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42話 あなたの気持ちと私の気持ち

───1年控室 


 マリアンヌとレオナと共に、セドとレオン先輩の試合を、控室のモニターで観戦していた。


 前回と同様、レオン先輩はセドに水の入ったガラス瓶を使い、勝利しようとしていたが、先輩の杖を砂で拘束し、攻撃を耐えきったことにより、セドに軍配が上がった。


 試合が終了し、レオン先輩は会場を後にした。


 セドとルイさんが会場内に残り、ルイさんは会場内から、私とルーカス部長に向けて、次の試合の説明をし始めた。



『次の試合は、ルナ・マーティンさんとルーカス・グレイナ君の試合となります。1時間の休憩を挟みますので、1時間後にお2人はこちらに戻ってきてください。では、また』


説明が終わると、モニター画面が次の試合表に切り替わって、私とルーカス部長の線が赤く色がつき、くっついて一直線になっていた。


 セドとエレノア先輩も同じく。


「不安だぁぁぁぁぁ!!」


「ルナちゃん、1時間もあるんだから、気を落ち着かせましょ?」


「ルナちゃんなら大丈夫! 私、応援しているから!」


「マリアンヌー!!」


 私はまた、マリアンヌに抱き着いた。


 今日で何回目なのだろう? と思っていると、控室の扉が開き、ファリス寮のローブを左腕に掛けた、セドが入ってきた。


 その瞬間、私はマリアンヌから離れ、セドに駆け寄り、彼に抱き着いた。


 その場にいたレオナとマリアンヌの2人は、そそくさと控室から出で行ってしまい、私とセドの2人だけとなった。



 互いの微かな呼吸音。


 心臓の音が、静かな控室に響き渡った。


 数秒間、この体制のまま時間が過ぎ、セドが口を開いた。


「……おい」


「ん?」


「一体、どういうことだ? 俺はどうしたらいいんだ?」


 いつもより掠れている声で、私にそう尋ねてきた。


「少しそのままで」


「ん……」


 セドはそっぽを向きながら、私の背中に手を回した。


「それで、いきなりなんだ?」


「セドが、無事で良かったっていう意味」 


「そうか。そんなに心配していたのか?」


 セドの問いに頷く私。


 顔を上げると、左腕で口元を覆い、赤面しているセドがいた。


「そんなに、見るな……」


「無理なお願いね。一応、私の方が年上だからね」


「生前は。だろ? 今は同い年だ。それで、この感じだと俺は、返事を聞いてもいいのか?」


「良いけど……。言っておくけど、私。恋愛は良く分からない」


 私は、セドに自分の気持ちを打ち上げた。


「生前は、恋をする暇なんてなかったし、相手もいなかったわ」


「あぁ」


「アランさんには断ったよ。恋愛が分からないし、アランさんのこと好きだけど、そういう好きとは違って、師として好きというのが当てはまったの」


「あぁ」


「でも、セドの試合見てたら心配になって……。怪我とか、私の元から去って行ってしまったらとか。そんな気持ちが溢れ出て。何故か分からないけど、セドの顔を見たら安心して。

 それでも、胸が苦しくてさ。こうすれば楽になるかなって思ってても、治らないの。こんな気持ち、初めてだよ」


 セドの胸に顔をうずめ、背中に回した手の力を強めた。


 すると、セドも背中に回した手の力を強めた。


「ルナ。俺も、そんな気持ちなんだ。この気持ちが、何なのか俺は知っている。レオナに教えてもらっていたからな。改めて言わせてもらう」


「うん」


「俺は、お前のことが好きだ。異性として。俺は、お前を置いてなんか行かないし、どんな姿であろうとも、お前のことを愛し続ける。絶対にだ」


「セド……」


「だから、俺から離れるな」


 セドの黒い瞳と私の赤い瞳が交わった。


 真剣な眼差しで、私の答えを。


 返事を待つセド。


 緊張しているのか、セドの心臓の動きも早く感じる。


 私の体温もだんだん上がって、今の私の顔も赤いのだろう。


 この気持ちは、アランさんとは違う気持ち。


 私、彼のことが好きなんだと実感させられる。




───




 私が【転生者】としての役割があるとしても、役割を果たし、その先の未来がどうなろうとも、彼は私のことを愛してくれるんだ。


 アランさんの呪いを解いて、【転生者】としてのある意味、呪いから解放されたら、目の前にいる彼と共に、生涯を過ごしてみたいと思えてくる。


 それを言ったら、重い女だと思われるだろうけど、それが正直な話だ。




 彼となら、私は……。




「セド、私。。だから、私の傍にいてくれる?」


「当たり前だろ。俺を受け入れてくれてありがとう。ルナ」


 セドは、私を愛おしそうに微笑んでくれた。


 すると、控室の扉がバン! と勢いよく開く音がすると、マリアンヌとレオナの2人が、控室の中へと入ってきた。


 しかも、レオナだけ泣いてるし。


「れ、レオナ!? マリアンヌまで、どうしたのって! ちょ、セド離して!?」


「嫌だ。離さないと、言っただろ?」


「違う違う! そうじゃない、そうじゃない!」


 セドから離れようと奮闘ふんとうするが、中々離してくれない。しかも、力が強くなってくるし!


「よがっだね!!」


「そうだね~。ルナちゃんを泣かしたら、許さないからねぇ。セド君?」


「あぁ」


「セドちゃんがやっと! やっと、ルナちゃんとくっついてくれたわぁぁぁぁ!! 今日は、お赤飯よぉ!!」


 いや、結婚じゃないんだから!?


 先が思いやられるわ~。


「甘いのは嫌いだ。せめて、雑穀米で頼む」


「そういうことじゃないわ!! てか、この世界に雑穀米あるなんて知らんかったわ!! そっちの方が驚きだわ!!」










 ───こうしてセドと私は無事、第1回目のトーナメントを制し、両想いになり、その1時間後、私は試験会場へ戻り、ルーカス部長との試合に臨むのであった。

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