───試験会場
準決勝を迎えた私、ルナ・マーティンとセド・レナード。
先に、私とルーカス部長の試合が、今始まろうとしていた。
結界が張られた試験会場。
私とルーカス部長は、互いに杖を構えた。
「これより、準決勝を行います! では、始め!」
ルイさんの試合開始の合図で、ついに準決勝が幕を開けた。
「ルーカス部長」
「ルナ・マーティン。貴女と1度、手合わせしたいと思っていたので、良い機会です。部長である僕に、勝利してみてください」
「はいっ! そのつもりです!!
氷の結晶が空から降り注ぎ、会場内は冬と同然の温度になった。
呼吸するたび、白い息が出る。
「天候を変えて、どうするつもりなのですか?」
「気まぐれですよ。ただのね!
氷の結晶が雨に変わり、氷の雨粒がルーカス部長を襲った。
しかし、次の瞬間。
私とルーカス部長の場所が入れ違い、氷の雨粒が私に襲い掛かった。
「部長の空間操作…。
杖を氷の雨粒に向けて振ると、霜で出来た壁が、私を包み込んだ。
「防御魔法で、難を逃れましたか……」
「それもそうですけど、狙いはこっちです!!」
とっさに防御魔法を使用した部長は、驚いた表情を見せた。
「つららに変化した?」
「自分なりに応用したものです!」
「そうですか!
赤・青・緑、茶の4つの魔法陣が現れた。
赤の魔法陣からは火の玉。
青の魔法陣からは水の玉。
緑の魔法陣からは空気の玉。
茶の魔法陣からは土の玉が飛び出し、つららに対抗するように、次々とつららを破壊していった。
その瞬間、私は
つららが全て破壊され、
「
魔力調整をし、部長の腰まで凍らせた。
そして、部長の杖をピンポイントで回し蹴りを決め、杖を氷の上へ落とすことに成功した。
「そこまで!! 勝者、ルナ・マーティン!!」
私に軍配が上がると結界が消えていき、天候も晴れて行った。
氷が溶け、いつもの会場に戻って行った。
部長に杖を返し、下半身の氷も溶かし、お互いに握手を交わした。
「……隙もありませんでしたね」
「隙を与えないようにしたんです。絶対に、この戦いは負けられないので」
「そうでしたね。では、決勝頑張ってください」
ルーカス部長はそう言って、会場から去って行った。
その後、ルイさんが私の元に駆け寄ってきた。
「お疲れ様です。ルナさん」
「ルイさん!」
「ついに決勝ですか……。短いような、長いような感じがして、不思議な感覚です。アランの弟子とはいえ、成長が早い」
ルイさんは、まるで自分のことのように、私を褒めてくれた。
少し、嬉しい。
「ありがとうございます!」
「フフッ。次の試合は、レナード君とカトレアさんですか。どちらか勝つか予想できませんが、ルナさんも正々堂々決勝に臨んでくださいね」
「はいっ!!」
こうして私は準決勝で、ルーカス部長に勝利し、決勝に進むこととなった。
エレノア先輩とセド。
例え、どちらが相手だろうとも、私は自分なりの戦い方をするつもりだ。
アランさんのためにも。自分の未来のためにも。
次の試合、2人の戦いを見守るために、控室に歩き出したのであった。
*
一方その頃、会場を後にしたルーカス・グレイナは1人、教会に訪れ、コンクリートで出来た、冷たい壁に拳を叩き付けていた。
「くそっ!! ここまで来たのに!! このままでは……。お母様に顔を合わせられない! もっと強く、強くならなければ!! ルナ・マーティンを越えなければ、僕は……」
「ルーカス、様……」
この光景を見ていたものが、1人いた。
赤い液体を右の拳から流しているのを無視し、その者に近寄り、顎を持ち上げた。
「あぁ……。僕の可愛い
「大丈夫……。人、いないの確認したから」
「そうですか。流石、
「もちろん……。ルーカス様の
「フフッ。えぇ、そうです。君は
ルーカス・グレイナは満足気に微笑み、メシアの唇を塞いだ。
───この静かな教会に、2人だけの空間が流れていたことを、誰も知らずに。