部長に向かって跳ね返った。


 とっさに防御魔法を使用した部長は、驚いた表情を見せた。


「つららに変化した?」


「自分なりに応用したものです!」


「そうですか! 四大元素エテール


 赤・青・緑、茶の4つの魔法陣が現れた。


 赤の魔法陣からは火の玉。


 青の魔法陣からは水の玉。


 緑の魔法陣からは空気の玉。


 茶の魔法陣からは土の玉が飛び出し、つららに対抗するように、次々とつららを破壊していった。


 その瞬間、私は霜の壁フロスト・ウォールを解き、部長に向かって走り出した。


 つららが全て破壊され、四大元素エテールを受けそうになったが、アノールに仕込まれた体術で攻撃を躱し、凍った地面を滑り、部長の足元に向け杖を振った。


絶対零度アブソリュードゼロ!!」


 魔力調整をし、部長の腰まで凍らせた。


 そして、部長の杖をピンポイントで回し蹴りを決め、杖を氷の上へ落とすことに成功した。


「そこまで!! 勝者、ルナ・マーティン!!」


 私に軍配が上がると結界が消えていき、天候も晴れて行った。


 氷が溶け、いつもの会場に戻って行った。


 部長に杖を返し、下半身の氷も溶かし、お互いに握手を交わした。


「……隙もありませんでしたね」


「隙を与えないようにしたんです。絶対に、この戦いは負けられないので」


「そうでしたね。では、決勝頑張ってください」


 ルーカス部長はそう言って、会場から去って行った。


 その後、ルイさんが私の元に駆け寄ってきた。


「お疲れ様です。ルナさん」


「ルイさん!」


「ついに決勝ですか……。短いような、長いような感じがして、不思議な感覚です。アランの弟子とはいえ、成長が早い」


 ルイさんは、まるで自分のことのように、私を褒めてくれた。


 少し、嬉しい。


「ありがとうございます!」


「フフッ。次の試合は、レナード君とカトレアさんですか。どちらか勝つか予想できませんが、ルナさんも正々堂々決勝に臨んでくださいね」


「はいっ!!」


 こうして私は準決勝で、ルーカス部長に勝利し、決勝に進むこととなった。


 エレノア先輩とセド。


 例え、どちらが相手だろうとも、私は自分なりの戦い方をするつもりだ。


 アランさんのためにも。自分の未来のためにも。


 次の試合、2人の戦いを見守るために、控室に歩き出したのであった。



 一方その頃、会場を後にしたルーカス・グレイナは1人、教会に訪れ、コンクリートで出来た、冷たい壁に拳を叩き付けていた。


「くそっ!! ここまで来たのに!! このままでは……。お母様に顔を合わせられない! もっと強く、強くならなければ!! ルナ・マーティンを越えなければ、僕は……」


「ルーカス、様……」


 この光景を見ていたものが、1人いた。


 赤い液体を右の拳から流しているのを無視し、その者に近寄り、顎を持ち上げた。


「あぁ……。僕の可愛い。どうかしましたか? こんな所にいては、誰かに見られてしまう。


「大丈夫……。人、いないの確認したから」


「そうですか。流石、だ。は、僕の傍にいてくれますよね?」


 と呼ばれる女性は、ルーカス・グレイナに、互いの顔があと1ミリでくっつきそうなくらいに、腰を抱き寄せられた。


「もちろん……。ルーカス様のしもべ。この先も……」


「フフッ。えぇ、そうです。君はですからね」


 ルーカス・グレイナは満足気に微笑み、メシアの唇を塞いだ。








───この静かな教会に、2人だけの空間が流れていたことを、誰も知らずに。

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